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愛の日

愛の日。

親しい人へ感謝を伝え、より一層心を近づける日である。


簡単にいうとバレンタインな。


今日は学内に使用人を付き添わせてる生徒が多く、おれもバルベロさんが荷物を持って後ろを歩いてくれてる。


「レゴさま、ごきげんよう」

「ごきげんようカエノメルさん。お待ちしてましたわ」


教室へいっていちばん初めにレゴちゃんにチョコレートを渡すのだ!そう決意してたので、席に座っておれを待ってたと言ってくれるのに感動する。気持ちはいっしょだったのかな……!


「今年はボンボンというのを作ってみたんです。レゴさまはイチゴが似合うと思ってイチゴジャムが入ってます。それから、こちらはアリゲーター皮のチャームです」


下に尖った五角形のチャーム。5センチのアリゲーターの紫革に透かし彫りがしてあって、バッグにつけたり出来るオシャレなやつだ。紐もアリゲーター革だよ。

街で注文してたのがこの前完成したんだ。


「お願いしていた皆様との思い出の品ですねっ。なんて素敵なチャームでしょう。うれしいですわ、お揃いなのも心が震えてしまいます」


リサードテイルのお花柄に気づいてくれて、さらにニコニコしてるレゴちゃん。

えへへ。喜んでくれる笑顔が眩しくて見られないぜ。

レゴちゃんはメイドさんに持たせていたバスケットから、綺麗にラッピングされた箱をくれた。


「食べられるバラを飾ったショコラです。その、い、異国ではハート型が愛の形と言われているそうで……」

「ハート型なんですか!?」

「は、はい。もちろんお味は大丈夫ですわっ!我が家で取引しているなかで最も美味しいカカオを使ってますからっ」

「ありがとうございますー!大切にいただきますね!」


ああーすごい! ハートのやつなんて貰ったことない!

前世だって、少女漫画にしか存在しない、幻のイケメンが幻のヒロインからもらう、幻の形だと思ってた。


お互いにチョコレートをぎゅうっと胸に抱き込んで見つめ合ってたら、メイドさんがレゴちゃんを促した。ほかの挨拶回りがあるんだって。

名残惜しいけど、授業が始まる前に配れるのは配りたいよね。


おれも渡したい人がいるしな。レゴちゃんとしばしのお別れをして、つぎはロベールとトミカちゃんだ。


ふたりは席が近くて、その場にいたのでいそいそ近づく。


「ロベール、トミカさま、愛の日のショコラ受け取ってくださいませ」

「ああ、今年はぼくもしっかり用意したんだ、もらってくれ」

「あ、わ、私も……」


ロベールからはマーブル柄の石みたいなチョコ、トミカちゃんからは可愛いクッキーをもらった。

そしてふたりにもチャームを渡すと、すごく喜んでくれた。パーティ四人で同じのを持つってなんか良いね!




昼休みには、ランチに行く前に恒例な気がするヴェガへ渡しにいく。校舎裏のベンチでだらついてる隙だらけな横へ。


「……なんてこと。ヴェガさま、ショコラもらってませんの?」


レクティータさんからまだ貰ってないっぽい。タイミング悪かったんかな。ヒロインって義理堅そうだからいずれ渡しにくるだろうけど。


「っ! おまえか、気配消してくんな。興味ねーからな。なんだ、おまえがくれんのか?」


鼻で笑われた。ほんとに興味ないのかダメージないらしい。おれなんか前世のバレンタインは、前日から情緒不安定で、放課後はウツったり開き直ったりでメンタル大変だったんだぞ!?


……いらなくても、バレンタインに貰えないのってやっぱりちょっと悲しいよな。


「さっきまで一つと思ってたけど、ふたつあげます。落ち込んではダメですよ!私から愛たっぷりショコラ貰ったということで頑張ってください!」

「愛……って軽々しくいうな!」

「はいはい。もっと貰えるとよろしいですね、では」


相変わらず急に声が大きくなるヴェガにチョコレートを押しつけ、そのままランチへ向かった。


ランチに王子は参加しておらず、放課後のホームパーティの準備してるらしい。


ひさしぶりに女子だけのランチは、ピネちゃんたちが家からチョコレート系のおやつを持ち寄ってくれてて甘いおやつパーティーになった。みんなでチョコレート交換とかして、女子会ってこういうことなんかなってドキドキしたよね。




放課後はいちど帰宅して着替え、すぐに馬車で王城へ出発だ。

窓ガラスの反射で髪型のチェックとかしてたら、馬車が止まってしまった。


「申し訳ございません。荷を積んだ牛車が数台横切ってるようでございます」

「仕方ないね。焦らせたら可哀想だしゆっくり待とうか」


(牛車かぁ。牛って癒やされるよな)


窓から見えるかな?って顔を近づけたら、見覚えのある人物がいた。そしてガッツリ目が合う。


そいつはスタスタとおれの馬車に近づくと、扉をノックしてきた。

ダンドワさんがおれに伺いを出すが、無視できない立場の人だから開けるしかない。


「ごきげんようカエノメル。奇遇ですね」

「ごきげんようフェナクさま」

「王子のパーティーですよね、私も招待されているのです。乗せていただいても?」


断れることなんかちょっとも考えてない態度でフェナクが聞いてくる。


「ええ、もちろんです。狭いですがどう、」


ぞ!?


言い終わるまえに乗ってきたフェナク、の後ろには微笑むレクティータさんがいた。


フェナクは席につくと「ではレクティータ、ショコラありがとうございます。よい愛の日を」「はい、フェナク様も」という挨拶を経て、ふつうに扉を閉めた。


お、おまっ、愛の日イベントの最中だったんじゃねーか!

ブクマ、評価ありがとうございます(^ν^)

愛の日長くなってしまった……

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