◇俊也◇ 空腹と優男
ずっと放置してきた(約3年・・・)のですが、既出の部分を改編しながら、また完結目指して頑張ってみたいと思います。第7部までは設定からなにから変更する予定です。(2021/1/5までには改編を終わらせます。)
ただでさえ、空腹で倒れそうなのに、俊也の目の前の優男は話をやめる気配がない・・・。
ただ、ここが避難所なのかどうか知りたいだけなのに。
「西暦2030年7月28日『日本列島超連鎖型大噴火』。日本のあらゆる火山が一斉に噴火し、多くの死傷者を出した大事件…。日本中に火山弾や灰が降り注ぎ、大都市ではインフラが完全に停止し、日本中が大混乱に陥った。政府は非常事態宣言を発令し、近隣諸国の援助を要請、事態の収拾を図るが、突如発生した奇病により復興政策は頓挫した。そして・・・通称『髪喰い』。それと同時に起こった奇病そのもの、あるいは感染者を指す言葉だ。症状としては・・・狂暴性が増し、伸縮自在な髪で人や建物を破壊する。また、『髪喰い』は人間の髪から髪へと感染する。幸いなことに感染方法はこれだけだ。ただ、やっかいなのは治療法がないってことだ。」
「おい!治療法はあるかもしれないだろ!」
少し離れたところから、煙草をふかしながら今まで黙って聞いていた中年の男が横槍を入れた。
「・・・はぁ~・・・。」
優男はためいきをつき、中年の男の言葉を無視して続ける。
「失礼、続ける…。治療法はないが、予防法はある。それは君も知っているね?」
「・・・ええ。『剃髪令』のことですよね?」
俊也は空腹を我慢しながらも、丁寧に答える。
「その通り。」
満面の笑みだ。もう一度言う。満面の笑みだ。
「剃髪令により、この通りみんな髪の毛を剃っている。男女問わずね。まあ、そんなことしなくてもハナから髪がない人間もいるがね。」
優男の唇は小刻みに震えている。
(自分で言って、笑うのを我慢している?こいつは何なんだ?こっちは喉も渇き、腹も減ってそれどころじゃないってのに・・・。)
「これまた失礼・・・。え~っと・・・。そうそう!剃髪令!国は剃髪令を出して、感染を止めようとした。結果、感染者の増加は止まった。が、髪のない人間は彼らにとって価値がないんだろう。攻撃対象とされてしまった。そもそも髪喰いは日本の人口の3分の2が感染しているといわれている。わかるね?相手は硬質化した髪を武器に破壊の限りを尽くす化け物。生身の人間が勝てるわけない。」
「ええ・・・。それはなんとなくわかります。」
(『髪喰い』は道中、何人か見かけた。さらに多くの死体も・・・。だがそれよりも今は丸3日間何も飲み食いしていない。今の俺にとってはどうでもいい話だ。)
「よろしい。では、君に最後の質問をしよう。剃髪令が出され、髪喰いが徘徊する世界にあって、髪をはやした来訪者が来たら・・・君はどう対応する?」
優男は笑みを浮かべ近づいてくる。が、その目の奥は憎しみの炎が燃え上がっているように見えた。
「バチっ!!」
瞬間、俊也の首元に電気が走った・・・。彼は糸の切れた人形のようにその場に力なく倒れ込んだ。そして朦朧とする意識の中、数人の男たちの荒々しい声が聞こえてきた。何を言い合っているかは聞こえなかったが、煙草の匂いが近づいてくるのがわかり・・・。そのまま意識を失ってしまった。
誤字脱字が多いとは思いますが、ご容赦ください。また、ご指摘いただけるとありがたいです。エンディングまで構想はできているので、なんとか完結目指してがんばってみたいと思います。