第2話[ 街を見つけた? ]
夢じゃないと思うとお腹が痛くなってきた。
不安で体が動かなくなる。
いや・・・夢じゃないわけないよな。
ずっと憧れてた異世界転生がこんななんてありえないって。
考えても無駄だし、とりあえず街まで行くことにした。
空腹で死にそうだ。
それから2,3時間は歩いたと思う。
空腹感もあんまり気にならなくなってきた。
人って慣れるもんだな。
!!!!!
見つけた!やっと見つけた!
ただ街というよりも村という方が近いかもしれない。
数十の家が視界にギリギリ収まるくらいにある。
この際なんでもいい。物資を調達しないと。
安心した途端急にお腹が空いてきた。
取り敢えず一番近い家から漁ることにする。
家の中には思いの外沢山の食料があった。木箱の中にじゃがいもみたいなやつとか、変な形した冷蔵庫にはパンっぽいものが入っていた。
さて、お腹が空いてたまらないので、調理しなくてもすぐに食べられそうなパンみたいなやつを食べてみることにした。
うーんまずい。
パサパサしているしなんか臭い。背に腹は代えられないか。
食事を終えてからは装備を整えることにした。
目に留まったバッグとナイフとタオルもとっておく。
剣とかはないみたいだ。農民の家だからかな?
冒険が始まる感じがしてワクワクしてくる。
十分な資材も整っているし、ここを第一拠点にしようかな。
「お前誰だ!」
え。
気づいたら殴られて僕は倒れていた。
考える暇なんてなかった。
驚きと痛みで頭が真っ白になる。
どうしてこうなった?
どうしてこうなった?
ここは夢じゃないのか?
息が苦しくなる。
僕は悪いことをしたのか?
何かを言わないと。何か言わないと。
「こいつッ!こいつッ!」
ずっと殴られている。痛くてたまらない。
だからといって弁明の言葉も浮かばない。
こういう時なんて言えばいいんだ。
人と会っていなかったからわからない。
ガチャ。
「母さん出てこなくて大丈夫だよ!こいつは俺が!!」
もう一人大人の女性が出てきた。
この子の母親だろうか。
「大丈夫だから、あなたはさがっていなさい。」
「すみません、どこのお方かは存じ上げませんが、出ていってくださいますか?」
「母さんなんでだよ!こいつ泥棒だよ!?」
「貴族様に手を出しちゃいけないの...サウロさんがどうなったか覚えているでしょう...?」
「すみませんでした。」
いい言葉が何も出てこない。
「...差し上げますのでどうか、私達に何もしないでください。」
受け取ってもらえなかった。
この場から抜け出したい一心でそのまま家を出て街の外れまで逃げた。
怖い目だった。さっきの出来事が何度もフラッシュバックする。
僕は堪らず誰かの家の裏でうずくまった。
「どなた様ですか?」
「高貴なお方でしょう?」
少し年をとったおばさんに話しかけられた。
一人になりたいのに。
琉真はどんなときも辛いことから無意識に逃げてしまいます。
現実が辛くなったからファンタジーの世界に行きたかったのです。
その世界でさえ辛いことだらけだった時、彼はどこに逃げるのでしょうか。
次回はおばさんとの出会いを描きます。琉真はコミュニケーションが取れるでしょうか。