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一年時、夏季試験

あれから6日経った。

今日はとうとう夏季試験の日である。午前中は筆記試験を教室で受け、午後は校庭へ出て各クラスの先生の前で指示された魔法を披露できれば合格という実技試験が行われる。


筆記試験は今しがた終わって座学が得意なこともあっていい感じなんだけど、問題は実技だ。

家でも学校でも真剣に触手の改良に取り組んだがまだまだ完璧とはいえない。ゆっくりやるしかないけど「呪いっぽい」とか言われると気が焦っちゃうんだよな。


「カエノメルさん、気落ちされてますの?」


となりの席のレゴちゃんが心配そうにこちらを伺ってくる。


「いいえ、大丈夫ですわ。ご心配ありが」

「所詮はいなかの男爵家ですものね! 答案まったく書けなかったのではなくて?かわいそうですわー! ンホーッホッホ!!」


レゴちゃんと和やかに話してたのに、後ろからすごい圧をかけてくる高笑いが聞こえてきた。

たぶんおれのこと言ってるんだろうけど、まだ名前呼ばれてないから振り返らなくていい(震え声)。


「なっ! なんてことをおっしゃいますのラレール様。カエノメルさんは優秀ですわ!」

「あらビルン様、そんな方をお庇いになるなんてお優しいのね。けれどおつきあいする相手はよく考えたほうがよろしくてよ。そうね、例えばわたくし」

「カエノメルさんは大切なお友達ですの! ひどいことをおっしゃるならわたくしだって、…っわたくしだって!」


おお、レゴちゃんが悪口言おうとして出てこなくて「うぐぅー」ってなってるこれは可愛い。でも顔真っ赤だしあせってるせいか呼吸がやばそうだ。このままだと気絶してもおかしくないぞ!


「レゴ様、わたくしをお友達といってくださってとっても嬉しいですわ!」


思いきってレゴちゃんを抱きしめて、そのままイスに座らせる。うわー興奮してるせいで体がすごい熱いけど大丈夫なのか!?


「カエノメルさん……」

「落ち着きましたか?」

「ふえっわたくし、わたくし……っ一矢も報えず無念ですわ」


涙目のレゴちゃん。


「ふん、そうやってビルン様に媚びるのがいやらしい男爵家らしい! 午後の試験でボロを馬脚をあらわすといいわ! ンホーッホッホ!!」


ラレールさんが高笑いして去っていった。

よくわかんないけど、嫌われてるのはわかった。

ラレールさんの実家は子爵家で、流行りのドレスを発表したり珍しいフルーツを売ったりするオシャレな街を管理してる。ラレールさん自身もオシャレだし、魔力もそこそこあってBクラスに入学した。で、そのときから男爵家を下に見てバカにしてくる貴族筆頭でもある。


(あんまり関わらんとこ)


今までどおり、当たらず触らずで近寄らないようにしよう。





そうして午後。


「ンキャアアアアアーッ!! 離しなさい! 離しなさい!!」


ラレールさんは細い黒縄のようなものに全身を縛られ身動きできないようになっていた。


「申し訳ございませんラレール様。試験でございますので、文句は先生に言ってくださいませ」


誰がやったかって、おれだよね。

怪我はさせないように前世のエロスな本で見たのを参考に縛ってる。心臓の上とか首はやばいからそれは避けて、上半身はおっぱいを挟むみたいに、下半身はブーメランパンツ的な模様にした。


もちろん、縛ったのは細く細くした触手ちゃんだ。


「えっ私のせいかしら? 高位魔力を御せるのを次回の目標にしましょうって言ったのだけど」

「Bクラスで魔力が強いのはラレール様ですわ、いちばんではないですけど」

「離しなさい! カルダモン! 許さなくてよ!」


なんでこんなことしてるかって言うと、


「許さなくて結構です。ラレール様がレゴ様を泣かせたこと、わたくしも許しませんから」

「そっそれは……! んきゃあ! 締め付けないでちょうだい!」


午後の試験の順番を待ちながらレゴちゃんとキャッキャしてたらラレールさんがまた難癖をつけてきて、怒ったレゴちゃんがラレールさんに絶交を宣言 → ラレールさんは自分のお得意の風魔法が発動しちゃってレゴちゃんとおれのスカートがめくれる → レゴちゃん泣く、の流れがあったのだ。


おれはスカートがめくれようが、パンツ見えようがかまわないんだけど、ちゃんとしたご令嬢のレゴちゃんは泣いてしまったので、落ち着くまで別室でメイドさんがそばについて介抱してる。


「ねえ、カルダモン嬢。やっぱり目標っていったわよね、私」

「はい先生。ですからわたくし、このように高位魔力を御せますので目標は変えたほうが良いと思いますわ」

「ああ!なるほど」


先生はパンと両手を合わせてうなずいた。


「そうならばつぎの目標は捕縛後の展開を数個考えること、にしましょう。はい、おしまい。カルダモン嬢は実技合格ね」


パチン。

先生が指を鳴らすと触手ちゃんが霧散した。人の使ってる魔法をキャンセルするとか、さすが魔法学校の教師だぜ。


「プセル嬢、あなたは魔力の錬成は合格ですが、激情に魔力を乗せてしまうのは未熟である証です。つぎの目標も魔力の錬成と操作です。それからビルン嬢に謝罪なさい、幼馴染なのでしょう?」

「はい………」


先生のお叱りを受けてしょんぼりするラレールさん。

夏季の目標と冬季の目標が同じって地味にキツイ。周りからはダサいって思われるからね。


かわいそうだが、レゴちゃんを泣かせたのは許せんのだ。

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