魔法を使う理由
近代化が進んでいくのに逆らって、魔法というのはどこか退廃的な印象を受け付ける。
俺の主観なのだけど。
まあ、近代化っていっても、結局は機械や道具に頼らないといけないから自家発電のできる魔法はそういう点では便利と言えるだろう。
だから、道具を使って、魔法を出せば更なる力が期待できる事だろう。
「というわけで、そんな都合のいい道具はないか?魔法使いなんて結構杖とか使ってるだろ?」
「……適応しなきゃ意味ないでしょう。その辺の道具でやっても暴発するか不発ですよ」
「……俺専用の道具か……なんかいい響きだな」
「聞いてないなこいつ……」
「失礼な。ちゃんと聞いてるぞ。まあ、でも道具はあくまで自分の力の底上げというイメージだな。元が弱かったら、道具を使ったところでってところだろ」
「二年経ってもアルスさんは大した事ないですけどね」
「もっとこうさ、あるだろ?強制イベントというかさ。俺の眠れる力の開眼とか」
「元々ないものが一になった程度なので素養としては最低レベルですよアルスさんは。なので特訓です」
「特訓してて向上の兆しが見えないから言ってるんだけどな……」
嘆いても道具は出てこないし、自分の力が急激に上がるわけでもないから、地道に特訓するしかない。
まあ、確かに素養があるのならばそれこそ生まれた時から使えるとかあるだろうし、ならば日常的に使わざるを得ないところもあるだろう。
さすれば、こんな15、6でようやく使えるって分かったようなやつが自分がイメージしてるような魔法をバンバン使いこなすっていうほうがムシのいい話か。
そもそも使えるようになって一年は独学だし、ちゃんと指導してもらうようになったのも村から追い出されてシオンが指導役になってからだ。
たがだか二年で使いこなそうっていうほうが無理難題ということだな。
「でも、ひとつだけ擁護しておきますよ。アルスさん」
「ほう、隙を見つけては俺を散々貶していくお前が俺に対して何か擁護できる点があるのか」
「そうやって根性ひねくれてるから上達しないんじゃないですかねー。下手に成長してしまったせいで、伸びるものも伸びませんよ」
それは魔法の技術的な話か、性格の話か?
しかし、使ってる時間が短いというのは事実だし、そもそも周りに使えるやつなんていなかったから、使えたところでというわけだ。
「まあ、使わなければ錆びついていきますし、使えば消耗こそしますが、技術はつきます。アルスさんが使える魔法の四大元素、覚えてますか?」
「火、風、水、土だろ?」
「そうです。大体魔法使える人は相性というのがありまして、どれか1つに特化することになります。というよりは、本来魔法を出力するための器官がそれに適応してしまうので、他の魔法が出せなくなってしまうんですね。まあ、アルスさんの場合は全てがしょぼいせいか、どれを使ってもまだ普通に出せるみたいですが」
こいつは素直に褒められないのか。
「じゃあ、均等にあげてけば全てが高レベルで使えるってことか?」
「失敗するかもしれませんが」
「……お前の考えだとどれぐらいかかる計算なんだ?」
「二年でこのレベルだとあと十年かけても私が考えてるレベルに達するのか否か……」
十年かけて達しなかったら俺はどうするんだよ。失敗する可能性もあるってことは最悪魔法が使えなくなる可能性も考えないといけないのか?
「ああ、あと眉唾物の噂ですが、その四大元素を全て極めたものには第五の元素エーテルという力を使えるようになるそうです」
「エーテル?どんな力なんだ?」
「よく分からないんですよね。名前だけ一人歩きしてるようでして。まあ、そもそも魔法自体が眉唾物で使える人も少ないですし、多分始祖が適当にでっち上げたとかじゃないですか?」
そんないい加減な認識でいいのか。
エーテルね。
「まあ、がんじがらめに特性だなんだって決めつけられて育てられてるやつよりは俺の方が可能性はないか?」
「可能性があっても出来るかどうかは全く別問題ですよ」
「ちくしょう……ちくしょう……」
「私の得意不得意もありますしね。妖精でも一緒ですよ」
「え?でも、シオンは一通り使えるよな?」
「使うだけならアルスさんよりはいくらでも使えますよ。まあ、その中で得意なのを伸ばしていくっていうのが正しい言い方ですね。さっきのは私の説明が悪かったです」
「ちなみに普通に使えるっていうのを10段階で5ぐらいだとすると、俺はどれぐらいなんだ?」
「0.1もあればいい方じゃないですかね?せめて、私が普通に使えるレベルの魔法ぐらいは越えないとお話になりませんよ」
「酷い……ちなみにシオンが一番得意なのは?」
「風、ですよ」
「具体的にどんなことができるんだ?」
「……とりあえず、アルスさん動かないでください」
「?」
シオンが手をかざすと、いきなり圧されたような感覚を感じ、後ろにそのまま倒れてしまった。
「???」
「アルスさんをこうして簡単に風圧で倒すことは造作もないです。やろうと思えばハリケーンだとか作り出せますし」
怖いです。俺に教えてばっかりでちゃんとしたシオンの実力というのを見てこなかったよう気もするが、なるほど、これでは俺が見下されるわけだ。
しかし、ルピナスのやつは飽きたのか寝てるし。結構歳だから動き回るのは辛いのかね?
「でも、魔法使いだって弱点の1つや2つあるだろ?便利で強いっても」
「……ひとつ、魔法を生成するための器官が他の人と違ってあるので、有り体に言ってしまえば寿命を縮めてることになりますね」
「……それってどのぐらい?」
「だいたい、普通の人より十年は早く死ぬとされてます。まあ、アルスさんの場合使えるようになったのも遅いですからそう大して変わりはないかもしれないですね」
やはり、便利なものには何かしらデメリットも付いて回るものか。
そうでなければ吊合わないものな。
普通の人より便利な力を有してるわけだ。
……だからこそ、俺はそれで何か役に立とうとは思ってはいるものの……。
「アルスさん、せめて30秒は出力持たせてください。火をひとつ取っても、やれることはたくさんあるですよ」
せいぜい、15秒がいいところか。出してからはそんなもので消えてしまう。元々の魔法を供給する器官がショボいのだろうか。使えば使うほど強くはなりそうだけど、その分寿命は縮めそうだ。
「もうリタイアですか?」
「闇雲に出しててもしょうがないと思ったんだが」
「あっちもこっちもって手を出すせいでなかなか上達しないんですよ。例えば、火なんですからまず手先で温度変化させるぐらいは出来ないと笑い者ですよ」
「ガキには受けたんだけどなあ」
「そのせいで追い出されたんでしょう?まあ、権力がなかったせいですかね。なんでも使いようですよ」
「なんで妖精が人間社会に詳しいんですかね」
「時折、転がり込んでくるんですよ。そういう人が。魔法を使えるようになったはいいですが、うまく使えなくて、結果、つまはじき者にされたという人です」
「……まるで俺みたいだな。それで、そういうやつらは結末はどうなるんだ?」
「……どうにもなりませんよ。どうにもなれないから逃げるか追い出されたんでしょう。戻るからには相応の力を持ってないといけないです」
「まあ、別にどうだっていいけどな。戻ろうとも思わんし」
「そうですか?」
「まあ、こっちのお犬様は戻さんといかんけどな」
「……お前たちがどうこうできる話ではないだろう」
「いっそのこと乗っ取って救済すれば戻れるだろ」
「お前は単細胞と言われたことないか?」
「やかましいわ」
善意で言ってるのにこうも貶されてはやる気も失せるというものだ。
仮に俺があの国の長となったとして、ルピナスを戻したとしても、すぐに退任するわけにもいかない。
そして長となったところで、エリカちゃんの家が復興するわけでもない。
別に国が廃れたわけではないのだ。
栄枯盛衰、盛者必衰。力ある者もいつかは衰える。
その過渡期にちょうど立ってしまっているのだ。
……まあ、あの子なら別の道を見つけるだろう。俺がとやかくすることではないという意味では俺にできることはない。
「うっし、じゃあもうひと頑張りすっか!」
「私に向かって打つなよ」
「正直今からでも打ち込みたいんだがどうしたもんかねぇ!」
「喧嘩しないでください。それにアルスさんのなんて当たっても精々ちっちゃい火傷程度が関の山ですよ」
もう少しフォローしてくれませんか?先生。
嘆いていても魔法が上達するわけでもないので、特訓する日々がまだまだ続きそうである。




