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魔法使いさんと妖精さんと  作者: otsk
第1章:魔法使いさんと旅の方々
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私の使い魔にします

 新しく鳥籠を取り揃えた。

 なんで、出費を少しでも減らそうと思ったのに増えてるんですか。これが分かりません。放し飼いでもいいかと思ったけど、ルピナスの進言により鳥籠で買うことになりました。

 じゃあ、その鳥籠誰が持ってくんだよっていう話になってルピナスに括り付けるという雑すぎる案で決着がついた。

 まあ、鳥籠の中に入れたのもどこかにいるかもしれない猟師にまた狙われないようにするためだが。

 助けた時に本当に猟師に襲われたかどうかは定かではない。

 さすがに犬と会話はできても鳥とまでは会話はできませんでした。

 残念ながらシオンもそこは同様のようだ。


「じゃあ、私が言葉を覚えさせます」


「言った言葉に反応するぐらいはできるかもしれんが、さすがに言葉を喋らすことは無理だろ」


「不可能を可能にする。それが魔法ですよ」


 自分のできることをその口で言ってからそういうことを言ってください。自然の摂理を利用したものであって、そんなエスパーまがいのことができるわけないだろ、何言ってんだこいつ。

 魔法という概念がある時点で、俺が言ってることも一般人からすれば何言ってんだこいつらだろうけども。


「さあデージーいきますよ〜」


 デージーと名付けられたその青い鳥をつれてどこかへ行こうとするが、その鳥籠ルピナスが背負ってるから自動的にルピナスも一緒に行く羽目になり俺は一人取り残されていた。

 しかし、ここに長居する必要もないし、そろそろ出発を考えないといけない。

 デージーが自由に飛び回れるようになったらという考えで滞在していたが、思っていた以上に回復も早かった。

 青い鳥を捕まえるという目的でここにきたので、それはすぐに叶ったのだが、いざ捕まえてみるとそのまま連れて行っていいものかどうかという疑念も生まれる。

 誰か一人でも意思の疎通を図れればよかったが、流石にそれも叶わなかった。

 外に離してみてそのまま離れていけばそれまでだが、俺たちから離れないようであれば連れて行こう。そう話はまとめておいた。

 今日はそのために外に出向いている。

 俺たちはデージーを拾った川沿いへと向かっていた。

 場所は開けているので、おそらく休日でもあれば各々がキャンプなり川遊びなりしてるだろう場所である。

 が、日付も気にせず旅をしてるような連中である俺たちにとって毎日休日みたいなものなので、そこの感覚は一般人よりズレているようだ。


「うええ……人が多いですぅ」


「しまったな今日は休日か」


「みんな仕事しろ仕事!」


「年中休日のやつがほざいてんな」


 働いて金がもらえるならまだしも、俺は特に定職についてるわけではない。そもそも職についてるなら旅なんてする必要ないし。

 大道芸でも始めましょうかね?


「アルスさんのしょっぼい魔法じゃ歓声が上がるどころか嘲笑の嵐ですよ」


 こいつの性格殴って矯正させたろうかしら。

 事実を言えばいいってもんでもない。

 こいつには優しさが足りてない。


「私が優しくするに足りる力を身につけてくださいという裏返しですよ〜。ここでは気持ち悪くなるだけなので奥に行きましょうルピナス」


「だから俺をおいて行くな……」


 しかしながら、普通の人にはシオンは見えないはずなので、俺は白いでかい犬に鳥籠を背負わせてる変なお兄さんとしかみられない気がする。いや、仮にシオンが普通の人に見えていたとしてもとても不自然な人なんですけども。付け足せばいいってもんじゃないな。ゴテゴテしてしまう。

 まあ、逆に変な人だなあいつぐらいのほうが下手に声はかけられないかもしれない。

 そして、俺はいつまでお兄さんで通せるのだろうか。

 見通しのない旅をしているとそんなことでさえ、少しばかり不安だ。

 ……そういえば、こんな都市伝説があったな。

 30歳まで童貞を貫けば魔法使いになれると。

 ……ということは今は見習い?だから魔法もうまく使えないとか?


「そんなん嫌じゃーーーー!!!」


「うわ、どうしたんですかアルスさん」


「30までこんなんなんて嫌だぞ!特訓するぞ特訓!」


「なんで30……私が十年経っても怪しいって言ったからですか?」


「そうだよ!立派な魔法使いになって世の中に貢献してやるんだ!」


「……そうですね。では、手始めにここの森一帯を焼け野原にしてください。さすれば、多少は力もついてることでしょう」


「指名手配されるわ⁉︎なんだその特訓方法は⁉︎」


「まあ、荒療治というか。あいにくアルスさん程度の魔法では木の一本も燃やせないでしょうに」


「ごもっともです……」


「まあ、国境なき場所でそういう特訓はすることにしましょう。あくまでもここはひとつの国ですからね。今以上に人目を避けて生活するなんてまっぴらです」


「だったら最初からそんな提案しないでくれ……」


 世の中に貢献するって言っておいて、辺り一面焼け野原にするやつってなんだよ。テロ組織の一派か俺は。


「ところでデージーのほうはどうだ?」


「そうです、そうです。そのためにこっちに来たんでした。さあ、飛んでみてくださいデージー」


 鳥籠の扉を開けたが、デージーはそこから出て行こうとはしない。

 それどころか少し震えてるようにも見える。


「うーん、ここで飛ぶのが怖いんですかね?」


「仕方ないだろ。ここで飛んでるところを狙われたんだ。トラウマになってる可能性もある」


「でも、アルスさんはデージーを出来ればかえしてあげたいんですよね?」


「まあ、自分の意思でついてくるからともかく、仲間がこっちにはいるだろうしな。俺が連れていきたいって連れてくわけにもいかないだろう」


「でも、青い鳥って見つかると幸運が訪れるってことは希少種なんじゃないですか?」


「……仲間が少ないってことか?」


「そんなに数多くいるのなら幸せになるなんて眉唾な噂も流れないでしょう。珍しいから流れるものだと思います」


 希少価値のあるものは商売でも高値で売り買いされることだろう。

 猟師というのはそれを生業としている。

 褒められたものではないが、否定する気もない。

 現に自分たちだってそうやって生き物を狩って食しているのだから。

 俺が拾わなかったらそのまま何かの餌食になっていたかもしれない。

 何かの巡り合わせだと思いたいが……。


「ここじゃないところで飛べるかどうか試してみるか」


「それもそうですね。ここでは飛べないかもしれません……⁉︎」


 急にシオンが弾かれるように後ろに下がったと思ったら、何か弾のようなものが飛んできた。


「だ、誰だ⁉︎」


「あり?何もいねえな」


 銃を肩にぶら下げたひとりの壮年の男が出てきた。

 シオンが狙われた?

 見えていたのか?


「おい、にいちゃん。さっきからここにいたよな?何してんだ?」


「先日、怪我をしていた鳥を拾った。飛べるようであれば帰してやろうと思ってここにきたんだが……どうやらまだ飛べないようだ。日を改めてまた来ることにする」


「鳥……?へぇ……にいちゃん。その鳥の価値を知らないのか?」


「一応、噂程度には聞いてこの国に来た。が、さすがに望んでこないものを連れて行くつもりはない」


「50万」


「は?」


「金だよ。それだけ出してやる。俺にくれないか?」


「……断る。あんたにくれてやるぐらいならこの大自然に帰してやる」


「ほぅ……」


 男は俺の方に銃口を向けた。


「なんの真似だ?」


「なら力づくでもらうかなぁってさ。そっちの犬も上等そうだ。お前が飼い主なら露頭に迷うだけだ……いっっっ!!!」


 ルピナスは鳥籠を背負ってなかったので、身軽になっていた体を機敏に動かして、その猟師らしき男の足に噛み付いていた。

 その痛みの反動で男は手に持っていた銃を放し、地面へと転がっていた。

 俺はそれを拾う。

 向こうがやったように銃口をその男に向けた。


「今なら何も聞かなかったことにするけど、どうする?別にここであんたを撃っても俺はただの旅人だ。後ろ指さされることもないし、この国から出ていくだけだ。そもそも持ち物検査の時点では銃なんて持ってなかったから、猟師に襲われたという言い分も通ることだろうな」


「ヒッ……ヒェ〜〜〜殺さないでくれーーー…………」


 猟師と思しき男はそのまま奥へと走り去っていった。もっと腰を抜かしてるかと思ったけど、そう簡単に人間腰を抜かさないみたいだな。

 別に魔法を使って脅さなくても立ち回り次第ではこういうとこともあるのか。


「サンキュなルピナス」


「別に礼を言われるほどでもない。貴様がいないと飯にありつくのが面倒だし、エリカにも会えなくなってしまうからな」


「あ、そうだ。シオンー」


「そんな声を上げなくても近くにいますよ」


「なんだいたのか」


「随分な言い草ですね」


「……なあ、アイツにはお前が見えてたのかな?」


「私たちは完全に姿を消してるわけではなく、擬態しているというか、意識を私たち以外に逸らしてると言った方が正しいんです。だから、注視すれば、完全にとは言わなくてもなんとなく何かいるぐらいには分かるんです」


「そうだったのか」


「でも、ルピナスが手伝ったとはいえ大層な立ち回りでしたね、アルスさん」


「別に絡まれるの自体は初めてじゃないしな。もっと大人数だったこともあるし、最初はボコボコにされて有り金取られてたな」


「それで、外出するときは必要分以外は私のところに置いてたわけですか……今更ながら謎が解けましたよ」


「まあ、ハッタリも出来るようになったし、体自体は二年前より強くなってる。しかし、この銃はどうしたもんか……」


「使いますか?」


「こんなデカいもん背負って歩き回りたくねえんだけど。銃を使うにも拳銃とかもう少し機動性に優れた方が移動にも楽だわ。これは国家権力に預けるとしよう」


「そんなデカい武器はアルスさんには似合いませんよ。私がもっと特訓してあげますから、魔法を、自分の誇れるものにしてくださいね」


「……だな。さて、別に飛ぶだけならここじゃなくてもいい。移動しよう」


「そうですね。ルピナス〜行きますよ」


「行くならちゃんと鳥籠持っていけ。元々私が背負ういわれはない」


 それもそうだと最初は使い魔にするっていうものだからシオンに持たせようとしたが、どうにも筋力は体に比例してるらしく、羽ばたいて持っていられるわけでもないようなので俺が持つことになった。

 実際には重さ的には大したことないかもしれないが、自分より大きいものを持とうとすると、バランスが取れないのだ。それが影響してそうだ。

 さて、デージーは飛んでくれるだろうか。

 ……飛べないとしても、そのときは連れて行くとしよう。

 ……つくづく、俺は甘いようだ。

 鳥籠を提げながら元来た道を引き返していた。

 そういや、あの猟師奥の方行ってしまったけどちゃんと帰れるといいな。

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