食用の湖系モンスター
ビチビチッ!
手のひらサイズの魚が足元で跳ねる。
前列にいるピネちゃん、プリュネちゃんが何故かこっちに放って来るんだ。
結界が取れたとたん、湖からモンスターが飛び出してきて騎士たちが一斉攻撃を始めたんだけど、ピネちゃんプリュネちゃんも前線へ走り出てた。魔法を放ち剣をふるい、周りの男に負けないくらいの活躍をみせてる。
ビチビチッ!
そしておれとハチクちゃんの足元に転がるモンスター。赤い魚型モンスターなんだけど食べたら美味しいやつ。
「はぁ、はぁ……っ、えい!」
短剣をギュッと握ってるハチクちゃんが青褪めながらも魚にトドメをさしてる。それを見守るおれ。いちばん女子力が高いのはいまのところおれで良いかな……と思いつつハチクちゃんに噛みつこうとする魚を触手ちゃんで弾く。
出現モンスター自体はそんなに高レベルのものじゃないから、放っておいても大丈夫そうなんだよね。
冷静なおかげで戦況を全体的に眺められる。視界の端で我が家のメイド達がモンスター素材を馬車に運び込んだりしてる。ラデュレさんバルベロさんコンビは湖畔の向こうで大きい魚が出たらしく喜々としてそっちに走っていったのを見たのが最後だ。
(王子たちも余裕なさそうだけど健闘してるな)
あちこちで水面をたたく音やモンスターの雄叫びが聞こえてるなか、攻略対象者たちも騎士にかばわれつつも剣や魔法で応戦していた。
彼らはおれたちの近くに陣取ってるので半年前より身のこなしが良くなってるのがよくわかる。特に王子のステップが力強い! 刃丞と筋トレしてた効果がこんなところで出てるっぽい。
触手ちゃんムチでピシピシしつつ眺めていたら、王子がおれの視線に気づいたらしく顔を向けてきた。
「がんばっているようだな! だが身の安全を第一に考えよ!」
お、おう。
ザッと魚をはんぶんにした王子がキリリと言ってきた。
「なんてお優しい……っ頑張りましょう!」
ハチクちゃんが感動したように短剣を振り下ろす。青褪めてた顔色も良くなったみたいでよかった。
「舟をだせー!!」
「小島にモンスター接近!」
どうやら小島付近にモンスターが出始めたらしい。
湖畔から騎士たちの伝令がとびあい禁制の湖に小舟が浮かべられた。
「私も乗るぞ!聖女様たちをお守りせねばならん」
つぎつぎと乗り込む騎士と一緒に王子も舟で湖へこぎ出ていった。よく見れば少しむこうではウィステリア先輩も舟に乗って小島へ向かっている。船首に足をかけて立ち髪を靡かせながら顔はやる気満々だ。
「ああっローズマリー様はご無事でしょうかっ?」
ハチクちゃんが短剣を握りしめて心配してる。よく考えなくてもハチクちゃんは本当に令嬢らしい令嬢だな、足元に捌かれた魚が放置してあるけど。ピネちゃんたちからの魚輸送も一旦ストップしたからここは安全だ。おれは胸元からハンカチをだして、ハチクちゃんのほっぺについた青い血をそっと拭う。
「王国の兵士は最強ですわ。王子も向かわれたましたし、きっと大丈夫です」
「そ、そうですよね、我が国は強いですもの」
ハチクちゃんは言ってはみたけどやっぱり怖いみたいでおれの腕にギュウと抱きついてきた。ちいさく震えてる肩を撫でて少しでも落ち着かせてあげようとする。うーん……庇護欲というかこう、胸がムズムズする。
いまや湖全面から小魚が飛び出して水蒸気ばりに水を弾かせている。そこに分け入る舟からの攻撃がガンガン効いてるっぽくて、はたから見てると無双ゲームのVS雑魚戦みたいだ。ストレス発散に気持ち良さそう。
おおー、と戦況をみてたら、抱き合ったまま動かないおれとハチクちゃんのもとへヴェガがいつの間にか近くに来てくれてた。
「……ここは守るから安心してろ。もう少しだろうから頑張れよ」
そう言っておれたちに背を向けたヴェガは魔法の盾を展開。再びピネちゃんから放られはじめた魚を空中で攻撃を浴びせて倒しつつ、前線へ走っていった。
魔法使いだからこういう時はとくに忙しそうなのに来てくれるとかさすが人情に厚い不良だ。
「頼もしいですわね」
「はい、そうですね」
正直、盾を作ってくれたのはすごい助かる。これがあればハチクちゃんから少し離れても大丈夫そうだ。
「ハチク様、少々失礼いたしますわ」
「えっカエノメルさん?」
「すぐに戻りますので」
盾の横から走り出る。気になることがあって、兵士たちの間をぬって前線の湖畔ギリギリにでた。
(フェナクも舟に乗ってるな……。まあそれよりレクティータさんの魔法ってどうやって使うんだろ)
この夏からヒロインも戦いに参加するっていうけど具体的にどうなのか確認したい。
刃丞は黒銀魔法の進化をしきれなかったけど、レクティータさんは回復魔法を使えるようになってた。
「あー……なるほど?」
小島のそばに出現した小魚が無差別に水魔法を飛ばしてるっぽい。威力は小さいけどダメージが蓄積したらまぁまぁ辛いやつだ。定期的に白金の魔力が放出してるのが確認できるから、あれが回復魔法の使い道なんだな。
いまのところ消滅魔法は放ってないな。
よしよし、とハチクちゃんの元へ戻ろうとしたとき。
小舟で聖女たちのいるところ近づくフェナクが口を開くのが見えた。
「レクティータ、……!」
全員のアクション書ききれんかった……明日続きです!
ブクマ、評価ありがとうございます(^ν^)嬉しいです!




