魔法学校1年生
「あなたっ、こちらへいらっしゃい!」
弱小男爵家の三女に生まれたおれ・井古翔義と親友・上井刃丞との再会は、刃丞が公爵令嬢のとりまきを引きつれた状態での魔法学校の廊下だった。
入学式のおわったおれたちは魔法学園の女子制服を、刃丞は同じ学園の制服を高そうな素材で改造したのを着用していた。
女子でも制服改造しちゃう子いるんだぁ〜って感心したのを覚えてる。
それがのちに数々の逸話をのこす公爵家クローブ・ドゥクス・ローズマリーと、男爵家カルダモン・ダロ・カエノメルの出会いとして語られる。
「あのときの翔義、完全に逆ナンを期待してましたわね。ニヤニヤしてたもの」
「そりゃな? 女子たちにあんなに囲まれてみろよ、圧がすっごいんだぞ」
「おっぱいが?」
「おっぱいが」
「「 ………ぶっ! 」」
ぶひゃひゃひゃとバカ笑いしちゃう。
いま公爵家のサロンは、おれと刃丞のふたりきり。
ふだんは刃丞についてるメイドさんも部屋の外で待機してもらってる。
親友と再会したのが3ヶ月前。
おれは田舎の男爵家三女っていう甘やかされる立場なもんで、6歳のときに唐突に記憶が戻ってからもわりと自由に暮らしてた。
魔法学校なんていうファンタジー満載くさい学校があるって知ってからは、おれはめちゃくちゃショボい魔法を父さんにアピールしまくった。そしたらにこにこ「メルは天才だなぁ」とか言って入学させてくれる甘々なパパさん、あざーす!!
刃丞は公爵家の長女だったもんでお嬢様教育が厳しかったんだって。おなじく6歳で記憶が戻ったときにはお嬢様言葉で話すのが楽になるくらい根づいてたから、おれと話すときでさえお上品である。そんで魔法の才能もしっかりあるので魔法学校に入学。
おれたち廊下で出会うって流れだ。
“前”と違ってすっかりお嬢様になってるが慣れた。
中身は高校のときのままだったからな!
お互いがどうやって生きてきたか話し合ううちにすぐ元の親友関係に戻れた。ふたりとも男子高校生からご令嬢に生まれ変わってるってゆー共通点もあったしな。
「それにしても、おれだってよく判ったよなー。あのときは一応お嬢様として動いてたのに」
紅茶のカップを優雅にテーブルに置く刃丞。
「わかりますわ、翔義はクセがありますもの」
ふふんとドヤ顔をみせてくる。くそー勝ち誇られてるな。
「だからその“クセ”ってなんなん? すげぇ気になるー」
「そうですわね、そろそろ教えてあげましょうか……」
しなやかな手を頬にあてて悩むふりが美しい絵のようだ。
でもおれにはDK(男子高校生)刃丞がもったいぶってるようにしか見えないのでイライラしかしない!
「なんだよっ!」
「あのね、翔義は初めての場所だと女性のお尻しかみてませんのよ。人の顔でも道でも、建物でもなくひたすら、お尻」
だ、だって仕方ないじゃん。
「あんな人、あなたしかいませんわ」
「でも女の子のお尻サイコーじゃん!?」
「わかる」
「「 ………ぶっ! 」」
ぶひゃひゃひゃひゃ!!
新しい世界で出会って3ヶ月。
おれたちは生まれ変わっても話す内容なんて変わらないことだけがわかった。
新連載ですよろしくでーす(^v^)