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昼食はタンパク質を多めに

週末になれば夏季試験という週のはじめ。

おれは刃丞のランチに参加するために中庭を歩いていた。


「んんーっ体かたくなってるなー」


両手をのばすストレッチをして筋肉をほぐす。試験勉強が暗記物のせいで机に座ってる時間が長かったんだよね。あとでしっかりほぐした方がいいな。


「んー……っはあー」

「…………」


人気のないところ選んだつもりだったのに、なんでかフェナクがいた。普段は不良少年・ヴェガが座ってるベンチそばの壁にもたれて立ってる。


どうやっても目のまえを通るしかない、いやならあとは引き返すような道に、気だるげな様子でだ。


(めんどくさそう)


直感で感じたけど、目上の貴族相手に道を引き返したほうが後々ややこしいことになるだろう。奉公に来いって話があって初めて会うしなぁ。貴族っていやだわあ。


「ごきげんよう、フェナク様」

「…………」


とりあえず三歩離れた場所で立ち止まりご挨拶する。それに対してフェナクはフイッと顔をそらせて無視ですよ。そらす角度とか考えてるのか?ってくらいオシャレな角度だ、気に食わん。


「……それでは失礼いたしますわ」


まぁ礼はしたしおれの問題はない。さっさとランチにいーこお!


「待ちなさい」


なんやねん!

しぶしぶの気持ちを隠して振り返る。相手は壁から背中をはなし、ゆっくりと近づいてくる。しかも表情がいつもの微笑み系男子じゃくて真顔なんだけど。


「………傷はどうです」

「は?」

「健気なことですね、それが打算でないことを願いますよ」


何言ってんの??

ポカンとしてるおれの頰をひと撫でして去っていくフェナク。


ゾワワワワ!


「うわあ」


中身が女の子ならキュンとする場面なのかもしれない。おれは絶対にしないけど。

すごいな、キザな男って女子の顔面すぐ触れちゃうもんなんか!? 一歩間違えたらセクハラで断罪なのに、すごいよさすがモテ貴族。


「訳分かんないけどな」


モテるやつの心理なんてわかるはずもないので、おれは意識を切り替えてランチのメニューを考えることにした。




リゾートのようなテラス。

ふわふわのクッションに磨き抜かれたカトラリー、鮮やかな生花、そして公爵家のシェフが用意した最高のランチ。


至福のときとはこういうことなんかな……。お気にいりの鳥ハムにレモンソースが贅沢にかかってる。なんかピンクの果実とかレタスも添えてあって見た目も豪華だ。


(ああーうまーいー!)


「メルは本当にしあわせそうに食べるわね」

「ああ、見ていて私も幸福な気持ちになる」

「おっしゃるとおりですわね」


もぐもぐ食べてるのを刃丞と王子が微笑ましく見てくるけど、いつものことだから気にしない。


「ハムは筋肉を作るのには最適よ、どんどんお食べなさい」

「筋肉を……それは大切だ。カエノメル、たくさん食べるのだぞ」


ほんとに仲良くなったよな。これならヒロインちゃんに奪われるっていう心配はいらないかも。


公爵令嬢と王子からの慈悲深い言葉に応えるように、ラデュレさんが皿が空くとハムをガンガン取り分けてくれた。


こんなにおいしいのにピネちゃん達は全然食べないんだよね、ハムだけじゃないから少食なんだと思う。そのピネちゃんたちは、おれたち三人を微笑ましげに見るっていうのが最近の定番だ。


「ローズマリー様とカエノメルさんは鍛えていらっしゃいますのね」

「普段の見た目ではわかりませんけれど、ほんとうに努力なさってますよね」

「仲がよろしいのですね〜ステキですわぁ」


と、のん気だ。


「コ、コホン」


わざとらしい咳が聞こえた。そちらをみると王子が視線をウロウロさせて唐突に言った。


「ローズマリーもカエノメルも、素晴らしい筋肉をしているぞ」


なんで緊張しながら言ったの。いやわかるよ、おれたちのお尻を想像しちゃったんだよね、鍛えてる尻を。


「わたくしなどまだまだですわ。ね、ローズマリー様」


自宅で空気イスとかして、尻の筋肉カッチカチにしてる刃丞は出来が違うんだ。


おれの言葉にす、と立ち上がり王子に背を向ける。


礼をするように左脚を後ろに出せば、制服のスカートからふくらはぎが綺麗に見えた。そして、刃丞は力を込めてゆっくり腰を落とした。


「お、おお……!!」


王子が思わず、といったように感嘆の声を上げる。頬を染めてるし、ぜんぜん目が離せないみたいだから狙い通りだ。


(やったな刃丞!)


去年からコツコツ続けた努力は実ってるよ!おれは熱くなった目頭から涙が出そうなのをぐっと堪えた。


王子はおまえの下半身に夢中だぜ!



その後なぜかおれも刃丞の隣に呼ばれ、おなじポージングをとることに。鍛え方足りないからちょっと恥ずかしい。


王子は立ち上がって遠くから見たり、うんうんうんうん唸ってはほぅ……とため息をついていた。

紳士的な態度なので芸術の鑑賞みたいな雰囲気をだせてるのはさすが王子だなって思った。

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