第一回聖女選択・結果
キィィィン……
薄いガラスを弾いたような音がして、あたり一面が白金色の魔力に包まれた。
「結界だ! 新たな結界がはられたぞ!」
「残りの魔物を街へのがすなよ!」
騎士たちが声をかけ合う。
森と街の境にはシャボンの膜のような結界がみえた。
(結界の内側にいる魔物を倒せば元通りだな)
山まで来てる魔物は少なく、王子たちが動かずとも周りの騎士が倒してくれたので程なく静かになった。
おれはといえば、白金の魔力を感じると同時に力が満ちる感覚に驚いて練ってた魔力が膨らんで霧散させてしまった。つまり役に立ってない。
「お、終わりましたの……?」
わりと前線にいたピネちゃんが戻ってきた。何か狩ったのか頬に返り血をつけてる。
「そのようですわねぇ」
「ローズマリー様はどうなったのでしょうか」
こちらも前のほうへ向かっていってたプリュネちゃんがハンカチでピネちゃんの頬を拭い、おれの隣にいたハチクちゃんは握りしめてた短剣を仕舞って山を振り返る。
すっかり日の登った山の頂上に聖女さまが姿をあわらして、その左右に刃丞とレクティータさんが歩いてきた。始まりとおなじように聖女さまが顔をめぐらしゆっくりと言葉を発す。
「ぶじに新たな結界が張られました。みなさまのお力添えのおかげです」
聖女さまが微笑むと騎士たちが膝をついて礼の姿勢をとる音がした。おれたちも緊張から解放されてぼうっとした頭を下げる。終わったんだなっていう実感がじわりとこみ上げてきた。
「わたくしたちはこれから王へ報告にまいります」
聖女さまたちが階段を降りてくると教会のお付きの人らが迎えでて、刃丞とレクティータさんも連れていく。ふたりとも聖女さまといっしょに教会の馬車へ乗せるようだ。
おれの前を通り過ぎるときに刃丞が少しだけまぶたをふせた。
(ああ、負けたのかぁ)
魔力の色でうすうす気づいてはいたけど、レクティータさんがさきに結界を完成させたんだな。
聖女さまたちがのった馬車が走り去ると、騎士や兵士が魔物の処理に動き出し、やることのないおれたちは城へ行くことになった。新年の祝に参加しろってわざわざ王子から言われたからね。
取り巻きのみんなと話して、いちど屋敷に戻ることになった。ろくに戦闘に参加してないけど砂埃とか浴びたから身支度をし直すんだ。
城にいくのは午後すぐ。
おれはパパッとお風呂に入り、新しいドレスを着て城へ向かった。今回は待合室に行くことなく直接あの豪華な広間に案内された。すでに貴族たちが集まっていてざわざわしてる。
「みなさま、遅くなりました」
ピネちゃんたちは前回とおなじく広間の西側にいたので早足で向かう。
「どうかされましたか……?」
そわそわした様子の三人がいた。いつもよりお互いの距離が近いし、ハチクちゃんとプリュネちゃんは手を握り合ってる。普段は凛とした貴族の三人がなんだか可愛い。
「ローズマリー様がどうなられたのか話していたの」
「今朝のこと、きっと陛下からお話くださるでしょう?」
「そうしたら落ち着かなくてぇ」
ああー。わかる、わかるよ。きっと三人も魔力の色が白金だったのが気になるんだ。
ふとざわめきが止み、ラッパの音色が広間に響いた。
貴族たちが膝をおると中央に王様がやってくる。
新年の祝の始まりだ。
祝といっても王様からのありがたい挨拶を聞くのがメインなんだって。けど今年は挨拶のあとに『聖女選択』があるんだよな??
長々とした新年の挨拶が終わるとおもむろに王様が椅子に座った。
「さて、諸侯らよ。聖女候補たちについてだ。
余はこれより半年に一度、聖女候補たちの資質を問おうと考えている。みなにも見届けてもらいたい」
王様から宣言すると、刃丞とレクティータさん、それから攻略対象の四人が王の前にやってきた。
打ち合わせしてあったのかな。スムーズにイベントが進んでる。
「では一人づつ意見をのべよ」
王様の言葉にまずレキサ王子が前に出た。
「私は、いまだどちらかが相応しいか決めかねております」
王子ー! くそ!好感度足りなかったか……!
思わず天井を仰ぎ見たくなったけど、ぐっとガマンする。
つぎはフェネクだ。
「私は現段階ではレクティータが一歩秀でていると存じます」
知ってた。
三番目はヴェガ。
「……まだ決めかねる」
選択うんぬんより言葉遣いが気になる。大丈夫か?王様の御前であるぞ?
最後はシフリール先輩。たぶん騎士代表枠ででてんのだろう。
「私はまだどちらがとは申し上げられません」
「うむ」
王様の威厳ある頷きがひとつでた。
「此度はレクティータが良いとあった。おごらずローズマリーともども精進せよ」
(やっぱりレクティータさんの勝ちかあ……)
勝ったほうに報奨とかでるのかと思ったけど、そのまま王様は扉から出ていって宰相から締めの挨拶があって解散となった。
ふと貴族たちをみると刃丞のお父さん、クローブ公爵が無表情でいた。そのさらに奥ではウィステリア先輩が真っ直ぐにおれを見ててビクッとした。




