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女子力をあげる

「招待状はもった?」

「持った」

「ドレスは足りそう?」

「かつてないほどある」

「ダンスは完璧?」

「あっちで練習する」

「あとは、あとは……」


「エリー、そんなに聞いていたら出発が遅くなってしまうよ」


慌ただしく帰ってきた両親との挨拶もそこそこに馬車に乗せられた。もう月末だからな、舞踏会にでるなら今日出発しないとギリギリアウトになるかもしれん。


お母様はさっき会ってからずっとワタワタしておれの身だしなみとか持ち物とかチェックしてる。“根回し”っていうのが無事に済んだのか、お父様は見たことないくらい穏やかな顔をしてる。


おれはといえば、王都の屋敷にも他の荷物を届けたって聞いたけどそんなに必要なのか、なぜ必要なのかいまいちわかってないまま馬車のなかにいた。そしてお母様の持ち物チェックループに巻き込まれている。頭がぼーっとしてくる……


「はっ! メルの大切なぬいぐるみ!」

「いりません」


3歳のときに握りしめたやつー。


「エリー、そんなに引き止めていたらほんとうに間に合わなくなってしまうよ」

「そ、そうですわね。メルちゃん、お母様もあとから行きますから舞踏会がんばるのよ」

「はい、お母様。安心してください、わたくしだって舞踏会をかるくこなしてみせますから!」


頼もしくなってメルちゃん……とウルウルしてるお母様におれとお父様は苦笑しかない。でも愛されてるっていいよなー。


「さ、メル扉を閉めるよ。軽量と馬の強化の魔法石を嵌めるからいつもと乗り心地は違うかもしれないけど、5日で王都に着くから我慢してほしい」

「はい、お父様。ありがとうございます」


魔法石ふたつも使ってくれるなんて予想外だ。うちは裕福な貴族じゃないから、魔法石を使うのは年に一回もないし、ホントいざってときしかないんだけど。


(王子の招待ってやっぱ “いざ” に含まれるんだな)


ドレスも新調したのを数着用意してもらったし、こんなに散財させたんだからなんかツメアト残してこないと!


おれはやる気十分にして夏の王都に戻るのだった。




魔法石を使った馬車はスイスイ進み、ほんとに5日で王都に着いた。馬車ってがたごと揺れるんだけど、魔法石の効果で乗り心地がタクシー並みに快適だった。


昼に屋敷に着くとすぐにダンドワさんがドレスの調整をしてくれる。ひさしぶりの自室にきたけど、キレイに掃除してもらっててベッドやソファもふかふかだ。


「お嬢様、夜会は明後日でございます。それまでくれぐれも日焼けなどなさいませんように」

「はぁい」

「お背中が少々荒れていますね。治癒師を呼びますのでその間はマッサージをいたしましょう」

「おやつは?」

「夜会が終わるまではお預けでございます」


マジかよ。ちょっとでも痩せとくためなんだろうけど、こういうとき女子はすごいなって思うよ。細めのフライドポテト食べたい。


ダンドワさんにボディのチェックされたので全裸のまま、おれは寂しいお腹をさすりながらベッドにうつ伏せに寝た。


うすーい香りのするオイルを全身に塗られてダンドワさんがマッサージしてくれる。きもちーけど時々痛い。


「うぅーそこ痛いぃ……」

「お嬢様は腰が細くていらっしゃるからお疲れなのでしょう。馬車に座りっぱなしでしたし、お尻も疲労がたまってしまってますわ」

「ぅああー……いたいーけど気持ちいいぃー」


手のひらを使って尻を揉みほぐされる。気持ちいいけどツボ?みたいの押されると息止まるくらい痛い。でも気持ちいい。

口開けっ放しで放心しちゃう。


「はわぁーしゅごい……しゅごいいたきもちい……」


背中と肩周りがたまらない。よだれでてきた。


夏の間に刃丞と手紙のやりとりしてたけど、あいつも夏休み初日からメイドさんとかにマッサージやらエステみたいのされたって書いてあった。公爵家だから美容にかける時間もお金も違うんだろうな。


つらつら考えてるとメイドちゃんが部屋に来て何事かをダンドワさんに伝えたようだ。


「お嬢様、治癒師がまいりました。一度ガウンを」

「ふぁーい」


言われるままガウンをきて、入室してきた治癒師のおじさんに背中を見せる。ポワーと温かさを感じたと思ったらそれで治癒は終わり。荒れてると言ってもちょっとだったみたいで、ダンドワさんが治癒師にお金払っておしまい。


でも治癒師って高額だから、こんなふうに簡単に呼んだりするのって今までの生活からしたら異常なことなんだけどな。


「なんかすごくお金使ってもらっちゃったな……お父様たちにお礼いわなきゃ」


再び全裸で寝そべり、こんどは仰向けで足を揉んでもらいながらダンドワさんに言う。


「旦那様も奥様も、お嬢様の初めての舞踏会、まして王子主催というまたとない機会でございますから資金はいくらかけても惜しくないとのお考えなのですよ」


はえー。そんなもんかね。

なんで誘われたかわからないけど、この機会に格上の貴族とのツテを作ってお父様たちに恩返ししなきゃな!


「わたしも気合いをいれなきゃね!」

「その意気ですお嬢様! より素敵な男性とご婚約できることを私どももお祈りしております!」

「ご…婚…約……???」


おっなんか嫌な予感すごいしてるけどなんだこれ。

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