この世には怒らせてはいけない者がいる。
「そう…………領地からでて、少し気が緩んでいるんじゃないかしら?いつも言っていましたよね?油断は死を招くと……」
お父様は首を上下に振って頷いた。
『ククククッ、待たせたな!死ぬ準備は出来たかな?貴様らは楽には殺さん!私の邪魔をした罰だ。人類に絶望を与える道具にしてやる!』
身体に刺々しい角を生やしている人型の巨人ゴーレムが動きだした。
『さぁ!絶望するがいい!邪神などもう不要!私自身が新たな邪神となって世界を闇に染めてやろう!』
巨人ゴーレムは拳を握り殴り掛かった。
ドガァーーーーン!!!!
『あら?いけない。いけない。殺してしまったかしら?』
ボンッ!!!!!
巨人ゴーレムの腕が吹き飛んだ。
『なに─!?』
「クスクスッ♪笑わせないでくれます?あなたみたいな人形遊びで喜んでいる小物が邪神の代わりになるはずないじゃない♪』
ダンジョンコアには何が起こったのかわからなかった。
『な、何をしたーーーーーー!!!!!』
反対側の腕で再度殴り掛かった。
ドーーーーーーン!!!!
今度は振りかぶった腕が弾け飛んだ。
『バカな!?』
ダンジョンコアは視線の先に何があるのか凝視した。
「ウフフフ♪あらあら、邪神となると豪語した者が何を慌てているのかしら?」
スピカは魔法の力でゆっくりと空中に浮かんでいった。巨人ゴーレムは腕を再生させたが、攻撃できずにいた。
『お前は何者だ!』
「私はスピカ・グリーンウッド。地元では森の女神と呼ばれているんですのよ?」
スピカは手にした杖を巨人ゴーレムに向けて言った。
「我が愛しい旦那様に死ぬかも知れない傷を付けた事を懺悔しなさい!」
巨人ゴーレムに匹敵する程の超巨大な火球が頭上に現れた。
『まっ!待て!?こ、こんな魔力、人の身にある訳が!!!!?』
「ウフフフ♪地獄の業火に焼かれながら身の程を知りなさい♪」
『まっ─!?』
「待たない♪」
頭上から超特大火球が巨人ゴーレムに堕ちてきた。圧倒的熱量にゴーレムの身体は熔けて焼け崩れていった。
『バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?バカな!?』
ダンジョンコアには理解出来なかった。圧倒的な力を手に入れたはずだった。ちっぽけな人間をアリのように踏み潰すだけの簡単な仕事だったのだ。しかし、今自分が滅びようとしている。
─何故だ?
ウフフフ♪さぁ!懺悔して消滅しなさい!
何処から声が聞こえた。
ダンジョンコアが最後に見たのは自分の消滅を心から嗤う女の姿だった。
『………邪神……様!?』
ダンジョンコアはスピカの姿が邪神に見え、怒らせてはいけない者がいる事を最後に知ったのだった。
こうして、ジャガー王国を滅ぼそうとしたスタンピードは本当の意味で終息したのだった。
余談ではあるが、スピカの超特大火球はダンジョンのあった場所に大きなクレーターを作った。シオンは山火事を防ぐために広範囲に結界を張り、爆風までも防いでいたのだった。
「お父様、お兄様、絶対に死なないで下さいね!私も気を付けます!」
「「異議なし!」」
この一件でグリーンウッド一家の結束が深まったとかはどうでも良い話である。




