テスト前のイベント
ロベールと資料室で会議すること数回。季節は秋から冬になろうとしていた。
「メルの言ったとおりね、これは勉強ができそうだわ」
いつも放課後におれとロベールだけで会議をしてる資料室に今日はローズマリー公爵令嬢がいた。
「あなたがロベールね。たしかロッシュ子爵のところの」
「はい、お目にかかれて光栄ですローズマリー様」
おお……! ロベールがまともな返答した。
ここ最近は放課後も資料室に入り浸り、香油の製品化について話し合っていた。その甲斐あって製法や効果がだんだんわかってきた。代償はあったけどロベールとよりいっそう仲良くなれた実感はある。
「ふたりで会議をしているのはメルから聞いたわ。わたくしたちも協力したいところだけれど、今日は試験のための勉強させてくださるかしら」
刃丞を筆頭に取り巻きの三人も資料室にやってきた。
名目は冬期試験のための勉強会だ。
ことのはじまりは今日のランチのとき。お昼に会ったピネちゃんたちが、
「カエノメルさん、ちかごろサロンにもいらっしゃないけれどどうされたの?」
「なんだか寂しいですわ」
「同じクラスの石オタクさんと仲良くされてるって噂もあって心配ですぅ」
とかすごく可愛いこと言ってきた。思わずニヤニヤしちゃったけど女の子たちに「一緒にいて(意訳)」って言われたら仕方ないよね。
刃丞の家には相変わらず寄ってお茶してるけど三人とはあんまり遊べてないもんなー。
「メルは資料室で調べものをしてるのよね」
「はい。趣味のことなので、みなさまにお伝えするのも憚られまして……」
「資料室!」
「わたくし行ったことないですわ」
「見てみたいですねぇ」
という会話を経て、放課後はみんなで勉強会をすることになったんだ。午後の授業のまえにロベールに伝えたら自分も勉強するって言って勉強道具持ってきてた。
かくして始まる試験勉強。
座学の内容はクラスによって違い、照らし合わせてみるとSクラスとBクラスだと半年分ぐらいの開きがあるみたいだ。
「おもしろいですね!」
Sクラスはもう魔法陣の構成も習ってるらしくてピネちゃんのノートが見てるだけで楽しい。ちなみに刃丞のノートは推して知るべしな仕上がりになってたので参考にならない。
「メルは勉強が好きだものねぇ」
はやくも飽きてる刃丞が棚から適当な本を持ってきてパラパラめくっていが、ほかの人たちは各々交流をしながら試験勉強をしていた。
はじまってから一時間ぐらいだろうか、資料室の扉が開いた音がした。
「あら、レクティータさんだわ」
いち早く振り向いた刃丞が気づいて席を立った。
「何をされにいらしたのかしら?」
「あっ、王子もご一緒だわ!」
「まぁなぜかしらぁ」
素早く身支度をした三人も立ちあがり、刃丞のうしろにつく。
「ローズマリーか。珍しいところで会うな」
「ごきげんようレキサ王子。わたくしたちは試験勉強をしていましたの。それよりレクティータさんとおふたりで資料室にいらっしゃるなんて意外ですわ」
たしかに。刃丞は夏から王子の好感度上げに勤しんでたからレクティータさんとふたりで行動してるのは想定外だ。
おれも何度かレクティータさんのイベントを目撃したけど王子とは起こしてないはずだし……
(いや、待てよ。これ王子イベントじゃね!?)
そうだ。ヒロインが王子と資料室に来るイベントがあったはずだ。しかも一回目じゃなくて三回目あたりの!
「レクティータが聖女について知りたいと言ってな。学内なら資料室が良いと伝えたのだが、ひとりでは嫌だというのでついてきたのだ」
フェネクー!!! あいつのせいか!
あいつのせいで、レクティータさんが資料室にくるのがトラウマになっちゃってんじゃないか!? そんでイベント進んでるって最悪の展開じゃん。
「レキサ王子、まことに申し上げにくいのですがローズマリー様以外の女性と二人きりになりますのは、いらぬ憶測をされてしまうのでは……」
「ははは! 何をいうか、考えすぎだ」
ピネちゃんの決死の苦言も王子は意に介してないようだ。
ハチクちゃんもなにか言いたそうにしてるが、プリュネちゃんに腕を触られてなんとか抑えてるみたいだ。
「聖女について、ですわね。それならわたくしもお手伝いいたします」
さすがの刃丞もふたりきりに危機感をおぼえたらしく申し出るも、
「いや。おまえたちは勉強しているのだろう?おれたちも邪魔はしないぞ」
「お、王子様、わたしやっぱりひとりで」
「良いのだ。とくにローズマリーは夏の試験結果がふるわなかっただろう、しっかりはげむべきだ」
「うぐぅ!」
言い返す要素のない状態におっぱいをもみ始めた。
これはお手上げだな……。




