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友情と

秋も近い快晴のなか、馴染みのあるガゼボでは公爵令嬢主催のランチがしめやかに執り行われていた。


(くらいなー!)


これはなかなか入りづらいですね。

しかし行かねばなるまい、親友のために!


「ローズマリー様!」


颯爽と現れたおれに4人の視線がむけられる。


「とう……、」


ぎ、と最後までは言わず、刃丞は両手に持ったカトラリーを皿に置いた。相当落ち込んでる様子だ。

おれはずんずんと大股で歩き、刃丞の目の前までくるとしっかり目を合わせる。


「大丈夫でして!?」


声のでかさに驚いたらしい刃丞の顔に、ちょっと安心する。


「次からはわたくしもいますからね!! 今回はついていられなくてごめんあそばせっ!!」

「……んふふっ! 声大きすぎる。あと顔も近くてよ」


公爵令嬢が耐えきれず笑い始めたのに、とりまきの3人組もホッとしたように口元をゆるめた。


有能なメイドさんたちがすぐにおれの席も用意してくれて、食後のお茶を飲む段になると今回の騒動について刃丞たちが説明してくれた。


「転入生がきたの。桃色の髪で背の小さい可愛らしい方よ。夏のあいだに魔力が発現したらしくて」

「噂では行方不明だった伯爵令嬢のお生みになった方で、いままでは田舎の孤児院で育てられたそうですわ」

「目覚めた魔力が“白金の色”をされてるのですって」

「それを聞いた伯爵様が亡きご息女の忘れ形見として引き取られたそうだけど、ほんとうは魔力の色のほうが大事だったのではって言われてますわねぇ」


すごい。矢継ぎ早に情報もらったけど、設定盛り過ぎな感じがする。これが乙ゲーヒロインの力……。


「そんな方とどうして食堂で?」


ウィステリア先輩からもらったおれ用の資料では詳細までは書いてないんだよね。

なんでピネちゃんがブチ切れてしまったのかがわからないと質問すると、当のピネちゃんがぎゅうぅーって眉根を寄せた。


「あの方、レキサ王子に親しげに話しかけるのみならず、つぎの課外授業では同じ班になりたいとおっしゃったの」

「わたくしたちとして其れだけでも業腹ですのに、食堂で挨拶もなしにローズマリー様のまえに立ち塞がりぶつかったのですわ」


ピネちゃんとハチクちゃんがぷんぷんしてるけど、え? それは事故じゃないのかな。


「彼女の持ってらしたハーブティーがローズマリー様のスカートにかかりましたのぉ」


ああー……。


「あれ? 給仕はメイドがするものでは」

「あら。そういえばどうしてでしょう??」


3人が顔を見合わせる。

なんでヒロインちゃんがお茶持ってうろついてんだ。故意か? 事故じゃないなら話がだいぶ変わってくるぞ。

まだ情報がたりないから判断はできないけど。


「それから、ローズマリー様はなぜ食堂へ?」


行ったことないじゃん。五人でいつもここでランチするのがお決まりだよね。メイドさんたちもそれを見越して用意してるし。


『食堂で先制一発』のこと知っててあえて移動したのか?

食堂には王子もたまにしか居ないし、ヒロインに会う以外に理由がみつからない。


「う。そ、それは」


刃丞が目を逸らしておっぱいを揉み始めた。

それまでかなりご立腹の様子だった3人組が微笑ましいように目を細めておれと刃丞を見る。


「な、なん……ですの?」

「ローズマリー様、カエノメルさんが今日は食堂で昼食をとるってきいてから」

「自分も食堂へ行くっておっしゃられて」

「食前のティーを食堂でいただこうとしていたのですわぁ」

「「「 可愛らしいですわあ 」」」


ピネちゃん、ハチクちゃん、プリュネちゃんのコンボが綺麗に決まったー! K.O!! K.Oです!


おれと刃丞はへんな汗がでてきた顔をテーブルに顔を伏せた。




だいぶ気慣れた公爵家のサロンでおれはもう自分ちみたいにくつろぐようになった。

くつろぐといってもそこは令嬢、肘掛けのところにもたれたり椅子に深く座ったりするくらいだ。メイドさんたちも部屋のそとで待機してくれてるしね。


「ヒロインが現れたことで、とうとうこの資料の現実味がでたわけですが」

「いざ目の前にいると呆然とするわね」


刃丞も気が抜けたような顔でゼリーを食べてる。


「資料によると、つぎのイベントは課外授業らしいよ」

「ああ、確かダンジョンに行くのよ。何をするかよく知らないけれど」

「いやおまえのクラスの話だからな?」


先輩からの刃丞に渡された資料を読み込む。


「えーと、“モンスターとの戦闘を目的とする実戦授業。

しかしイレギュラーな強モンスターに護衛の冒険者が倒されてしまう。

ローズマリーらはピンチとなるが、ヒロインの聖魔法で窮地を脱する。

このときローズマリーが聖魔法に目覚める”」


「あら、わたくしの覚醒イベントなのね!」


英文が読めないせいで、初耳のテンションで喜ぶ公爵令嬢。

全編英語の資料だが翻訳したものを書き残すわけにはいかないからなー。誰かに読まれたらヤバイ。


「んー。ヒロインとローズマリーの聖女としての覚醒イベントだけっぽいな。会話すると好感度上下するんだろうけど」

「あの子が王子と同じ班にならなければ良いのかしら?」

「ああ。うまいこと誘導して他の攻略対象、Sクラスならフェナクとかに押しつけられたら完璧だな」

「班分けごときに公爵家の権力を使っていいものか悩むわ……」


意外にこういうところは真面目なんだけど、悩むのはそこでいいのか。マジで聖女になるかもしれないんだぞ?


そう言いたかったけど、飲み込んだ。

現実をみせたらストレスで病むかもしれんしー。


「とにかくまずは王子ルート回避を念頭にな」

「ええ、課外授業でフラグへし折ってきてやるわ!」


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