真の敵は!?
ユーリと呼ばれた僧侶の少女はクスクスと笑っていた。
「エリザ姫、『アレ』はもう生きていない。魔力で無理矢理動かされているだけだ!」
冷静なカストルの言葉にエリザは落ち着きを取り戻し、剣を構えた。
「あら?最初から言っていたじゃない。ダンジョンコアに永遠の命を貰ったって」
「ああ、言っていたな。油断したよ。それより、『お前』は誰だ?」
カストルの言葉にユーリの目が厳しくなる。
「なんの事かしら?」
「お前はユーリと言う人物では無いだろう?誰だ?」
ふと、ユーリはまた笑いだした。
「クスクスッ♪勘のいい子ね。お察しの通りこの身体の持ち主すでに居ないわ。私が頂いたのだから」
「なんだと!?ではお前は─」
エリザが言う前にカストルが言った。
「………ダンジョンコアだな?」
ユーリはニヤリッと顔を歪めた。
「ええ、この自分の意思が弱い人間に成り代わり、バカな仲間の冒険者達の欲望を誘導してスタンピードを起こさせたのよ。おかげで膨大な力を手に入れたわ♪でも、契約で縛られている私は表向き冒険者の契約で、国を疲弊させてコイツらに国の王になるよう動かなければならなかったの。全員、死んで貰って助かったわ」
恍惚とした表情で遠くを見つめるユーリにカストルは剣を付きながらも立ち上がり、剣を向けた。
「貴様の目的はなんだ!」
「あら、知れたことよ。自分のダンジョンを大きくして『邪神』様に捧げることよ」
平然と言うユーリにカストルは珍しく驚愕した。
「邪神だと!?全てのダンジョンが邪神に力を与えているのか?」
「いいえ、私を含めた一部のダンジョンコアがその使命を受けているだけよ。まぁ、私はたまたま運が良かったから動いているけれど、他の同じダンジョンコアは積極的には動いてないわね。邪神様の命令でもダンジョンコアは本能でダンジョンを大きくする事を目的としているの。その本能が優先されるからね」
カストルはならばと、ユーリに向かって叫んだ。
「ならば、余計に貴様を野放しにはできない!ここで勝負を着けてやる!」
「できるかしら?不死身の冒険者を相手にね?」
いつの間にか、吹き飛ばされた首なしのブレイブや、胴体を真っ二つになった魔法使い君が上半身と下半身が中途半端にくっつき、ユーリの側にいた。
「うっぷ………なんのホラーですか……」
「そういうな。これからアイツらと戦うんだからな。それと、油断するなよ。普通の常識が通用しないぞ?」
エリザは返事の代わりに剣を握った。
「ええ、カウス様が虚を付かれた事から十分に分かっているわ!」
「さぁ、死ぬ準備は出来たかしら!」
「お前がなっ!」
ライガは治癒魔法に集中しているシオンとカウスを守る為に動けなかった。いつこちらに攻撃が飛んでくるのかわからないからだ。
『頼むぞ!不甲斐ないワシの代わりに倒してくれ!』
カストルとエリザが飛び出した!
首なしのブレイブがカストルの前に立ちはだかった。
ガギンッ!
カストルの一撃を防ぎ、反対側の腕で殴り掛かった。
「くっ!」
拳を避けて剣で斬りかかるが─
ザシュッ!!!
カストルの剣が肩から身体を切り裂いた!
しかし、カストルの表情は優れなかった。簡単に致命傷を与えた事に疑問を感じていると、ブレイブは剣が身体を切り裂かれているにも関わらず、自分の剣をカストルに振り下ろした。
「クソッ!?」
カストルは剣を抜こうとしたが、抜けずに反応が遅れた。カストルもまた肩から少し切られてしまったのだ。鎧のおかげで軽傷ではあるが。
「……本当に常識外の化物だな」
「あら?可愛いじゃない♪このダンジョンにいる間は絶対に死なないのだから」
「すでに意思という魂は死んでいるがな」
ユーリの言葉に不安を感じるカストルであったがすぐに気を取り直した。
「エリザ姫!コイツらは生物と思うな!ゴーレムを相手にしていると思え!」
少し離れた場所で、ナイフを避けながら戦っていたエリザは振り向かずに承知したと答え、アンジェに斬りかかって行った。
「接近戦闘ならっ!」
ナイフを防ぎながらアンジェに攻撃を加える!すでにアンジェは先の戦いで真っ黒になっており、人の身体をした『何か』は動きが鈍かった。
「はっーーー!!!」
エリザは突き出された腕を切った!
「まだまだ!!!」
さらに首を跳ねた。エリザはナイフの動きが止まった事で、アンジェだったものを滅多切りにした。
「はぁはぁ………」
それを見ていたユーリが可笑しそうに言った。
「あらあら、酷いことをするのねー?」
ユーリが手を伸ばすと、バラバラになっていたアンジェの身体が少しずつくっつき出した。
「くっ!ここまでしても再生するのか!?」
このまま体力を消耗するだけだと分かっていてもどうしようも出来なかった。




