夢の中で頬をつねられても痛くない
『…さん…んさん…しゅんさん…俊さん!』
誰かが俺を呼んでいる気がした…妹か?俺はそう思い声を出そうとしたが口から空気がでるだけでそれは声にはなっていなかった。俺は声ではなく体を起こす、手を伸ばすなどの行動をしてみたが体はもちろん手足も全く動かなかった。しかし、かろうじて瞼は開いた。瞼を開き俺が見たものはどこまで永遠に続いていそうな真っ白い空間だった。
『…!』
『やっと気づきましたね…』
声が聞こえたほうに目をやると、そこには白髪ロングで綺麗な青い目の美しい女の人が立っていた。おかしな点をいうならばうちの高校の制服を着ているということだ。
『あら?なにかしら、じろじろ見て…あっ、ごめんなさい。しゃべれないのよね…』
彼女はそういうと俺の口元に指を添えて口をなぞるように指を動かした。
『なっ!』
声が出た。
『ふふふ…いい声を出すわね。そういうの好きよ』
『…』
俺が不機嫌そうな顔をしていると彼女はバツが悪そうに舌を出しあざとく『ごめんね』と言ってきた。言い方は悪いが可愛くない女性がこれと同じことをしてもなんとも思わないが、こんなに可愛い女性がやるとドキッっと来るものがある…
『あ、あの…ここは…それに、あなた誰ですか?俺の名前を知っていたようですが…』
それを言うと彼女は腕を組み、偉そうに…
『そうね…説明してなかったわね。私はエミリア。あなたにこれか起こる事を知らせに来た…簡単に言えば未来人です。そして、ここはあなたの夢の中です。』
『お、おう…とりあえず俺の頬をつねってくれ』
そういうと彼女は『わかりました』と少し困ったように答えた。つねられた結果は…痛くなかった。ということは本当に夢の中なのであろう。そして彼女の名前はエミリア…Re:ゼロを思い出すな…なんとなく容姿が似ている気がする…作者絶対に意識しただろ…(※すこしだけ意識しちゃいました…by作者)
『で?ここが夢の中というのは百歩譲って受け入れよう…でもな~、未来人でこれから起こる事を教えに来たって言われてもな~。…でも夢ってことは現実ではないんだよな?それに未来人ならこれから俺が何を質問するとか分かるはずだよな?』
俺の質問に彼女は少し困ったような顔をして…
『そうですね…ここらへんも説明しなければなりませんね。…まず、ここは夢であって同時に現実でもあります。実際に夢から目覚めたらそれが確信に変わると思いますが、夢って起きたら忘れてますよね?でも、このことについては一切忘れたりはしません。それどころか一語一句覚えてます。そして二つ目の質問です。確かに私は未来人ですがわかるのは、あなたやあなたの周りの起こる事件や事故だけです。そして私があなたの夢に現れるのはこれから起こる事件について知らせるためです』
彼女は落ち着いた声で俺にそう話した。すこし納得のいかない部分はあったが『そ、そうか』と返事をした。
『…ん?待てよ?今お前が俺の夢に現れたってことは俺はこれから何かがおこるのか?』
そういうと彼女は『ピンポーンピンポーン』とクイズ番組かのように軽く答えた。
『ピンポーンピンポーンじゃねーよ!!その事件ってどんな事件だ?』
俺がまくしたてると彼女は『まあ、まあ』と俺をなだめた。そして続けて…
『これから起こることはあなたには害はありません。ですがあなたの妹の唯さんに危険が及ぶでしょう。…なので今日は家から一歩も出させないでください』
『は?一歩もって…しかも唯が…あいつ今日学校なんだが』
『一応聞いておくがもし、外に出たら?』
『軽くて入院…重くて…』
その続きは言わなくても分かった。
『よし、なんとかしよう…』
俺は気合を入れたが声は弱々しいことが自分でもわかった。それを聞いた彼女は『しょうがないですね』と言い、小さくきれいな水晶を俺に渡してきた。
『…?これは』
『それは、一度だけやり直せることができる…マジックアイテム的なものよ。もし、妹さんが外に出て事故にあってしまったらその水晶をすぐに割って。そうしたら目が覚めたところからやり直せるわ』
『そんなものがあるなら安心だな』
と俺が安堵の息を漏らすが彼女はすぐに俺の安堵を否定した。
『いい?言っておくけどそれは最初で最後のマジックアイテムよ。もう無いからね』
『あ、ああ…わかった』
俺はそう言って水晶をポケットの中に入れた。それを確認すると彼女は
『よし、それじゃあ、そろそろ起きましょうか…』
『おう!!』
そして俺は再び目をつむった。その瞬間、『…を救ってね』という声が聞こえた気がした…