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平凡だった男が英雄になるまで  作者: わはーる帝国の皇帝
第一章 生ぬるくとも強くなる
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本当の始まり

人気の無い山奥にいかにも平凡な男がいた、もう何千回と降ったかも分からないが型通りに剣を振るう。


周りにはゴブリンやコボルト、少数ながらもオークの死体が散乱している、だが男の身体もボロボロだ。


まだまだいるゴブリンやコボルトだがこれを成せるのは少しでも才能があるならばできるので履いて捨てるほど多い、この男は平凡な才能しかないと散々言われているがそれでも遥かな高みへと登るためにひたすら繰り返す。


『お前には才能が無い、余程運が良くてC止まりだろう』

言われなくともそんなの自分がわかっている。


一体を切る。


『諦めろ、あいつはもうお前が届く場所には居ない』

あぁそうだな、それでも俺は並びたちたいんだよ。


斬る


『は!その程度の魔力、闘力で何を成せる!諦めて畑でも耕しているんだな!』

…わかっている、だからいい加減黙れよ。

浮かんでは消える言葉に吐き捨てる。


斬る


『お前の代わりはいくらでもいる、ただ一つ違うのは長馴染みが【勇者】だっただけだ』

…うるさい


斬る斬る


『いつまで足掻いている?いい加減諦めたらどうだ?』

…黙れ


斬る斬る斬る


『…さようなら、もう二度と姿を見せないでね』

精一杯悲しみを耐えた瞳で射抜く彼女。

ついに耐え切れなくなり雄叫びを上げる。

「ああァァァァァァッッ!!」


何度も、何度もこう言う言葉が浮かんでは消えていたが今までは耐えれた、冒険者になると決心してからこの十一年間、必死に努力した、しかし越えられない壁が出てしまった時から一気にエイレーネに置いてかれた。


それでもあきらめずにやってきたが限界が近いかもしれない。

だが剣を振るうのは止めない、これをやめてしまえばエイレーンとの日々も否定してしまう気がして。


しかしそれは常人の域を出ておらずこれ以上成長しないこと証明をされている。

それでも剣を振るう、この才能が物を言う世界で。


たとえ心が壊れそうでもエイレーンのことを思い出せば耐えれた…がもう駄目そうだ。


「俺は…俺は…どうすればいいんだ?」

自然と口に出してしまう。

「いくら足掻いても、足掻いても変わらない剣技、いくら必死に覚えても下級魔法五発で無くなる魔力量」

一度出てしまったらもう止まらない。


「対してエイレーンは上級魔法を何発打ってもなくならない魔力量、一太刀降れば斬撃が飛ぶ剣技、ははっ...諦めようかな...」


もう死んでもいいかなと手が止まりそうになったその時、幼い頃に交した約束が風のように呼び起こされる。




『二人で伝説に残るような冒険者になろうね!約束!』


『うん!絶対だよ!』




なぜ今までこの言葉を忘れていなのだろうか、朧気だった思い出される言葉、それを思い出してしまえばここで立ち止まれない。


「…強さが欲しい、例え神に仇なすとしてもエイレーンの隣で笑えれるほどの強さが欲しい」

願えば強くなれるのならばもう既に強者で溢れているであろう、しかし願えずにはいられない。


段々と覇気が戻る体、弱気になったのはこれが初めてでは無い、何度も、何度も諦めようとした、しかし俺は諦めることを許されていないことも思い出した。



『...待ってくるからね...』

自然と出てしまっていただろう最後の別れの時のエイレーネの言葉。



「俺は常に弱者だ!故に常に力を望む!力を欲する!修羅道に入ろうとも力が手に入るのであるならば喜んで飛び込もう!!」


自然と紡いでいた宣言とともに降った剣の鋭さは今までと比べ物にならないほどで、同時に俺の中で何かが変わっていく、無駄なものが削ぎ落とされていくかのように、だが代わりに力が体の芯から力が溢れるような感覚だ。


俺は言葉を紡ぐ、ただ一つの願い以外は捨て去る覚悟で。


「たとえ己の身が砕け散ろうとも終わりなき闘争へと向い一歩、一歩と進み、必ずや己が最強と知ら示よう!!」


その一撃は万物を全て切り裂くような鋭く、美しく、荒々しい一閃を撃ち放ち、最後の一体を斬り殺す。










その名が紡がれる。


「【凡人の挑戦】」


「…もう…立ち止まるな、終わりが来るその時まで立ち止まるな」


ようやく彼…クロトはスタートラインに立てたのであった。


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