第十話 冒険者との共同討伐
24日後、覚醒した日から90日目だ。
現在は秋、肌寒くなってきたが活動には問題ない。
この1ヶ月ぐらいで【魔闘】の習得に近づき、戦闘に入ればすぐさま使え、波長も単純になり体が【魔闘】をするのに最適な物になっているのを感じている。
魔力と闘力の時も非常にゆっくりだったが体が変わっていってたのを今でも覚えている。
ここまで習得の差があるのはやはり覚醒したからだと思うがギルドで色々調べていたがどこにも乗っておらずこの力については謎のままだ。
他にも魔大陸についても調べ、詳しいことは乗っていなかったがここよりは戦闘や技術面は優れているようなので今度はそっちで調べるか。
あの日から魔力と闘力が訓練をして元の十倍…ようするに一から十なったのだ、コレは常識では冒険者になれる最低限の魔力と闘力の量にやっとなった、地味にこれを小さな目標にしていたため嬉しい。
あぁそうだ、なぜ俺がここまで魔力操作や闘力操作が上手くなれたかというと元々の魔力、闘力の少なさにある。
魔力、闘力は少ないほど操作がしやすく、多い者ほど上手く扱えない、体に馴染ませようとしてもその多い魔力、闘力が仇となり馴染ませる訓練をすればありえないほどの激痛が走るのだ。
俺は総量が少ないおかげか何回も骨折とかしたことあるがその程度の痛みで済んだので魔力も闘力もほぼ完璧に操ることが出来て身体強化率も最大値だ。
さて、そんな中でも異例は存在する、それは『勇者』または『英雄』と呼ばれるもの達だ。
極端に言えばこの者達は膨大な魔力、または闘力を体に馴染ませても一切の痛みなく出来る人種の事を指す。
この者達は半強制的に魔大陸に連れて行かれ戦えなくなるまでその大陸で過ごす、あるいは戦いで命を落とすまで。
だが魔大陸内ならばある程度の自由はあるみたいで不自由はしないが魔大陸からは出られないだけだ。
俺が魔大陸に行かなければ二度とエイレーネとは会えない、一刻でも早く会いたいが焦って死んでしまってはいけない、確実にやっていこう。
さて俺は現在何をしているかと言うとある冒険者達と一緒にハイオーガを倒しに来ている。
「ハイオーガを見つけた、構えろ」
そいつらは訓練の相手をしてもらっている冒険者達で一緒にハイオーガの討伐をしようと誘われたので一度は断ったがハイオーガがどのぐらいの強さなのか気になるためチームを組んだわけだ。
まぁ何度も戦って勝っているようだから安全だろうな。
俺の役割は遊撃、つまり前衛だ。
今回が初めて一緒に戦うので妥当な配置だろう。
「隙があれば攻撃してくれよ」
そう言いタンクとアタッカーはハイオーガの前に躍りでて、その咆哮を無視しながらアタッカーは浅い傷を付ける。
ハイオーガはその腕を振り下ろすがそこには既にアタッカーはいない、ハイオーガは続けざまに水平に腕を振り回し、タンクが達人の域に達してる盾術で攻撃を受け流す。
その攻撃はどれもただのオーガの動きとは比べ物にならないほど鋭く、早く、強力なものだ。
だが俺はハイオーガの動きはなんとか捉えていた、この分なら【魔闘】を使えば恐らくだが同じ土俵にはなれるだろう。
しかし俺はこの44日間訓練でしか剣を振っておらずだいぶ実戦を忘れているかもしれないから慎重に行こう、命は一つだからな。
早速俺は【魔闘】を使いハイオーガとの距離を詰め、聖魔剣で切り払う、それは避けられるがアタッカーが横から腕に決して浅くない傷を入れる。
「グガアアァァァァァッ!!?」
「よし!片腕が使えなくなったぞっ!!周りこめ!」
そこで追撃と言わんばかりに魔術士のウォーターカッターが刺さる。
ハイオーガは胴体に向けて放たれたそれを横にころがって避けようとするが間に合わず片腕が切り落とす。
「次15秒!!」
次の詠唱完了までの時間を魔術士は告げる。
「「了解っ!」」
ちなみにこの前筋肉痛を治してくれた神官がいるが神官はもしもの時のバフ係兼回復要員だ。
「…来るぞっ!!」
俺は事前に聞かされていたのを思い出しながら距離をとった瞬間ハイオーガが今までと比べ物にならないほどの咆哮をあげる。
「ウルゥアアァァァァァァァァッッッ!!!」
鼓膜が破れるのでないかという大音声だがそれでも目は瞑らない、戦闘中に相手から目を離すなんてあるまじきことだ。
ハイオーガが何をしたかと言うとただ単純に闘力で全身を強化しただけ、それで声帯も強化され非常に大きな声になっている。
たとえ片腕を失っていても元の強さの二倍と考えて行動しよう、ハイオーガは確実に今の俺達よりは強者だと言えるからだ。
「一分から二分間耐えろ!!その後に叩かくぞっ!」
アタッカーが指示を出したあと一番近くにいる俺に向かって一瞬で詰めて片方になった拳を振り下ろす。
早いっ!だがまだなんとか対応できる範囲だ!!
拳を斜めに持った剣の腹で受け流し、浅く腕に傷をつけて大きく一歩下がる。
その瞬間目の前で蹴りが止まり、下段に構えていた剣を一気に上に振り上げる。
「ちっ!」
多分無理だと思っていたが理想通りにはいかず、浅くはないが深くもない傷を付けることには成功する。
これで踏ん張りや移動速度が落ちたはずだ。
ハイオーガは完全に俺以外が見えていないのか周りのことを忘れていた、それが仇となりアタッカーにもう片方の足を半ばまで切り裂かれる。
「グガァァァァァァァッ!??」
ハイオーガは理解出来ずにそのまま片膝を打ち当然俺はその隙を見逃さず【空撃】を首に打ち込みそのまま数回跳ねたあと動かなくなる。
「ふぅ…勝ったな」
念の為アタッカーは首をもう一度刺して確認するが一切動かない。
そしてタンクは見張りをして全員で解体を始める。
「それにしてもクロトは強いな、あの蹴りを避けたのは狙ってやったのか?」
「そうだ、間合いを把握するのは慣れているからな」
「あれはそのレベルじゃねぇぞ…」
「俺は弱いからな、その分技術で埋めないといけないから散々腕を磨いたさ」
幸いにも俺には剣の才能は少なからずあるらしく最低でもそこそこの腕前だと自負している。
「そうか…頑張れよ」
それを最後に必要なこと以外は話さず俺たちは別れる、俺は明日一人でハイオーガに挑むと決めて。
作者のモチベが上がるのでよろしければ高評価お願いします。