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好感度チェックと避けられぬ悪役事情

冬休みもあと少しってころ。


おれはふと気になって学校の裏庭に来ていた。


「にゃんちゃーん?」


めったに雪は降らないが冬なのでそれなりに寒い。今日明日がとくに冷えそうなので、夏に会ったあの野良猫ちゃんはどうしてるだろうかと鹿肉持ってやってきたのだ。


ベンチの下を覗くけど姿はない。


「うーん……暖かいとこにいるといいんだけど」


立ち上がってワンピースについた土を払ってるとこちらへ近づく足音がした。


「……来てたのか」

「ごきげんようヴェガ様。偶然ですわね」


おう、偶然だな!

まさかヴェガも猫ちゃんが心配できたのか!?


「ヴェガ様も猫ちゃんをお探しで?」

「……おまえもか。今日は冷えるから、見つけたら家連れてこうかと思ってよ」


優しい!不良優しい!

それからしばらく、おれとヴェガはベンチ座ってポツポツ話したりしてたが、残念ながら猫ちゃんは現れなかったのでそのまま別れた。




学校の礼拝堂は新学期であっても無人だったが、中は魔力でほどよく暖められ清潔に保たれてた。


「最新の情報ですわ! 今回は調べがいがありました」


レゴちゃんが資料をまとめて楽しそうに微笑む。


昼休み。

おれとレゴちゃんはいちばん奥のベンチで膝を突き合わせていた。制服の上から冬用の外套をきたレゴちゃんが可愛い。ちょっとモコってしてるんだよね。


冬休みのあいだに半年後の『聖女選択』に向けてピネちゃんたちとも話しあい、明確に決まった事がある。


それは、2回目は絶対に勝つということ。


これは刃丞とウィステリア先輩との反省会でもおなじだった。『聖女選択』の勝敗は拮抗させ、最終的にはヒロインちゃんに聖女になってもらって刃丞は王子と結婚するのが理想だ。


引き分けていればとりあえず公爵さまにも体面が保てるし、交互に好感度を上げ下げしていればレキサ王子がヒロイン・レクティータさんに極端に気持ちを傾けるってことはないんじゃないかってことだ。


今回負けた刃丞は攻略対象から一律で好感度か下がってるからつぎも下げるのはリスクあるもんね。


そんなわけで、とにかく男子たちの今の状態を知ろうってことでレゴちゃんに今朝お願いしたんだ。


「そう言われるかと思って、冬の間もずっと調べていましたの!」


ニコニコと頼もしいことを言ってくれるレゴちゃん。


「まずはレキサ王子のことですわね。王子はいま気になる方はいらっしゃらないようですわ。ローズマリー様とはお話をされてるようですが、夏前のような距離感に感じられます……」


うわー振り出しに戻ってるのか……。


「レクティータさんと仲が良いのはフェネク様ですわね。冬休みにいちど国立公園で会っていらっしゃるみたい」


イベントだな。順調にそのまま進めてほしい。


「えぇと……カエノメルさん、ヴェガ様と最近とても仲がよろしいって噂ですわ。あまり素行がよろしくない方ですが問題はございませんこと?」

「はふえ!?」

「それからシフリール様がカエノメルさんのお家とお手紙をやりとりされてるのは、ご婚約がお決まりに……?」

「ふぇあ!?」


なんだそれ!ぜんぜん知らんけど!?


「……そのご様子だとまだ決まってなさそうですわね! ほっとしましたわ!」


なぜか満面の笑みを浮かべたレゴちゃんが持ってる書類に何か書き付けていた。それからハッとしてこちらを見て、ちょっと俯いた。


「カエノメルさん、あの……あの……」


モジモジしてるレゴちゃん。


「もしもお相手が決まったら教えてくださいね? わたくしもお教えしますので……! こ、恋のお話をするならカエノメルさんにお話したいの」


ひゅわー……心が浄化されるようだよ……。

さっきまでの動揺が消えました。おれ、恋をしたらレゴちゃんにお話する! むしろレゴちゃんに恋してる感あるからね!


「もちろんですわ、必ずそうします」


おれとレゴちゃんは手を握り合って昼休みが終わるまで見つめ合ってた。




まだ調べてたいことがあるっていうレゴちゃんと別れ、教室に向かって人気のない校舎裏を歩いてたおれは“資料”に書かれていたあることを思い出していた。


(レクティータさんがフェネクといい感じなのは喜ばしいんだけど、フェネクのイベントって途中で悪役令嬢がきっかけのがあったような……?)


おれの持ってる“資料”にはイベント詳細は書かれていない。刃丞に渡されてるやつには書いてあるはずだし、ウィステリア先輩に聞いたらもっと詳しくわかるかな。


「!」

「んきゃぁ!?」


思案しながら歩いてたせいで、開けた場所にいた人にぶつかりそうになった。


「申し訳ございま……ひゃえ!?」


とっさに謝ったら頭から水が降ってきた。


「んまぁっカルダモン! あなた、本当に無礼ですわね!」

「無礼ですわ!」「無礼です!」


呆然としてたらラレールさんと取り巻きが目の前に立ちはだかってたのがわかった。え、おれラレールさんに水ぶっかけられたの……?


「わたくしの訓練を邪魔をして! み、水が当たってしまったのは事故ですからね!」

「事故ですわ!」「タイミングが悪いのですわ!」


わざとではない……?

なんか三人にわーわー言われると頭がぼぅっとするぜ。


「これを差し上げますわ! その代わりここで見たことは秘密でしてよ」

「秘密の特訓ですのよ!」「お風邪にお気をつけあそばせ!」


三人ともがグイっとおれにハンカチを押しつけ、そのまま去っていった。


(悪い人ではないんだよな)


魔力の水なので乾くの早いんだけど、冷えはするよね。

三枚のハンカチで濡れたところを拭いてると冷静になれた。


「あー……これだ」


思い出したかったフェネクイベント。

悪役令嬢のローズマリーがヒロインちゃんに水ぶっかけるやつだ。

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