二年時、夏季試験
夏季試験の日である。
午前中の座学の試験を終え、ランチタイムを挟んで午後は実技。Bクラスは校庭で対モンスターの対処をみられるけど、刃丞と取り巻きの子たちがいるSクラスとAクラスは体育館を使って合同でなんかやるんだって。
で、おれのまえにモンスターが三匹。
例によって先生に造られた土人形でホーンラビットが二匹、飛行するモンスターが一匹用意された。
「あ、外したっ……触手ちゃん!」
飛んでるのがよく見えなくて確認できない。素早い動きで近づいたり遠ざかったり。
よくみたいのにホーンラビットもピョンピョン動き回ってなかなか触手ちゃんで捕縛できない。もー手で捕まえたほうが早いな!
「カルダモン嬢、魔法で対処なさい」
手を出そうとすると先生から注意が入るんだよ。
そうこうしてるうちに捕まえてた一匹が触手ちゃんの捕縛から抜け出して、事態はイチからになったり。くそーめんどくさいっ!
「いでよ触手ちゃん、しばれ!」
ニュン!
飛び出した二本がホーンラビットの片方を捕まえた。ここまでは出来てる!
「イタっ、もー!」
後頭部を飛んでるやつがかすって行く。でもおかげで爪があるのが分かったし、羽音にも聞き覚えがある……
「しなれ!!」
考えてる間にもホーンラビットが近づいてくる。速度があるから縛るよりも良いかと伸ばした触手ちゃんをしならせて打とうしたが避けられる。なんなん!
「はい、そこまで」
先生の無慈悲な終了が告げられた。
はぁー、とため息をついて先生のもとへ。
「ではカエノメル嬢、相手のモンスターの種類はなんでしたか」
「ホーンラビットと吸血コウモリのオスです」
「正解です。なぜ吸血コウモリはオスだと?」
「口ではなく爪での攻撃をしてきたからです」
「はい、正解です。メスのみ吸血する牙を持ち攻撃にもつかいますが、オスは爪でだけ攻撃するのが吸血コウモリの特徴でした」
せやねん。そういう図鑑的なのはちゃんと覚えてるんだよ。先生も優しい顔だったけど、眉をちょっと下げて今回の評価を告げた。
「ですが、無力化と退路確保については三分の一の成果だったので、ほかに魔法での対処法があるかを考えるのを後期の課題としましょう」
「はい……」
ありがとうございましたと頭を下げて待機場にもどる。
しょんぼり。
もともとショボい魔法で入学したから、こういうときは攻撃魔法持ってる人が羨ましくなっちゃうぜ。
「カエノメルさん」
同じく試験を終えて待機場にいたレゴちゃんが微笑みで迎えてくれた。元気のないおれに気づいたのか肩を撫でてくれる。や、やさしい……!
ちょっとネガティブになったけど頭を振って思考を切り替える。
(いやいや!逆に考えればよくここまで対応できてるよ、触手ちゃん!)
己に喝をいれてると後ろの試験場からすごい風が起きた。
「きゃぁ!」
「な、んですの!?」
レゴちゃんをかばいつつ振り返ると、ラレールさんが大きい竜巻を起こしてホーンラビットとキラービーを空中に巻き上げてた。
先生からの総評を聞いて満足げにうなずくと、こちらへやってくる。
「ンホーッホッホ! ごらんになりまして?わたくしの竜巻は田舎の男爵家の魔法とは格がちがいますの! なぁんにも捕まえられない魔法では大切な方を守れませんわよねぇ」
「守れませんわ!」
「なぁんにもですわ!」
「ぐぬぬ……っ」
ラレールさんの取り巻きもササッと現れて援護してくるが、言い返せない。ラレールさんの風の攻撃魔法はやっぱり強いし、見栄えするしかっこいい。でも言いたくないっ!
「カエノメルさんはこれから成長しますのよ!ひどいことおっしゃらないでください!」
「レゴちゃん……」
レゴちゃんがおれの隣に立って怒ってくれる。おれのために顔を赤くして怒ってるのが可愛い。去年より怒る声も少しだけ大きくなった気がする。
「カエノメルの魔法は一年時よりも進化している、たゆまぬ研究と努力の証だろう、これからもきっと強くなるから問題はない」
にゅっと横からロベールも口を出してきた。早口なのでラレールさんたちは、え?みたいな顔してるけどおれは嬉しいぞ!ロベール!
「ふ、ふんっ!おぼえていなさい!」
ラレールさんと取り巻きたちは去っていった。なんでこんなに絡んでくるんだろう。レゴちゃんのこと好きなら俺を経由せずにアピールすればいいのに。
「カエノメルさん、気にすることありませんわ」
「そうだ、カエノメルが頑張ってたのを僕たちは知ってるから」
「ふたりとも……!」
泣いちゃうじゃんか!ありがとう!
思わず抱きしめようと両腕を広げた瞬間、背後で爆発があった。
詳細にいうと白金色の魔力が体育館の屋根を吹っ飛ばした爆音が校庭に響いた。




