野外授業☆ボス戦
沼の主は巨大なアリゲーターだった。10メートルを超えるボディを水面から立たせ、レゴちゃんたちを睨みつけている。外皮は紫ではなく真っ赤なのがボスっぽい。
子分たちのピンチに出てきちゃった感じだな。
「ビルン様すぐに避難なさって! みなさん、モンスターの気を引きますわよ!」
「「 む、無茶ですわ!」」
ラレールさんが震える体のまま立ち上がって挑む姿勢をみせるが、取り巻きの子はすっかり怖気づいていた。
あの沼の主はほかのアリゲーターよりも明らかに強そうだ。噛まれたらパクンなんかじゃ済まないだろう。ぜったい死ぬやつ。
レゴちゃんたちも驚いてたが、すぐに構えをとってる。周りのふつうのアリゲーターの攻撃も避ける余裕があった。
しかしラレールさんパーティは戦闘に参加するほうがあぶないし、実際怪我人がでるだろう。
「ラレールさま方はあちらで、他の魔物が来ないか警戒をしていてください」
「な、なぜアナタに命令されなくてはならないのっ! あんな大きな魔物、アナタたちだって危険だわ!」
「シー。大声は魔物から狙われやすくなります、お取り巻きの方々も体調が悪そうですし……」
「ラレールさまぁ!」
「下がりましょぅ……!」
泣き付かれたラレールさんは、唇を噛みしめるとおれの指し示した木の影に移動していった。悔しげだけど状況判断はできる人なんだな。
おれは胸元にいれてたポーションを取り出して、バシャバシャと惜しげもなく左足にふりかける。
ポワワッと温かい感じがして、すぐに足の痛みがひいた。すぐに走って、陸に上がってきたアリゲーターを沼に蹴り戻しつつ、みんなのところへ戻る。
「ラレールさまたちはひとまず安全圏へ行ってくれました」
「まあ、よかったですわ……!」
レゴちゃんは水球での攻撃を捨て、守りのため水の檻の範囲をひろげてた。魔法を重ねがけして強化をしつつホッとした顔。
「カエノメル、あの主のようなアリゲーターの皮がかたい、ぼくの槍ではダメージを入れるのに時間がかかりそうだ」
ロベールが雨のように降らせてる土の槍は、まわりのアリゲーターはちゃんと倒せてるけど、ビッグアリゲーターには効果が薄そうだ。それにロベールの魔力量は多いわけじゃないから泥仕合になりそう。
ずっと睨んでいたビッグアリゲーターがなにやらのけぞった。そして勢いをつけて口から咆哮を吐いてきた。
ギャヲヲヲヲヲ!!!
「うるっさ!?」
「っきゃぁ!」
「クッ……避けろ!」
ブン!ブン!
咆哮に驚いてるところをビッグアリゲーターが尻尾で攻撃してくる。トゲトゲしてて重そうな尻尾は当たったら交通事故並のダメージがきそう!
ザッと後ろに飛び退いて回避できたけど、尻尾長いし攻撃範囲が広いから迂闊に近づけないな。レゴちゃんの水の檻も二回目の旋回でこわされちゃったし。
それでもおれたちはジリジリと近づき、レゴちゃんも水の檻を展開。
魔力を練りつつ、沼のどこから触手ちゃんを出せばいいか考えあぐねてると、ふたたびビッグアリゲーターが仰け反った。
「また……!」
そして響き渡る咆哮。ブン!ブン!と体ごと回転しての尻尾攻撃。
避けるおれたちと、壊されるレゴちゃんの檻。
「もーっめんどくさいなー!」
こういうタイプ嫌いだ! やたら時間が取られるやつ。
地元の“大掃除”のときも、みんなが嫌がって押し付けあうタイプの魔物だぞ。
「ロベール様、魔石を与えてはいかがでしょうかっ?」
めげずに瞬時に防壁を張り直しだすレゴちゃんが、ロベールに提案した。
「! よし、投げるぞ!」
おれたちをだいぶ上から睥睨してくるビッグアリゲーター。またぞろ仰け反りそうになったとき、ロベールがポケットから大量の魔石を惜しげもなく投げた。
いくつかの魔石はいい感じにビッグアリゲーターの顔元へ飛んでいく。モンスターの黄色い目が魔石を捉え、大口を開けてバグン!と飛びかかった。
「いま!」
体勢を崩したうえに口閉じてる!
おれは触手ちゃんを陸から伸ばし、ビッグアリゲーターの鼻先からグルグルと巻き付けた。そのまま頭部を陸に押し付けるように引っぱって倒す。
「……弱点のセオリーは目玉……」
ふらりと現れたトミカちゃんが、手に持った殺意高めの木枝でビッグアリゲーターの右目を突いた。まるで気づいてなかったらしく、あっさり刺される沼の主。
ギュガアアアア!
痛みに大暴れしたビッグアリゲーターが触手ちゃんを振り切る。ヤバイ!と思ったけど、ビッグアリゲーターは声をあげて沼に潜っていくと、そのあとは出てこなかった。
子分たちもゾロゾロと沼の奥へ帰っていく。
生き残ったすべてのアリゲーターが消え、静かになった沼の水面をしばらく見つめるも変化はない。
「……撃退したと判断してよろしいのでしょうか」
「はい、おそらく。私たちを脅威とみて沼の底に隠れたのだと思います」
おれのこたえに、みんながホッと息をはいた。
「トミカさんの戦力はすごいですものね、私も慄きました。味方でとても心強いですわ」
「うれしいです……」
「とりあえず、ぼくたちもリザードテイルを採ろうか」
一応念の為、少し離れた場所に魔石を積み、ぶじに湿地に生えたリザードテイルの花を採取できた。
それから無傷のアリゲーター爪も落ちてて複数ゲットできた!
「よかったね、ロベール!」
「ああ。あれだけ倒したからもしかしたらと思ったが、みなのおかけだ、これでノミができたら魔石の加工したいんだ」
ほくほくした気持ちでしゃべってたら、ラレールさんたちが近づいてきた。目の前でモンスターが暴れていたせいか、トミカちゃんの攻撃のえぐさのせいか、三人とも顔色が悪い。
「……ご無事のようですね。ワタクシたちは少々めまいがしますので、先に宿へ戻らせていただきますわ」
元気ない。いつも高慢であれだったけど、こんなラレールさんは変な感じしちゃうな。
「あ! ラレールさま、ポーションありがとうございました。足に使わせていただきましたっ」
足の捻挫にかけたのは昨日もらったラレールさんのポーションだ。効果がしっかりした良い品でした。あざーす!
「そう。……感謝いたしますわ」
後半ポソッと呟いて宿へ帰っていった。
しゅ、殊勝ー! おれもだけど、みんなポカンとしちゃった。意外すぎた。
「コホン。なにはともあれ、課題は達成ですわね。皆さま、私達もお宿に戻りましょう」
ちょっと長なった。次回お家にかえりまーす!
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