終戦!
カストルの剣止めたのはシオンだった。
「何故止めた?」
僅かに怒りが混じった声だった。大将首を止められたからではない。武人として敬意を持って命を断つ事を止められたからだった。
「この方はまだ死なすには惜しい人物です」
「………しかし、総大将を討たねば戦争は止まらぬぞ?」
シオンはゆっくりと指を差した。
「あの者の首の方が価値がありますわ」
カストルとガーランドの一騎討ちの間に陣の隅へと逃げ出していたポーランドを指差したのだ。
「彼はどうやら帝国の王子みたいですわ。兵士達の会話を拾いました」
「なるほど!」
カストルは一気にポーランドに近付いた。
「き、貴様!俺を誰だと思っている!帝国の第3王子にして、次期皇帝となる男だぞ!」
うん、こいつはバカ決定だね。
「そうか、貴様がこのバカげた戦争を始めた元凶か。では死ぬ覚悟はできているな?」
カストルが剣を掲げるとポーランドは腰が抜けたのか、地面に座りながら後ずさった。
「おいっ!?ま、まて!俺は帝国の王子だぞ!?俺を殺せば外交問題になるぞ!だ、だから見逃せば兵士を退かせてやる!」
お兄様は聞くに耐えないと、無言で剣を振り降ろした。
ザシュッ!
あっさりとポーランドの首が転がった。
「…………我々の敗けだ。投降する」
総大将ガーランドは膝を付いたまま頭を垂れた。
「失礼します」
シオンはガーランドの切り飛ばされた腕を傷口に当てて回復呪文を唱えた。
「なっ!?」
痛みが引き、手のひらをにぎにぎしながら動く事を確認するガーランド。
「まさか、聖女と呼ばれる回復呪文の使い手だったとは…………」
シオンは茫然としているガーランドに冷たく言った。
「さて、貴方のやる事はわかっていますね?」
「ああ、わかっている。すぐに戦争を止めさせよう!」
総大将ガーランドは、周囲にいる幕僚に停戦命令のドラを鳴らすように指示を出した。
「………我々は侵略者だ。捕虜はここにいる私を含めた高位の幕僚達のみにして、一般兵士は帰して貰えないだろうか?」
本来であれば、侵攻してきた者が意見する事は出来ない。決定権はローズガーデン側にあるのだ。
「それはローズガーデン側に言って下さい。私達はユグドラ王国の援軍に過ぎませんので」
ガーランドは小さく、そうだなと言って大人しく縛についた。帝国軍側から停戦命令のドラが響くと、ローズガーデン側も即座に戦闘を止めて引いていった。
「シオン!カストル殿!大丈夫であったか!?」
エリザ姫殿下が、護衛と共にやってきた。
「まさか、本当に6万もの軍勢に圧勝するとはな…………正直、自信を無くすわ」
エリザは自分の不甲斐なさに、少し寂しそうだった。
「いや、君は筋が良い。我が領地で1~2年ほど魔物相手に腕を磨けばすぐにジンぐらいのレベルに達するだろう。もし強くなりたければ、グリーンウッド領にくるといい」
カストルはエリザに向かって手を出した。
「なっ!??」
エリザは顔を真っ赤にしながらカストルの手を取るのだった。
「す、すぐには無理だが、絶対にいくからな」
「ああ!」
なんか良い感じになっている二人に居たたまれなくなったシオンが咳払いをして、終戦協定の準備をするように催促した。
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「それでは調印を!」
正式な休戦協定は後日となったが、仮の条件は概ねガーランドの提案した通りになった。
「なぁ、本当に良かったのか?兵士を帰すって事はまた敵として襲ってくるってことだぞ?」
そう尋ねると、エリザと老将のグラハムは言った。
「しかたないのじゃ。捕虜にしようとも、捕虜の数の方が我々より人数が多い。管理しきれないのであれば帰すしかないじゃろう。まさか、侵攻者と言っても、末端の兵士を全員殺す訳にもいかんしのぅ」
正直、数百人ぐらいであれば、鉱山奴隷などに送れるが、万単位の人間を1度には面倒見切れないのだ。
「それに、これだけ大敗したんだ。しばらくは侵攻する余力などないだろう。向こうの兵站もほとんど接収したしな」
軍隊の維持には莫大な金が掛かる。そうポンポンと遠征など出来ないのだ。
「後は文官達に任せるさ。良い条件で契約してくれるだろう。今は怪我人の手当てだ」
エリザは戦場を見渡したが、そこにはシオンが大規模エリアヒールを使い、死者以外は回復していた兵士達の姿があった。
「あ、あははは…………本当に規格外な連中だ。…………敵で無くてよかった」
「まったくですじゃ…………」
エリザの乾いた笑い声に同調するグラハムであった。
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