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恋をしてる人たち

五人の意見をきいて、引き分け。


「ふつう、奇数だったら勝敗ありそうなものですよね?」


お城から帰って遅めの昼食を食べる。向かい側にはお母様が食後のデザートとりつつ、おれの愚痴を聞いてくれてた。


「そうねぇ、王様もそうお考えになったからこそ、五人を選定したのでしょうし。それにしてもリンデン宰相のご令息が……」

「何かあるんですか?」

「白の聖女のレクティータ様がフェナク様と特別懇意にされてると、社交界では噂になっているの」


あ、はい。最近付き合いだしたね。


「聖女様に選ばれた女性は殿方とは距離を置かなくてはいけないでしょう? フェナク様としては、レクティータ様と離れたくないのではないかしら」

「なるほど……」


嘘つくほど、愛が上回っちゃったってやつか。あり得なくはないよな。

あれ? でもその理屈だと、レキサ王子が刃丞のこと選んでるのって矛盾しないか??


「うーん……」

「メルちゃん、そんなに眉間に皺をよせたら跡になってしまいますよ」

「失礼します」

「うがっ」


ダンドワさんが背後から指でシワ伸ばししてくれた。

おでこの伸ばし方に遠慮が感じられない。


「それはそうと、お母様は明後日には出発しますが、本当にメルちゃんはいっしょに来ないの?」

「あ、はい。まだ授業もあるし、人と会う約束をしてますから」


お母様はこの夏、地元カルダモン領へ戻る。お父様と離れてて寂しかったらしく、おれが夏休みになるまえに一足先に出発予定だ。


「その約束が終わったらすぐに来てね。お母様、寂しくて泣いてしまうわ」

「はい」


ずっと一緒に暮らしてたからおれもちょっと寂しいし、お父様にペット用おやつの話もしたい。まあ来年には卒業して地元に戻るんだけどね。




祝勝会もひらかれず、そのまま休日を挟んで登校日。

教室にいくとレゴちゃんが立ち上がって迎えに出てきてくれた。


「ごきげんようレゴさま、どうかされまして?」

「カルダモンさん、お聞きになりましたかっ?」


かなり焦ってるようで、おれの両腕を掴んでくる。珍しいな。


「なにがでしょうか」

「……っ」


レゴちゃんが抱きつくようにして耳元に顔を近づけてきた。


「レクティータ様とフェナク様、お別れしたようですわ」

「!?」


別れたって、付き合いだしたのつい最近じゃん!


「ほ、本当ですか!」

「ええ、レクティータ様から言い出したと、チャービル家のメイドが話していたそうです」


なんっだそれ。

別れたのもビックリだけど、おれとしてはレクティータさんとこのメイドさんが信じられん。雇用先のスキャンダルを言うかね。いかんですな!


「カエノメルさん、ずっと気になさっていたでしょう。それでようやくお二人がお付き合いされて、ホッとされたのに」

「そう、ですね。正直驚いていて言葉が出ませんが……いまはレクティータさまのご様子が気になります」


好感度上げクッキーなんていう、間接的とはいえおれが無理矢理させたせいじゃないかな。フェナクにもすまないと思うけど、告白されてレクティータさん悩んでたんじゃ……。


「お昼はよく食堂にいらっしゃいますわ。いつもフェナク様やヴェガ様、ジンドールさんとご一緒されていますが、まれにお一人でいらっしゃることもありますから」

「お話できるかもしれないってことですね、ありがとうございますレゴさま! 今日は食堂へ行ってみますわ」


話を聞かねば……!


午前の授業が終わり、おれはSクラスへ向かった。プリュネちゃんもゆったりと後からきて、刃丞が出てくるのを待つ。


「あら、メル、プリュネさん。お出迎えうれしいわ。みんなでいっしょに行きましょうか」

「ローズマリーさま、申し訳ございません。私、本日はランチに参加できませんので、ご報告に参りました」

「……まぁ。それは残念だわ」


まだ教室にいるレクティータさんをチラッと見ていうと、刃丞もなにか察したらしく、目線で頷いてきた。


「あの、ローズマリー様。私はランチに参りますが、少々遅れると思いますの」

「ハチクさんが? めずらしいですわね。でも来てくれるならうれしいわ。待ってますからね」


おれとハチクちゃんを置いて、刃丞たちはガーデンテラスへ向かっていった。

見送っていたハチクちゃんはおれの隣でそわそわしてる。


「ハチクさまはどちらへ行かれるのですか?」

「えっ!? いえ、あの、お気にならさないで。少々、気になるものを手に入れたので、専門家に渡すだけですわ」


では、オホホホ、と完全な愛想笑いをして早足で行く先はAクラス。


ハチクちゃんは入り口から教室をこっそりと覗いてから、ちょっと深呼吸。入り口の影に隠れて、おもむろに身だしなみを整えだす。それが終わるとコホンと咳払いをした。そして何気ない顔で教室へ入っていった。


これぜんぶ、おれからは丸見えっていうね。

おれはひとり、ふむふむと納得しながら食堂へ行くことになった。



遅くなりましたすみません!

ブクマ、評価ありがとうございます(^ν^)!


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