秋の予定
春にダンジョンへいったおれたちだが、この秋にさらに難易度があがった野外授業の準備が設定されてる。一泊する長期の授業でSクラスとAクラスはこの秋に行くけど、おれたちBクラス以下は年明けっていわれてる。
その訓練に費やすのが後期の授業だ。
「一泊、しかもそのあいだの身支度も自分でするなんて難関ですね……」
レゴちゃんがふぅとため息をついて言った。
「ドレス、は持っていかないけど、ワンピースもちょっと難しいですよね」
「ええ、ヘアセットも……ああ何から手を付けたらいいのでしょう」
いわば修学旅行みたいなもんでホテルに泊まって魔法の勉強するんだけど、多くの生徒は貴族で生まれてからずっとメイドにお世話になってたからセルフで身の回りのことをするのがむずいんよな。そりゃおれも前世で服は自分きたよ?でも女子の服って構造が違そうじゃん。少なくとも16年は自力で服着てない。モタつく自信しかない。
「レゴ様、カエノメル、野外授業のことで相談がある、いまいいだろうか、ああそれと夏に南に行ってきたからふたりに土産を用意したんだ、受け取ってほしいんだが」
「ん、お待ちになってロベールさま」
「…………」
「…………」
石が大好きロベールは、夏休みに香り石の特産国に行ってきた。そしてロベールの背後にひっそりいるトミカちゃん。相変わらず気配薄いけど、魔法使ってないよね?
「ロベール様、トミカ様もごきげんよう。ご相談とはなんでしょうか?」
レゴちゃんが朗らかに挨拶をしてるので、おれもそれに続く。
「年明けの野外授業は班で行うだろう。春とおなじく、われわれ四人で班を組んではくれないだろうか、ぼく個人の見解としてはとても良いパーティであったと思う」
「わ、わたくしも、その、みなさまとご一緒したくて……」
緊張してるっぽいロベールともじもじしてるトミカちゃん。
おれとレゴちゃんは顔を見合わせて破顔した。
「ふふっ私たちはもうパーティとして考えていましたの」
「ふたりが他の班になっちゃうとか考えてなかったよ」
「こちらこそ、ぜひともよろしくお願いいたします」
だっておれたち最高のパーティじゃん!
夏の日差しが和らいできたガーデンテラス。屋根がついてるし、汗をかくほどの暑さはない。
今日もいつものメンバーでランチだ。王子は来てないけど、美味しそうなゼリーを差し入れてくれてた。前菜代わりに食べたけどすごい美味しかった、ブドウゼリー。
「ローズマリー様たちは来月にも野外授業なのですよね。ホテルでの過ごし方はいかがなさるのですか?」
「ふつうに過ごすけれど??」
何気なく聞いてみたら不思議そうに返事された。
え、刃丞はひとりで服着られるんか!
「……ああ! カエノメルさんのクラスは身支度も授業に入っているのでしたわね」
「え! みなさまは無いのですか」
ハチクちゃんが思い至って教えてくれたけど、やっぱり貴族のなかでも高位の家が多いから侍女とメイド連れていけるんだって。さらにBクラスよりホテルもグレードがたかいんだってさ!
率直にうらやましい!
「でもたしかに、私ひとりでは何もできないわね」
「ローズマリー様、ご安心なさってください。ローズマリー様が不自由なくお過ごしになれるよう、私たちがお世話できるように勉強しておりますから」
「いつなんどきにも備えておりますわ」
「いつでもお任せくださいねぇ」
ピネちゃんたちがドヤ顔で胸を張ってる。刃丞が聖女になるなら身の回りの世話をするのは侍女になる予定のピネちゃんたちだもんね。
三人ともおれより格上の貴族なのにえらいなー。
「ぽやっとしてますけど、貴女にも関係してますのよ」
プリュネちゃんにクスクス笑われながら頬つつかれた。そういえばおれも侍女候補なんだもんな、やっとかなきゃいけないのか。
すっかり他人事だと思ってた。
「メルはひとりでお着替えできる?」
「できないです……」
そうよねぇーと刃丞は理解してくれたけど、これはやれるようにならないとな。
帰宅してお風呂に入りマッサージをしてもらう。
「……これも出来るようになったほうがいいのかなぁ」
「なんのお話でしょうか」
べろーんと寝転がったままダンドワさんに今日のことを話してて、つくづく今が贅沢な状況だってあらためて思えた。部屋でマッサージされるってよく考えたらすごくない?
「なるほど。聖女様の侍女となるならば必要でしょうね。しかしいまから奉公へお出になっても間に合いませんし」
「だよねー?」
どうやって習得しよ。ダンドワさんとかメイドちゃんたちに実験させてほしいって言ってみたけど、恐れ多いから絶対ムリって断られた。
「奥様もこちらにずっとは居られないでしょうし……ピネ様たちにお願いするわけにはいきませんか」
いやーそれはなー。刃丞なら素っ裸みても何も感じないけど、ピネちゃんたちはダメだろ。セクハラというか、犯罪の気持ちになる。かといって刃丞はあれで公爵令嬢だから練習させろっつーのもなー。
「あ」
裸にしても怒られなさそうな人、いるじゃん!
遅くなってすみません!
ブクマ、評価ありがとうございます(^ν^)!




