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占い師と彼女の関係

しんと静まり返った勉強会。文字を書く音すらない。なぜなら王子とレクティータさんの会話が聞きたいからだ!


「あっこれが……」

「うむ。初代聖女様の作られた魔道具のレプリカだ」


棚の向こうからふたりの声が漏れ聞こえてくる。

刃丞は顔を青くして、とりまきの三人は刃丞の顔色を伺ったり顔を見合わせたりアワアワしているなか、ロベールはぼんやりしていた。空気読んでるんだな、えらいぞ。


「ふふっありがとうございました王子様」

「よい。国のためだから遠慮なく言うといい。エントランスまで送ろう」

「はいっ!」


なごやかな感じでふたりが出ていくと誰からともなくため息が漏れた。


「なんてこと……王子とはかなり仲は良かったはずなのに」


刃丞が両手で顔をおおってを天井を仰ぎ見る。

ピネちゃんたちが立ち上がって駆けより慰めるように声をかけはじめた。


「大丈夫ですわ!おふたりの愛は確かなものですもの!」

「とても仲睦まじく疑う余地はございませんわ!」

「そうかしら……」

「あ! でしたら、確かめに行かれたらいかがでしょうかぁ」


なにか思いついたプリュネちゃんが両手を叩く。


「確かめに行くってどこにですの?」

「市井によく当たる占い師がいるそうですぅ。とても人気があるそうですのぉ」


ハチクちゃんの問いにプリュネちゃんが答えた。


「……なにもしないより落ち着くわ。明日、さっそく行ってみましょう。プリュネさん、案内はお任せしてもよろしくて?」

「はい! お任せくださいませぇ!」


張り切るプリュネちゃんに詳細を聞く女子たちを横目に、やたら静かだったロベールがぽつりとおれにいった。


「僕は行かなくていいよね……?」



市井。豊かなこの国では街は賑やかでなんでも揃うくらいにお店がある。美味しいレストランもあるらしいけど、おれはまだ行ったことない。


「こちらですわぁ」


プリュネちゃんの案内でついたのは街の公園に近いところに立った紫色のテントだ。テントといってもデザインはおしゃれだし、いかにもって雰囲気がある。


そしてなにより列ができてる。


「すごい列ですわね」

「はい。こんなに並ぶとは信頼できますわね!」


ワクワクした様子の刃丞とピネちゃん。ふたりともこういうの好きなのか。意気揚々と列に並び始めるのについていくが何だか記憶に引っかかるものがある。


(なんだっけなー?)


「ぁ……っ」


ハチクちゃんが小さく声を上げた。はっとして刃丞を見たあとおれを見ると慌てた様子で寄ってきて腕を絡めてくる。内緒話の体勢だ。

おふ……おれのひじにお胸が当ってるぜ……


「カエノメルさんっ、います!」

「え?」

「レクティータさんがいらっしゃるの!」


ええええ? ハチクちゃんに目配せされた方向をみると、ソワソワして列に並ぶレクティータさんがいた。


「あああ……!」

「どうしましょう、ローズマリー様がまたショックをうけますわ」


ハチクちゃんは本当に刃丞を心配してるのだろう。涙目でおれに訴えてくる。

そしておれも同時にあることを思い出していた。


「カエノメルさんならローズマリー様を傷つけずにこの場から離せないかしら……?」


ハチクちゃんもなかなかの美人であるし、潤んだ目で縋りつかれ断れる男がいるだろうか? いや、いないね!

今おれ令嬢だけどキュンとしてますしね!!

決して腕に当ってるハチクちゃんのふわふわおっぱいのせいではない!


こちらを気にしてたプリュネちゃんにも目配せをすれば、すぐに気づいたようで目を見開いた。

同じくおれにどうにかしてという視線を向けてくるのに小さくうなずいた。


「ローズマリー様」

「なにかしら、メル」

「ここは不吉ですわ。方角とか時間とか……まえに“読んだこと”があります」

「!」


メッセージは正しく伝わったらしくて、刃丞ははっとして顔を強張らせた。

ここの『占い師』ってあれだよ、もらった資料に書いてあったけどヒロインに好感度のヒントくれるお助けキャラだ。「今は誰々といい感じですね〜」とか言ってくれるやつ。

そりゃレクティータさんいるよ!


「今日は日が悪いということね? ならば大人しく帰りましょうか」


刃丞の決断に否をいう子もいないのでそのまま帰宅となった。ピネちゃんにはハチクちゃんたちが事情を伝えてくれたらしい。


それにしても、好感度チェックできる施設か。

ここにヒロインがいたっていうのも気になるけど、おれたちもチェックできたらすごい便利じゃないか?


王子の好感度がどうなってるのか気になるし、どうにかして方法を考えたいな。

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