るすばん
いやマジでなんで?
おれが王子の夜会に誘われる理由なんてぜんぜん思い浮かばないんだけど、それは家族全員がそうだったみたいだ。とりあえず真面目な話なのでお父様の執務室に移動することになった。
「メル、メルはレキサ王子とお会いしたことがあるかい?」
「いいえ、ありませんわ」
ないなー。身分が違いすぎて会う機会がない。親友の婚約者だけどクラスも違うしイケメンっていう噂はきくけど正直そのイケメン顔もあやふやだ。
「場所は王都で来月の初めに開くようだ。とても光栄なことだけど………メルは舞踏会にでたことはないよね?」
「はい」
やべーダンスしっかりやったことないぜ。ちっさい頃にお母様に習ったからワルツはなんとかなるが、それでもステップを覚えてるってだけだし……
「メルにはまだ早いと思って舞踏会に出さなかったぼくらの責任だ。不安なのもわかるが、安心してほしい」
おっなんだなんだパパ上すげー頼れる顔してるじゃん。
「これからぼくとエリーが根回しをしてくるから」
「お母様がメルちゃんにぴったりの男性をみつけてきますからね!」
ニコッ!
………おん? なんの話してる?
「そういうことで、とても忙しないけどぼくらはもう出発しなくちゃ間に合わない。寂しいだろうけど今月中には戻るからメルも招待状をよく見ておくんだよ」
ニコッ!!
とりあえずおれも微笑んでおいた。
喜ばしいことがひとつは判明している。
お母様から貸してもらってた侍女さんが正式におれの侍女さんになった。
「あらためて、よろしくね」
「はいお嬢様。より一層の誠心誠意をもちましてお嬢様へお仕えしたく存じます」
かたいなー。侍女さんは24歳でなまえはダンドワさん。見た目はあれだ、ロッテンマイヤーさんみたいな感じ。
「んー。なんかお父様とお母様が留守になっちゃったけど、いつもどおりにやればいいかな?」
家令のおじさんは置いていってくれたからとくに心配はないしな。
「お嬢様、お願いがございます」
中庭に出ていつものように魔法の練習しようとしていたら、ダンドワさんが神妙な雰囲気で近寄ってきた。
「おねがい?」
「はい、どうか私めにもお嬢様の魔法を使って縛ってほしいのです」
「はへっ? なんで!?」
どうした目覚めちゃったのか!?
「お仕えする方のすべてを知ってこその侍女と考えております。また、実際に体験すればなにかお役に立てるかもしれないと思いまして……」
ままま真面目ーー!!
王都で魔法を練習するときは距離をとって近づかなかったのに、直属になったらこんなに親身になってくれんの!?
驚いているとほかの練習見守り隊の人たちもおずおずとやってきた。
「わ、私もおねがいします……!」
「おれ、いえっ私にも!」
「私にももう一度、いや一度といわずお嬢様の気が済むまで!」
メイドちゃんとほどほど筋肉の使用人さんは蒼白な顔で、ガチムチ使用人さんは満面の笑みで訴えてきた。
「え、いや、ムリしないで」
「「「「 ムリではございません! 」」」」
「お、おう。じゃあ……いでよ、触手ちゃん!」
シュルシュルシュルシュル!
「アアッ!」
「きゃぅっ」
「うわ!」
「オオ……」
4人がそれぞれの悲鳴をあげて体験してくれた。
ただ複数のひとを縛るなんて初めてだからみんな胸元を一巻するのが精一杯だった。
「な、なるほど、これがお嬢様の魔法ですか……」
縛られて顔色も悪いのに冷静を保つダンドワさん。
「お嬢様、これは素晴らしい捕縛術となりましょう。呪いの解呪とともに技を何種かつくるべきですね」
「お言葉ですが侍女さま。うまく使えば身体強化にもなりそうでは?」
ガチムチが胸筋をピクピクさせながら提案する。
それにうなずくと、ダンドワさんは自らのおっぱいを見、それからメイドちゃんのおっぱいも見た。
「ドレスのなかに仕込めば、より美しい体を作れるかもしれませんね」
こうして午後は意見を聞きつつ、みんなを縛って縛って縛りまくったのだった。
それから夕食。両親がいないからひとりで食堂で食べるのが、思ったより寂しかったけどこれはナイショだ。
で、就寝時間までダンドワと家令のおじさんに付き合ってもらってダンスの練習をした。
そんなふうにして地道に夏休みを過ごして、またに領地の村に遊びに行ったりしたらあっという間に月末になってた。




