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◇裕司◇ 中年と青年

この地下シェルター(以下『髪隠し』)の中央には円を描くように8基の大型ジェネレーターが置かれている。そして、そこからシェルター全体に電力を供給している。だが、実際稼働しているのは5基のみで、そのうち3基が生活用電源、あとの2基は換気用電源となっている。稼働していない3基は緊急時の予備電源として普段は使用されていない。そしてこれらのジェネレーターは『髪隠し』の心臓とも呼べるものであり、その点検は裕司(ゆうじ)という30代半ばのガタイの良い男が中心となって行っていた。


「おお、もうこんな時間か。」

 医務室のドアの横で座っていた裕司は時間を確認して立ち上がると、バンダナを頭に巻きながらジェネレーターの点検に向かった。薄暗い廊下をとぼとぼと歩いていると、その途中で部屋から出てきた(ひかる)と合流した。光は20代前半の青年で、頭には裕司と同じようにバンダナを巻いている。彼のここでの仕事は主に裕司の手伝いである。


「あっ!裕司さん!どうでした?新人?見に行ってたんでしょ!?」

 光は下から覗き込むように聞いてくる。さながら、新聞記者のようである。


「見に行ってねぇよ。うっとおしいな。」

 裕司はぶっきらぼうに答えながら歩を進める。


「いやいや、今日彼がここに来た時に黎さんと一緒にいたでしょ!いいじゃないですか?みんな気になってるんですよ!今朝、黎さんに医務室送りにされたんでしょ?そいつ。どんなやばい奴が来たんだってみんな噂してますよ。」


 それを聞いて裕司はため息をつく。俊也が『髪隠し』にやってきたときに、警戒していくつか質問・・・というより取り調べをしていたのは黎と裕司だった。裕司はその場にいただけとも言えるが・・・。そして、黎は俊也にスタンガンを放った。そこまでするかと一瞬思ったが、髪が生えた人間というだけで危険な存在とも言えるので、特に黎を非難することはなかった。その後、結子とともに俊也を医務室に運んだ。その時に誰かに見られたて、噂になったのだろう。


「はぁ~。そんな噂になってんのか?ったく、めんどくせぇな~。」

「そうですよ!みんな興味津々ですよ!」

「わかったわかった!とりあえず今は点検が先だ。それが終わったらな!」

「はい!楽しみにしてますね!」


 そうこうしているうちに、二人は中央の扉を開ける。中は円形で壁の高さは10mほどある。そして、真上には巨大な換気兼排熱用のフィンがあり、地面には8基のジェネレーターが並べられている。


 中に入ると、裕司はすぐにこの空間の異常に気づいた。


「うわっ!暑っ!」

 光が開口一番に叫んだ。


 裕司はすぐに天井を確認する。


「・・・フィンが止まってやがる!おい!光!お前は5番から確認しろ!俺は1番から確認する!」

 裕司は状況を理解すると、簡潔に光に指示を出した。


「うわ~・・・。この暑い中ジェネレーターに近づくとか・・・地獄だな。」

 光はそう言いながらも、裕司の指示に従い、5番ジェネレーターの確認に向かった。


 二人で手分けして確認作業をはじめた。そして数分後、光が原因を突き止めた。


「裕司さん!4番が止まってます!」

光が大声で裕司に叫ぶ。


「よし!じゃあ、6番回して、5番の分をつなげろ!」

 裕司は即座に端的に指示を出す。

「わかりました!」 

 光は裕司の意図を汲み取り、すぐに6番ジェネレーターを起動し、5番ジェネレーターにつながっているいくつかのコードを6番ジェネレーターに移し替えた。すると、巨大なフィンはゆっくりと動き出した。


「ふう、何とかなったか。」

 裕司はそう言うと、光を手招きして呼んだ。


「とりあえずはこれで大丈夫そうですね!にしても暑いな~。」

やってきた光はバンダナで汗をぬぐっている。


「仕方ねぇだろ。フィンが止まってたんだからよ。それよりも、4番どうだった?」

 そういう裕司もバンダナで汗をぬぐっている。 


「あれは燃料切れですね。」


「・・・ああ。そろそろだとは思っていたんだが、予想より早かったな・・・。予備には少ししか燃料が入ってねぇ。俺は今から黎のところに行ってくる。あとの点検だが、任せるぞ!」

 なにか不安そうな表情を浮かべると、あとのことを光に託し、裕司は入ってきた扉とは反対方向の扉に向かって駆け出していく。


「ええっ!?この状況で一人でですか!?・・・あとで絶対話聞かせてもらいますからね!」

 裕司は光の言葉を無視して・・・というよりそんな余裕などないような様子で扉を開けて出ていった。


「もう!やればいいんでしょ!やれば!」

 光はそう大声で叫んだが、その言葉は筒状の空間にむなしく反響するだけだった。

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