表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いさんと妖精さんと  作者: otsk
第2章:魔法使いさんと魔法使いの卵
21/345

先に立つもの

 子供による発想力の結果なのか、元の素養の話なのか、下積みをしてくれておいたおかげなのか、全員とは言わないが、教え子たちが魔法を出せそうな兆しが見えてきた。


「ゲホッ、ゲホッ!」


「おいおい大丈夫か?」


「もう少しでできそうだよ!せんせー!」


「そいつはいいこった。でも、使えるようになっても気をつけることはある」


「なにー?」


 色々試行錯誤してる子供達を一旦中断させて周りに集めた。


「何人か魔法を使えそうな奴が出てきたけど、使うにあたってもそいつ自身が気をつけなきゃいけないことがある。いくつか話すからちゃんと聞いておけよ」


 ぶつくさ不平が聞こえるが、威嚇射撃しておいた。

 本来こういう使い方をしてはいけないけどな。


「あのな?魔法を使えるってことは便利なことだ。だけど、同時に普通の人とは違う力を有してることになる。それは自分や友達を助ける力になるかもしれないし、逆に自分や友達を怪我をさせる力にもなりかねない。だから、魔法は正しく使わないといけないんだ。さっき、魔法を使おうとして煙が上がってた奴いただろ?失敗することは恥ずかしいことじゃないし、失敗をすることで正しいやり方がわかってくる。ただ近くに他の人がいた場合、さっきの煙が爆発にでもなってみろ。自分だけならともかく、他の人を怪我させるかもしれない。その場合、魔法を使った奴が責任を取れるか?」


 俺そんなヘマしない、だとか、まだ魔法使えないし、とかイマイチ管理能力に欠けてしまっている。

 それより早く練習させて欲しいとウズウズしてるようだ。

 まだ年端もいかない子達だ。自分が実際経験しないと怖さというのがわからないだろう。

 俺は指先から火を出した。


「何するの?先生」


「こうする」


 自分の左腕に火を押し付けた。

 よ、予想外に熱いな。

 すぐに水を放出して冷やしにかかる。

 俺の左腕はミミズ腫れのように痛々しい傷が出来上がっていた。


「下手をすると、こうやって傷をつくっちまう。もしかしたら一生消えないかもしれない。魔法を使うってことはそれだけ危険も伴うんだ。自分は絶対に失敗しない、なんて考えでいたらいつか絶対に痛い目を見る」


 少し子供達が怯えていた。

 まあ、いきなりこんなパフォーマンスを見せたらそうか。

 魔法はすごいもの、かっこいいもの、綺麗なもの。そう思ってやってきたのだ。


「使うなっていうことを言いたいんじゃないんだ。ちゃんと使うときは周りを確認して、魔法のことを理解してる大人がいるところで最初は使っていくんだぞ。時間とって悪かったな、時間まで練習してていいぞ」


 座っていた一人が立つと、また一人と練習へと散っていった。

 その中に一人だけどこにもいかず立ち尽くしてる子がいた。


「君は行かないのか?」


「せんせー。大丈夫?痛くないの?」


「……痛いよ。でも、我慢しないとな。先生は大人なんだから。自分でやったことだし。これでみんなが分かってくれるならそれでいい」


「ごめんなさい……」


「なんで謝るんだよ。いいんだよ。こんなのは唾つけときゃ気づいた時には治ってるから」


「せんせー。傷を治す魔法はないの?」


「……あればいいんだけどな。俺は知らない。あんまり都合のいいように魔法は生まれなかったみたいだ」


「じゃあ、私、今習ってるのだけじゃなくて、治す魔法を見つける。誰かが怪我をしても大丈夫なように探すよ」


「見つかったら、先生にも教えてくれよな」


「うん!私も練習してくる!」


 エーテル。

 その存在を思い出した。

 不可思議なものであり、そもそも存在自体があやふやなものだ。

 眉唾だの、でっち上げだのシオンのやつは言っていたが。

 それがもし、誰かの傷を癒すことのできる魔法であるのなら大発見だろう。

 魔法自体、そこまで栄えたものでもなく、今現在も衰退の途を辿ってる気がしなくもないが。

 エーテルの発見がそれに歯止めをかけてくれるかもしれない。

 しかし、母数にそもそも問題があるから発展となると難しいかもしれない。


「先生ー!教えてー!」


「はいはい、今行くよ」


 ならば、せめてものこの子たちが魔法を使えるようになってもらうのが、俺にとっては救いかもしれない。

 魔法の普及か……。

 途方もないな。そもそも使えるやつに出会ったことがないし。

 使えそうって思えるだけでも前進か。

 さて、今日は終わったらどうしようか。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 宿舎の廊下を歩いていると、ばたりと出会う人影があった。


「セラ、授業終わったのか?」


「え、アルスさん。はい、予定が済んだので戻ってきたところです」


「今日これからなんかする予定あるか?」


「なんですか急に……別に明日から休日なので特にないですけど」


「……そういや休日なんて概念があったな」


「アルスさんはもう少し人間社会に馴染んだほうがいいのでは?」


 だって、一人自由にやってると、曜日はおろか日付すら分からなくなる始末だからな。寒いなあ、暑いなあ、で季節を感じてるだけだ。だんだん人間社会から離脱してるのか。それは由々しき事態だ。


「それはともかく」


「放置していい問題なんですか」


「セラってこの国に友達いるの?」


「……なんでそんなこと聞くのですか」


「いや、特に外出する姿も見たことなかったなって思って」


「……ええ、まあ私そんなに友好的な人じゃないですし、同期の人なんていませんし、年の近い人もいないですし、気軽に話してくれるのなんて子供達だけですよ」


 悲しい事実を知ってしまった。


「ここにきてからどれだけ時間経ってるんだ?」


「1年ぐらいです」


「それだけいるなら街に繰り出すなりして知り合い作れよ……」


「だ、だって怖いじゃないですか!私よそ者ですよ!つまはじきものにされますよ!?」


「アクション起こさなきゃ変わるものも変わらねえだろ……そうだ」


「なんですか。悪い顔してますよ」


「ちょっと遠いがセラと同い年ぐらいの子がお店やってる服屋あるんだ。俺のローブ作ってもらっててさ、たまに顔出しに行ってんだ。今からよかったら行かないか?」


「……そうやって外に女の子の知り合い作ってたんですね」


「言いがかりだ……で、どうする?」


「……そうですね。私も友達、欲しいです。その人がなってくれるかはわかりませんけど。……それで、どれだけかかるんですか?」


「2時間」


「はい?」


「歩いて2時間」


「あなたはバカなんですか?」


「金がねえんだよ。ちょうどいい運動にもなるぞ」


「というか、そんな距離歩いてたらそりゃ夕飯の時間に遅刻しますよ。分かりました。私がお金出してあげるので、交通機関使っていきましょう」


「セラ……お金を使えるのか!」


「たかだか数百マニーも使えない貧乏さってどれだけひもじい生活送ってるんですか」


「前払いでそこに払ったらほとんどそこが尽きた」


「後先考えない人ですね……」


「後先考えてたら旅なんて出来ねえからな」


「カッコつけてるところすいませんが、早いところ行きますよ。案内してください」


 対応が冷たいですね。もっと愛想よくしてください。

 この子、俺より年下だよな?

 そういや、旅を中断してるからルピナスの散歩してやってないけど、あいつ何してんだろ。シオンが何かしらしてくれてたらいいんだけど。

 まあ、頭いいし自分で考えて何かしてくれるだろう。

 俺はセラを連れて、セラの友達づくりに協力することにした。

 まあ、旅をするにあたっては誰かに分からないことを聞くってことが一番重要だからな。意外とコミュニケーション能力が発達したりしなかったりするんだよ。

 悲しいことにセラにはこの国で友達と呼べる人がいないようなので、すこし友達が出来るかもという期待があるのか見た目にはソワソワしてるようにも見えたが、茶化すのはやめておいた。

 友達になってくれるといいな。

 電車なる乗り物に揺られながらそう願っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ