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青春の思い出はファンタジーと

三年生に大きな行事はあまりない。卒業研究に集中するためなんだけど、野外授業がないのはさみしいと感じていた。


「思い出というか刺激がない」

「どうかされました?」


午前の授業がおわったところで、なんとなく零した呟きに隣の席のレゴちゃんが反応した。

ランチに行こうとして立ち上がっていたのに、わざわざ座り直しておれに向き合ってくれる。


「あっごめんなさい、ランチへ行かれる邪魔をしてしまいましたね。大したことない話ですわ」


計らずも引き止めてしまったのに、慌てて謝罪して笑顔を浮かべた。まさか部屋以外で心の声でちゃうとは、気が抜けてますねってダンドワさんに怒られるぜ。


「カエノメルさんがお悩みなら、私は助けになりたいと思うのですわ。刺激がないと聞こえましたが、もしかして恋のお話ですの……?モーラー様がなにか……」

「いえいえ!モーラーさまはとても良くしてくれますわ!」


紹介した友達への反応が悪いと気になるよな!モーラーくんはすごいイイヤツなのにレゴちゃんに気を遣わせちゃった、ごめんよ。


正直に、一年二年では野外授業があったのに三年はないという話をしたら、レゴちゃんはホッとした表情をうかべた。


「そう言われるとそうですわね。パーティで動く経験は貴重でしたし、きっと卒業したら冒険には行かなくなりますもの。この学校ならではの思い出ですね」


そうそう!そうなんだよ。やっぱりレゴちゃんはわかってくれるぜ。


「そうなんです。学校以外に行くことも、みんなで苦難に立ち向かうのもわくわくしますよね」

「あっ、でしたら、私たちだけで野外授業をしてみてはいかがでしょうか」


両手をポムと合わせて「名案!」って顔をしてるレゴちゃんが可愛い。

たしかにみんなで冒険に行けたら楽しいけど、なにせおれたちは貴族だからなぁ。そう簡単に許可もでないだろうし、時間もないのが実情だ。


「すごく魅力的なお話ですが、私のワガママでみなさんを危険に晒すわけにはまいりませんわ」

「私もカエノメルさんが危険な目にあうのは反対です。ですけれど、安全な冒険なら構わないでしょう?」

「安全な冒険ですか」

「ええ。南西のちいさい山に毎年怪鳥が卵を産みに来ますの。その巣が大きくて見応えがあるそうです。怪鳥がいなくても巣は年中あるので、高ランクの冒険者さんを雇って見に行くのが密かに流行ってますのよ」


なにそれ楽しそう!

冒険者に護衛されて行くってのも貴族っぽくていい。なにより怪鳥ってすごそう!毎年ってことは渡り鳥みたいなやつなんだな。


「か、怪鳥は危なくありませんの?いつ来るのでしょうか、

大きさは?火を吐いたりするのでしょうかっ?」


ふんふんっと鼻息荒くなってたらしくて、レゴちゃんにやさしく笑われた。


「ふふふ! 興味をもっていただけましたね。貴族のご子息方が暇つぶしに行くものですし危険は少ないはずですわ、冒険者さんもいますし。日帰りでも行けるので、きっとみなさんの予定も合わせられますわ」


完璧じゃーん!

ちょっとハイキングして、珍しい鳥の巣をみて帰ってくるってことだろ。ちょうどいいファンタジー具合のアクティビティだ!


ぜひ行きたいって答えたら、レゴちゃんが詳細を調べてくれるって。ロベールとトミカちゃんも誘って計画を話してみよう。

みんなで行けるといいな!




鼻歌交じりで刃丞のランチに参加したら、すぐに突っ込まれた。


「なんだかメルはご機嫌ね。なにかあったのかしら」

「はい! クラスのお友達と遊びに行く話をしまして」

「ふむ。遊びに行くとはどういうところに行くのだ? 女性は遠乗りや狩りをしないだろう。サロンでお茶を飲んでる印象しかないが」


唐揚げにおろしソースを付けて食べてた王子が興味深そうに見てくる。王子の唐揚げへの探求心は深くなるばかりだな、王家の料理人の努力かもしれないけど。


おれは鶏ハムにマッシュポテトとハーブを挟んでたのを、一旦止めて刃丞越しの王子に答えた。


「王都の南西にある山へ怪鳥の巣を見に行くのです」

「怪鳥……!」


ピネちゃんが驚いて声をあげたが、となりの刃丞もびっくりしてた。やっぱり怪鳥ってひびきはインパクトあるもんな!


「カエノメルさん、それは危険ではありませんの?」

「怪鳥というなら大きいのでしょう〜?」


ハチクちゃんとプリュネちゃんも眉を下げて心配そうだ。


「怪鳥自身がいることは稀だそうです。冒険者も雇いますし安全だそうです」

「冒険者をか」

「メルは変なところで運があるから、怪鳥にハチ合ったりしないかしら?」


(おい!)


フラグ立てんな!

ニヤッと笑う刃丞の足を、テーブルの下でつついておく。そしたら痛くない強さで突き返された。

その後はもうテーブル下で戦いだよね。上半身に影響をださずに戦争だ……!


「カエノメル、その冒険には私の友人も連れて行ってくれ。冒険者を信頼しているが、私からの護衛として」

「え?あ、はい」


刃丞とお互いの靴を脱がせるのに夢中になってて話を聞いてなかった。

ブクマ、評価ありがとうございます(^ν^)

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