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観光地でアクティビティ

翌日。

おれと刃丞はわが家の馬車で町へ行くことになった。公爵家の馬車じゃ目立ちすぎるからな。使うのはうちでいちばん良い馬車で、狭いけど二部屋になってるからプライバシーが守られる造りだ。


「ここが我がカルダモン領でもっとも賑やかな街です」


馬車から降りたら、エスコート役はおれだ。

刃丞ははじめての田舎町に目をキラキラさせてる。


「王都と建物のデザインも違うし可愛いわね! 名物はなに?」

「新鮮なモンスター肉。ってローズマリーさま、かんぜんに旅行気分ですね」

「お肉はぜったい食べましょう。もうね、穴場の避暑地にきたって感じだわ!」


鼻息が荒い。よっぽどストレス溜まってたんだな。うしろの侍女さんをチラと見たらさり気なく会釈してくれた。


「さあ、メル!観光させて!」


刃丞はおれの腕を組むと、はぐれないようにすると目についた店に入って買い物をしたり、屋台の食べ物もためらいなく食べまくり、メイドさんを引き連れてるのを忘れるくらいアグレッシブに町中を動き回った。


「いいわいいわ!さっきの隣国の生地なんて本当にステキ!」

「あれ、カルダモン領といっしょに考案したデザインだったからレアな生地ですよ」

「まあ! ドレスに仕立てて舞踏会で自慢しちゃおうかしら」

「かしこまりました」


ささっと手配しにまわる刃丞のところのメイドさん。あの様子なら夏明けにはドレスができちゃうんだろう。仕事早そうだもんな。さすが公爵家に支えるだけあってめちゃくちゃ優秀だなって思った。


「さっき食べた魚ってモンスターじゃないわよね?」

「そうですね、モンスターじゃなくてあれは近くの川で釣ったカル鮎です」

「カルあゆ……」

「ブランド化を目論んでますので」


カルダモンで採れてめっちゃ美味しい鮎、名づけてカル鮎!まだ自領でしか出回ってない。お父様がどうにか王都に販路できないかなーって考えてるらしい。


「ねぇメル。私、釣りがしたいわ!」

「令嬢がやったらダメじゃね?」


つい本音がでちゃった。貴族で狩猟が趣味ってひとは多いけど釣りは聞いたことないし、そもそも貴族の女性がアクティブに動くのはどうなんだ。


「ぐっ……か、観光ですもの誰もみていないし。それに王国のこと、ひいては庶民の生活ぶりを知るのは貴族の義務です!」

「うるさっ!?」

「だれかっ、釣り道具を用意なさい!」

「かしこまりました」

  



公爵令嬢の要望により、いまおれたちは町から近い川へ向かっている。森に敷かれた街道をひた走る。

馬車の前室にメイドさんが乗り、内扉を隔ててうしろの部屋におれ達ふたりって配置なんだけど、となり座った刃丞は窓のそとの景色に夢中だ。


「ああ〜風情があるわね、キャンプしたい」

「自然が多いのが自慢だからな。キャンプいいなーおれもしたい」

「したことないの?」

「うちも一応貴族なもんで……」


小声でならふつうに話せるから楽だ。なんだかおれも旅行気分になってきて、なんだかんだと喋ってたら川が見えてきた。川沿いには複数の人影があった。


馬車を降りてよくみると冒険者という職業の人たちで、しかも知り合い。


「え、なんか治安悪くない?」


でもそんなこと知らない刃丞がおれの横にピッタリくっつき、魔力を練り始めてる。目線を走らせてメイドさんとかの位置を確認してもいるようだ。


「大丈夫、あの人たちは知り合い。うちの領専属でモンスターとか狩ってもらってるんだ」


冒険者たちはおれに向かって礼をすると川の奥へ歩いていった。今日は気配をうすくしてるダンドワさんを見ると目配せしたので、釣りのための護衛として町を出る前にでも依頼したんだろうな。我が家のメイドさんだって優秀なんだぞ!


「ふぅん?」


専属とか田舎でモンスターがよく出ることならではの契約だからあんまり理解してないみたいだけど、刃丞はメイドさんたちに警戒を解くようにいってくれた。


まずうちの使用人さんが先頭になってそのあとを荷物を持ったメイドさんがいく。小石をどかしたり均したり、位置を話し合ってきめて敷物や傘の設置がおわってから、やっとおれたちが川へ進む。


「メルは釣りをしたことある?」

「いいえ、はじめてです」


前世でもやったことない。刃丞はやったことあったけど前世とここじゃ釣り竿のかたちが違うらしく、エサどうやってつけるの?から使用人さんに聞くことになった。


「なるほど、こうするのね」

「オッケーオッケー、やれる!」

「あら、やる気ね」


説明きいてたらワクワクしてきちゃったからな。

川のはしから、細長い釣り竿を振りかぶって投げる!となりで刃丞も投げるけど体幹がいい投げ方というか、立ち姿がきれいだ。


ちょっと待つ。


「「 ………… 」」


待つ。


「………っはぁはぁ」


なんだ、ドキドキしてきちゃったぞ!?


「ふふっ緊張しすぎ」

「いま刻一刻と緊張してきてる……」


小声でやりあう。

背後のメイドさんたちも息を潜めて見守ってくれてる。この無言というか、静かにしなきゃいけない中で注目されるのってヤバイ!


叫びたくなるのをなんとか耐えて数分。


ピクッ……


おれの釣り竿が反応した!?

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