◇俊也◇ 睡魔と疑問
今回はだいぶ短いです。第6部分に入れ忘れていた内容です。
黎が医務室から出ると、ドアの横である男が座り込んでいた。
「盗み聞きとは全く趣味が悪い・・・。」
黎は小声でそう呟きながら、廊下を進んでいく。
「ふん。」
男は黎に対して鼻で笑うと、静かに目を閉じた。
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一方、医務室では・・・
「ごめんね。俊也くん。嫌な思いさせちゃって。黎さんは悪い人じゃないんだけどね。ちょっと変わっててね~。」
結子は申し訳なさそうに言う。
「いえいえ、怪しまれて当然ですし、仕方ないですよ。」
(悪い人かどうかは置いといて、ずいぶんぶっ飛んだ人ではあるな・・・。元からなのかそれとも・・・。)
「最初は私もちょっと怪しんでたけど・・・。というか髪喰いだったって言ったときはどうしようかと思ったけど、まぁ、今は少し安心したかな。どう見ても普通の子だし。」
誉め言葉とは思えない「普通の子」という言葉が今の俊也のにはとてもありがたい言葉だと感じた。
「あっ!それよりも早く食べて休んで!怪我人なんだから!」
そういうと、結子は立ち上がり、先ほどの椅子にまた腰掛けた。お粥はすでにだいぶ冷たくなっていたが、それを一気に流し込み・・・
「ゆっくり食べなきゃだめでしょ!もう!」
・・・完食した。
「ごちそうさまでした。おいしかったです。」
「じゃあ食器はそこに置いといて~。あとで片づけるから。」
「わかりました。ではお言葉に甘えます。」
そうして俊也はベッドに横になった。おなか一杯とはいかないが、十分な食事をとったことで、また睡魔が襲ってくる。そのとき俊也はふと思った。
(そういえば、あの夢は何だったんだろう。助けを求めた少女は?『ユナ』とは誰なんだろう?それに、黎って人と結子さんの関係ってどんな関係なんだろう。創設者っていってたよな?あ~、あと『髪隠し』っていうこの施設・・・。どれくらいの規模なんだろう。普通に部屋に明かりがついていて、結子さんの前にはパソコンがあるけど・・・どうやって電力をまかなってるんだろう。)
様々な疑問が脳裏に沸き上がったが・・・。
(まぁ、何にしろベッドで快適に眠れるのはずいぶん久しぶりだ。また起きたら結子さんにでも聞いてみよう。)
そうして、また俊也は眠りについた。