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湖の主と結界

「レクティータ、……!」


ヒロインに呼びかけたフェナクが小舟の中に沈んだ。漕ぎ手の兵士が慌てているようだ。急に座ったのか?真後ろに倒れたように見えたけど……。


小島正面につけたフェナクの影で見えなかったが、真後ろにいた刃丞が驚いた顔で振り向いている。


(あー、刃丞のやつフェナクを眠らせたんだな)


驚いた顔は“やっちゃった”の顔なんだろ。“応援”されたらレクティータさんの聖魔法が一時強化されて消滅魔法に進化しちゃうのは事前に確認してたんだもん。しゃーないしゃーない。

見えるかわかんないけど、刃丞にむかってサムズアップしておく。


そこに静かに近づくウィステリア先輩の小舟。フェナクの舟を覗きこみ、なにやら兵士に伝えた様子がわかる。そしておもむろにウィステリア先輩がフェナクの乗った小舟を女性らしい細腕でさわった。


トン、というくらいの接触だった。それなのにまるで巨人に押し出されたように、手動の舟ではありえない速度で陸へすべりだすフェナクの舟。水しぶきを上げてまっすぐ進むさまはジェットスキーとほぼ同じだ。乗り合いの兵士の悲鳴のようなものも聞こえたが、舟はぶじに着岸となった。


「おおー、ちょっと楽しそう」


感心して先輩をみると優雅に手を振って見送ってた。


「タラゴン家の娘の魔法は身体強化か」

「身体強化?」


近くにいたヴェガが目をすがめて小島の一件を見ていた。身体強化って見た目がムキムキになったりしないの?


「通常は見た目にも影響が出るはず。それがなかったってことはあの女が相当に鍛錬を積んだんだろ」

「へぇ!てことはウィステリア先輩すごいですね!」


元空手部主将にまでなる人だから訓練とか頑張る人なんだろう。素直に尊敬の眼差しを送ってしまう。


先輩もおれの視線に気づいてこちらへ向かって手を小さく振ってくれるが、そのとき異常が起こった。跳ねていた無数の小魚が静まり、代わりにウィステリア先輩とおれたちのちょうど真ん中のあたりからゴゴゴゴゴ……と太い波紋が浮かんできたのだ。


「ッチ!やべーな」

「なになに!?」


ヴェガが舌打ちして魔力をかなり濃く練りはじめた。とりあえずおれも魔力を練る。湖畔の兵士も舟に乗っている騎士たちも構えを新たにした。


波紋の中央からは大きな黒い影が浮上してきてるのがみえる!


「湖の主だー!」

「ヌシが現れたぞ!」

「総員攻撃体制! 殺すなよ!」


討伐不可!討伐不可ー!!

あたりで騎士たちが騒ぐなか、東の湖にいるヌシと呼ばれる水蛇が姿をあらわした。

大量の水を滝のように頭部からしたたらせ、細い長い舌をチロチロとさせて白い大蛇はゆっくり頭をもたげた。


(で、でかー!)


水系の魔物は地元には少なかったからこれは迫力あるぜ!

湖が禁制っていうのはコイツの存在もあるんじゃないか?


目線をあたりに飛ばすと攻略対象者もその場にて攻撃の準備を整えており、湖上にいるのはレキサ王子、シフリール先輩と小島に一番近いウィステリア先輩だな。

陸ではピネちゃんたちがすでに魔力を練りいつでも放てる状態だ。ハチクちゃんは盾の後ろではあるものの同じく魔力充填済っぽい。

うちのラデュレさんたちは戦闘態勢ではあるが、あれはとどめを刺せないと聞いてやる気なくした態度だな。


「討伐不可ってどういうことですか、ローズマリー様に何かあったらただでは置きませんわ」

「っは!好戦的だな! 聖女候補の結界が張られるまで、大蛇の気と攻撃をおれたちで引き受けんだよ……こうやってな!」


言うやいなやヴェガが火球を放った。そのすごい速さで飛んでった火球は大蛇の首元に命中。ズズズ…と動いた鎌首がこちらを向き、金色の目がヴェガを捉えた。


「ガンガンやってけよ! 弱点属性での攻撃は禁じる!」


ヴェガが大声で指示を出すと四方から順に火球や弓が飛んでいく。弓などは皮膚に弾かれて怪我をさせることもない。大したダメージじゃないのはわかるけど、ヌシもイライラするだろう。気まぐれに口から電気を帯びた水球を飛ばしてくる。


あたると麻痺するらしく倒れる兵士もちらほら。水に落ちた者の救助したりと、わりとてんやわんやになってきた。


おれはというと、触手ちゃんが届く距離じゃないから水球の飛沫がきたら触手ちゃんムチでピシピシして、まわりのフォローに従事。


しばらく続けているとふいに大蛇が頭部をゆらめかせだした。


「?」


目を閉じてるっていうより寝てないか??

突然の奇行に攻撃の手を緩める陸組。


グラリと大きく下へ落ちたヌシの頭。それを好機とみたのは全員だったけど、もっとも早く反応したのは、


「ウィステリア先輩!!」


ヌシから小舟を離さず状況に当たっていたご令嬢が、同乗した騎士の腕を足がかりに大きく跳躍し、下着が見えるのもかまわずヌシの顎めがけて蹴りを繰り出した。


ザパァアアアン!!


脳が揺れたのかゆらりゆらりとしたあとヌシが湖に沈んでいった。


そして間をおかずにキィィィン……と結界の張られた音。

小島を中央として一面が黒銀色の魔力に包まれた。

ブクマ、評価ありがとうございます(^ν^)二日間になったけど結界修復完了です。

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