進化だ触手ちゃん!2
ふだん遊びに来るときとは違うサロンで女子のみが集まった。
刃丞もすぐにきて来客たちに挨拶をすると、いちばん奥で待ってたおれたちに元へやってきた。
「今日はいらしてくれて嬉しいわ。お席が遠かったけれど問題なかったかしら……あら、ピネさんのドレス、いま話題のデザイナーのではなくて?とってもお似合いね!」
「ありがとうございます!さすがローズマリー様ですわ!」
来て一瞬にしてピネちゃんの好感度を上げ、さらにハチクちゃんプリュネちゃんのことも些細なことを気づいて褒めていくイケメン打法をくりだす刃丞。
取り巻きの子たちの頬を染めさせてどうしたいんだおまえは……公爵令嬢ちがうんか。
「メルも花束をありがとう。お父様がお喜びだったわ」
「光栄でございます、わ?」
公爵様が??
刃丞がソファにすわるのを待っておれたちも腰掛ける。すぐにメイドさんがお茶を用意してくれた。
「あの赤いバラはカエノメルさんでしたの」
「は、花言葉を存じ上げませんで……」
あらあらと微笑む三人に、よくわからないまま照れ笑顔で誤魔化す。
「ローズマリー様が聖女候補になったけれど、殿方からのアプローチはまだございますものね」
「王子からではあからさまですし、教会と王室との権威の偏りも噂される恐れがありましたの」
「策を廻らす方々には意味深でしたでしょうねぇ」
「よくやったわ、メル」
なんか褒められたからよかったのかな。政治ってぜんぜんわからんわ。
そんな感じでみんなで和やかに話していると外が明るくなった。つづいてドーンという大きい音。これって……
「花火……」
「あら、始まったわね」
サロンの大きな窓から見えたのは夜空に打ち上がる花火。
すごい。この世界に花火ってあるんだ!
「ふふっカエノメルさんは初めてご覧になるのね。毎年聖夜祭の夜にお城から花火があがりますのよ」
懐かしいというか、形容しがたい感動を覚えて花火を見てたらハチクちゃんが教えてくれた。ついでにそっと頬を撫でてぽかんと開けてた口を閉じさせてくれた。
「魔法ですの?」
「ええ、魔法省の方々が打ち上げてくださってるのですわぁ」
「すごい……こんな派手な魔法があるんですね」
それからは令嬢たちも手を止めて次々うちあがる花火にしばし見とれていたのだった。
聖夜祭が終わると新年を迎えるためにメイドさんたちが掃除をしたり飾り付けをして、いつもより賑やかしい屋敷。
おれは一応この家のお嬢様なのでやることはない。
でもみんなが働いてると何かやらなきゃ!って気持ちになるからとりあえず部屋で座禅を組んでる。
ほんとは触手ちゃんの鍛錬をしたかったけど安全確保のため一人で行ってはダメ。今日はラデュレさんしか付き合ってもらえないから、部屋で座禅だ。
おれはいま、宇宙を想像している。
触手ちゃんが宇宙の星をとらえその光とともに輝く………無数の星々を飲みこみピンク色の触手ちゃんが草原のように波打つ宇宙空間……
「ヒッ……!」
短いは悲鳴が聞こえて、集中が途切れた。
声の方を振り向くとラデュレさんが青ざめた顔で謝ってきた。
「申し訳ございません! お嬢様の特訓を妨げてしまいました……!」
「いーよいーよ。それより、悲鳴って何かあったの?」
「はい。その、お嬢様の魔力が私の足に絡みついたのですが」
「えっごめん!」
「いえ、それよりもお色が」
? なんだろ?
無意識に出してて、集中が切れると同時に消えたらしい触手さんを改めて出してみる。
「いでよ、触手ちゃん」
ニュッ!
「うわ」
絨毯から飛び出した触手ちゃんだったが。
(まさかドット柄とか)
漆黒のボディに浮かぶショッキングピンクの水玉模様。
黒との対比がえぐくて目に痛い仕上がりだ。
「……ラデュレさん、これかわいい?」
「見る方によりましては」
目をそらしてる。
「怖いと可愛いの割合でいうと?」
「9:1で可愛いが負けますね。相手への畏怖効果は増えたかと」
「あかんやん」
可愛さ追求したら畏怖効果増すって。
そもそもおれはブツブツしたデザイン苦手だ。ゾワッてするんだよ。
「見なかったことにしよう」
「はい」
「ふたりの内緒ね」
「かしこまりました」
触手ちゃんをそっと消す。
「で、でもピンクのとこはいい色だったよね!ね!」
「さようでございます! お嬢様の精神力が呪いを跳ね除けている証拠でございますわ!」
ラデュレさんが張り切っていうから、黒光りさせてたのは呪いじゃなくておれの願望なんだっていえない。黒いのかっこいいのになぁ。
とりあえず一息つくことにして、ラデュレさんにティーセットの用意をしてもらってるとダンドワさんがやってきた。
「お嬢様、お城から使いの者がきております」
お城から?
ダンドワさんと共に玄関にいくとお城の騎士がいた。背後には部下らしき騎士が数名。
「カルダモン·ダロ·カエノメル。王からの勅命である」
目の前にいる人がいちばん偉いのかな。
見るからに高価な紙を広げてみせ、文面を読上げてくれた。
いわく、新年は日の出前に西の山に来いだそうだ。




