お客様にオススメのペットは……
「ドラゴンですね」
耳を疑ったね、だって一人暮らしのさみしさを紛らわすためにペットショップに寄ったら、店員がドラゴンとか言うんだぜ? トカゲとか、ヘビとかの隠語かと思ったけどさ、
「……またまた、ご冗談を。ドラゴンはそんなチンケな爬虫類じゃないですよォ」
ドラゴンは一応爬虫類に分布されるのか。
「うちは色々取り揃えてますよォ!」
そう言って、カタログのようなものを取り出し、俺に見せてくる。
なになに……『炎』『氷』『樹』『岩』……
攻略本かよ!? それぞれの属性の好物とか知らねーし!!
「いやいやお客さん、属性は大事ですよ? 炎の子には水とかあげちゃ駄目ですし、氷の子は火が厳禁、うっすぐらくて冷蔵庫ぐらいの温度にしてあげないと……」
ややこし過ぎんだろ!!
「そんなお客さんにオススメなのがこの子! 『闇』属性のドラゴンちゃんです」
そうして見せられたのは、黒光りして、皮膚はゴツゴツとしている……ドラゴンと言われたらドラゴンだが、トカゲって言われたらトカゲに見えてしまう。
「まぁ闇属性の子は懐かない可能性が非常に高いですが、餌は冷凍ネズミをそのままでいけたり、飼育環境は部屋を暗くしとくだけでいいので……まさにお客様うってつけのドラゴンでしょう?」
どこ見てそう思った?
「もしくは『光』属性ですか? ですが、この子は一日三回の散歩に二十四時間のうち十六時間は陽の光に当ててあげないといけないのでお客様にはちょーっと難易度が高いのでは……」
なぁ、どこ見てそう思った?
「ま、まぁとにかく、最近はドラゴンをペットとして育てる方が増えているんですよ。初心者用マニュアルもありますし……それに、大きくなると、空を飛べるようになるんですよ!」
最後のは少し心惹かれるが、ドラゴン……ドラゴンねぇ……
「うーっ……それなら! こちらはどうですか!?」
中々踏ん切りのつかない俺に痺れを切らしたのか、店員はポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。
「特別なお客様にしか――の超レア商品ですよォ?」
今日初めて来た客に、そんなもん見せていいのか。それとも安い商品を高値で売りつけようとしてるんじゃないだろうな。
チラッと、店員の掌を見てみる。
そこには、小さな、しかしうずらの卵よりかは大きいぐらいの『卵』
「ドラゴンの卵! ですよ!!」
鼻息と声を荒くして言いよってきた店員だったが、俺にはそこまで興奮する理由がわからない。
「通常なら、この卵から産まれるドラゴンはミックスなので〜〜〜〜ぐらいは頂くのですが」
法外な値段を叩きつけてきた。
ドラゴンは俺達小市民が飼えるような生物なのか?
「話は最後まで聞いてください! この卵、こちらの不手際で何と何のミックスだったのか分からなくなってしまったのですよ! なので孵化させてから売りに出そうかと思ったのですが……特別価格で、お客様にお売り致しますよ!!」
そう言って、どこから取り出したかもわからない電卓を叩く叩く。そうして弾き出した金額は。
「2000円で」
……いや、ケタが三つも四つも減ったのだが。怪しすぎる……。
うーん。どうしようかなぁ。よくよく考えると、俺は犬とか猫を飼えるような経済状況じゃなかったし……ドラゴン育てるとか普通に心躍るし……
「……餌代って、月何円ぐらいかかります?」
とりあえず。ドラゴンを飼ってみることにした。