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魔法使いさんと妖精さんと  作者: otsk
第1章:魔法使いさんと旅の方々
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幸せの青い鳥

 新しい国へとたどり着き、適当に荷物検査を受けて入国した。仕事を探してるので大体1ヶ月〜2ヶ月といったところだが目安でしかないので、その際は申請すれば事足りるだろう。


「さて、家畜二匹食わせるために何をするか」


「誰が家畜ですか!」


「我が家の畜生だからお前に関しても間違ってない」


「……あれ?」


 そもそも妖精ってどうカテゴリーすればいいんだろうか。人間ではないけど人間を模しているというか。だからどういう扱いにすればいいのか分からずじまいで旅をしている。


「また気に入れば永住するっていう目的か?」


「いや、ここの国にはちょっとした噂があってな」


「噂?」


 ルピナスに聞かれたのでここに来た目的を話すことにする。

 童話で幸せの青い鳥というものがある。

 青い鳥を見つけて捕まえると、その人は幸せになれるというものだ。

 確かこれの主人公は二人の兄弟だった気がする。

 しかしながら、どこを探し回ってもその青い鳥は見つからなかった。


「さて、この童話のオチをお前は知ってるか?」


「エリカが昔読んでた気がするな。最終的には自分たちの家の鳥籠にいたとかなんとか。私には意味はさっぱりだが」


「まあ、幸せは探し回って見つけるもんじゃなくて、思ったより近くにあるっていう暗示じゃねえかなって俺は思ってるよ」


「で、その見解にたどり着いたお前は童話のごとくその青い鳥を探しにいくのか」


「なんか、魔法使いって使い魔がつきものって感じがしねえか?」


「お前の勝手な認識なんてどうでもいいのだが、そっちの妖精に聞いた方がいいだろ」


「まあ、いれば便利ってものでいなくても支障があるわけではないですよ?ただまあ、アルスさんの場合は藁にでもすがりたいというところでしょう」


「それで幸せの象徴である青い鳥か。滑稽だな」


 犬にまで鼻で笑われてしまった。

 いいじゃねえか、ちょっとぐらいすがっても。


「ところで宿はどこですか?」


「今まではシオンは見えなかったから俺一人ということで取れたんだけどなあ。ルピナスどうしよう。犬も大丈夫って宿なかなかないだろ……さすがに外に放置ってわけにもいかんしなぁ。どうしたもんか……ん?」


 服の裾をルピナスが引っ張るもんだから、そちらを見る。

 どうやら看板を見ろ、ということらしい。


『ペット同伴OK(ただし、ケージに入れた状態でお願いします)』


「……入るか?」


「致し方ないな。しかし、お前が私を運べるのか?」


「世の中にはな、魔法に頼らなくても便利なものが溢れてるんだよ」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「台車ですか」


「さすがにここまでの大型犬を担いでいけんわ」


 折りたたみ式の大型犬も入るケージを購入しました。微妙に痛い出費だが、これからも使うことを考えれば遅かれ早かれというやつだろう。

 台車はさすがに借りました。


「非力ですね〜本当に元農家の息子ですか」


「元だからな。筋力落ちたかもしらん」


「もういっそ魔法使いのイメージぶっ壊す方向はどうでしょうか?筋骨隆々の方が威圧感出ますし」


「……イメージがつかん」


「まあ、イメージがつかないものになろうとしたところで難しい話ですね。それはともかくお腹空いたので、早くチェックインしてご飯食べに行きましょう」


「……現地調達だぞ?」


「なんでそんなに毎回サバイバルなんですか」


「……ルピナス、元狩猟犬ということはないか?」


「だったとしても私はもう歳だ。そんなことは出来ん」


「ですよね」


 金がないからそういうことになる。旅館代だって、タダじゃないんだ。まあ、寝床の確保ということだけなんだが。

 結局俺が頑張るしかないそうなので、荷物は宿に置いてさっそく食料の調達だ。

 近くに川があるようなので、ミニキャンプといこうでないか。

 幸い火を起こすぐらいならシオンでもやってくれるし。薪がわりになりそうなのはルピナスも拾ってくれると思うし。

 そういう段取りで行こう。役割分担って俺大事だと思うんだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「っていう話をしたよな⁉︎なんで何も用意してくれてねえの?俺だけびしょ濡れで寒いんだど!」


「まだ幸い身が凍えるような季節ではなく、鳥がうららかに歌うような気候でよかったですね」


「悠長なこと言ってないで火を起こせ!」


「自分で起こせばいいのでは?」


「こんな状態で集中出来るか!仕事しない奴に飯食わせないぞ!」


「豪語して二匹しか捕まえてないじゃないですか」


「お前の分抜きな」


「そんなバカな⁉︎」


 どの口がほざくんだこいつ。ルピナスはちゃんと小枝をかき集めて、ご丁寧に火を起こしやすいように組んでまでしてくれてるのにその火を起こそうとすらしない奴がいるとは思わなんだ。

 ルピナスさんすぐ終わったのか日向ぼっこしてますけど。おじいちゃんだから必要以上には動きたくないらしい。ルピナスが自称してるだけだから、実際のところは年齢はいまいちわからんのだけど。犬って年齢の変化分かりにくいじゃない?精々赤ちゃんから成長したなって程度ぐらいしか分からない。


「すいませんでした〜火起こしておくんで私の分も取ってきてください〜」


「ったく……」


 こうやってほいほい引き受けてしまうところも自分の悪いところというかつい甘やかしてしまうというか……そもそもあいつの方が年上だよな?年上らしいところ見せろよ。


「ん?」


 魚を熊のごとく捕まえようと思っていたが、上流から流れてくるものに目がいった。

 特に動くようでもなかったので手に取り、魚を取らずにすぐに引き上げた。


「早かったですね」


「あー、まあな」


「どんな魚捕まえたんですか?この際ですから雑魚でも文句は言いません!」


 随分と下手に出るようになったなこいつ。


「じゃなくて……こいつ、温めてやってくれ」


 俺は青い鳥を拾い上げていた。




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