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夏休みになったよー

そうこうしていたら、夏休みになった。

この世界では学生の夏休みは二か月で、この期間を利用して里帰りなどをするが移動が馬車か徒歩の世界ではさほど余裕があるとは言えない。


かくいうおれも実家まで10日かかるから気が重い。まぁ馬車の性能が古いやつだから仕方ないね。


「メル! おかえり!」

「ただいま帰りましたお父様」


ぎゅうーっと抱きしめてくる溺愛パパ上。

村に泊まったりなんだりしてお昼近くに着いたんだけど家にいるってことは仕事さぼっちゃってるパターンかな?


「メルちゃんおかえりなさい。ランチはまだよね? たーくさん作ったからいっぱいお話しながら食べましょ!」


お母様は慈母のかたまりみたいな人で優しいしかわいい。前世の母親はオカン!って感じだったから、今世のお母様にはなんかちょっと照れが出てしまう。


「はいったくさんお話したいことがありますわ」


末っ子なもので愛情いっぱいに育っている自覚がある。

6歳までは記憶なかったし、前世思い出してからも10年弱も庇護してもらってるからおれもしっかり愛情を感じてる。できるかぎり親孝行したいと考えてるんだよね。



使用人のみなさんに笑顔でおかえりなさいって言ってもらって、自分の部屋にいって着替えを手伝ってもらるときにもメイドちゃんたちから王都で不自由なかったですか?とか甘やかされた。うちの領地はいい人ばっかりだ。


食堂へ行きみんなで昼食をとりながら、話題は王都でのおれの生活とローズマリー公爵令嬢とのことだった。


「ローズマリー様のランチにご招待されていると報告があったときは驚いたよ。同い年なのは知っていたが、公爵家のご令嬢が男爵家のものと席を一緒にするとは思ってなかったから」

「メルちゃんなら礼儀作法は問題ないとは思うけど………公爵様に送るお礼の品もたいしたものをご用意できなくて申し訳ないわ。メルちゃんも恥ずかしい思いはしなかった?」


優しい両親がしゅんとしてるのは心苦しい。おれは刃丞という親友と飯食べてるだけの感覚だったけど、両親からしたら公爵家と関わってるって割と一大事だったんだな。


「ローズマリー様はお優しいから、過剰に気にすることないと思いますわ。ほんとうに、とっても良い方だし」


(あっそうだ)


刃丞のことを言ってて気づいたけど、あいついわゆる“正史”では追放されるんだよな。ウィステリア先輩に聞く限りはゲームでもどこにだかは明確に語られなかったらしい。


「公爵家の方にこんな表現はおこがましいけれど、ローズマリー様とは姉妹のようで……一緒に暮らせたら、なんて考えてしまいますの」


うふふっとエンジェルスマイル(自称)を浮かべて語ってみる。

現実にゲームが開始されるかわからないけど、伏線を張っておくにはかまわないよな?


「まぁ。ほんとうに仲が良いのね! 素敵だわ」

「こんなにいい子のメルが言うんだ、ローズマリー様は素晴らしいお人なんだね」


「ところで、メル。メルの魔法にも変化があったようだね?」


おっ本題ですかな。家族が隠していたおれの呪われし魔法というヒミツ。お父様の眉も下がって心配気というか気遣わしげだ。


「はいお父様。みんなには大変な心労をさせてしまいました……けど! 王都で触手ちゃんは進化しています! 呪いなどすぐに解けますわ!」

「メル……」

「メルちゃん……あなた、私たちの娘がこんなの立派に……っ」

「ああ、泣かないでおくれ」


ホロホロと泣き始めたお母様を慰めるお父様。美女とイケメンだから絵になる。両親のイチャイチャって恥ずかしく感じそうだけど出来過ぎててむしろ何もない感じないんだよな。微笑ましくすら感じるぜ。


昼飯も終盤であとはデザート食べようって頃、執事がお父様に耳打ちしに行った。終わりかけとはいえ食事中に執事が動くなんて珍しい。


「それはほんとうか……っ?」


驚愕!って表情におれとお母様は顔を見合わせた。

そこからお父様が考えこんでしまったので、そそくさとメロンを食べて昼食は終了となった。




午後は中庭に出て触手ちゃんの強化&進化の練習をすることにした。

いつも通り侍女さん、メイドちゃん、それから実家の使用人さんの男がふたり。王都のときより警護がやや強化された状態だ。



(可愛くなれー可愛くなれー)


イメージとして可愛いって漠然としてるよなって自分でも思うけど打開策・ナシ。とりあえずカラーチェンジを目論んでるから、可愛い色といえばピンクかなとイメージする。


でも考えれば考えるほど、頭をピンクにしたドラァグクイーンとかピンクスーツのお笑い芸人とかが頭に浮かび「ほんとにピンクって可愛いか?」って脳内のおれが囁くんだ。


「いでよ、触手ちゃん」


ニュニュニュ!

長さ20センチの黒触手ちゃんが飛び出してきた。太さは2センチくらいか?


「うーん。ぜんぜん変化してない」

「お嬢様、公爵様と開発なさったという魔法は……?」


ちょっと落ちこんでると侍女さんが気分を変えるように尋ねてきた。侍女さん、黒い触手ちゃん苦手なのに気を遣ってくれるなんてやさしいな。


「すっごく長くなるの、2メートルくらいにはなるかな」

「おお、それは凄いですね!」


ふたりの使用人さんのうち、よりガチムチのほうがニコニコ褒めてくれた。凄いって言われるの純粋にうれしいな!


「へへっ見てみる?」

「おおっよろしいのですか是非!」


「縛れ、触手ちゃん!」


シュルシュル!

真っ黒な触手ちゃんがロープのように細くなってガチムチボディを縛りつける!


「オア!?」

「あれっ?長さ足りない……」


ガチムチボディの胸筋とぶっとい腕ををふた巻きしただけで触手ちゃんは伸びなくなってしまった。ペタリと体にくっついてるから取れることはないけど………


「魔力が足りないのかなぁ?」

「お嬢様、これはわたしの大胸筋をうまく支えてくれていますな!」

「そう? 縛るのが良い効果にもなるのかな。縛ってても痛くはないでしょう?」

「はい! むしろ心地よいような……」


うーんうーんと検証しているとお父様が中庭にやってきた。お母様と執事も一緒についてきていて三人とも難しい顔をしてる、気がする。


「メル、大切な話ができた」

「? はい」


お父様は執事が差し出した手紙を、そのままおれに渡してきた。開封はしてある。


(あれ? この蝋のマーク……)


「落ち着いて聞いてほしい。レキサ第二王子からの夜会の招待状がメルに届いた」


なんで???

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