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勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 一話「小鳥遊華蓮」

こんにちは、含水茶吹です。

今回は思いっきり地の文による説明と伏線回です。

拙い文章ですが最後まで読んでいただけるとありがたいです。

  0


 俺こと、三滝兼政は少女と出会い、彼女を守るために突然現れた男に銃で撃たれて倒れた。


  1


 ピ、ピ、ピ、ピ、ピ…。

 電子音が耳に響く。

 朦朧とする意識の中、目を薄く開けるとぼやけた視界に白い服の人々が俺を囲んで…、

 そして、また俺の意識が途切れる。


  2


 そして、再び目を開いたのは意識が途絶え、目を覚ました時だった。

 俺はうつ伏せに寝ころがり、口元には人工呼吸器のようなものが取り付けられていた。

 天井は白く。首だけを動かして辺りを見回せば、心電図と点滴が二本吊るされていた。

 点滴から伸びるチューブは俺の右腕の肘の内側の血管に繋がっていた。

 そこで、俺は思い出す。

 俺は見覚えのない路地で少女に出会ったことを。

 俺はそこで拳銃を持った男に背中を撃たれたことを。

 少女はどこにいるんだ。

 何よりも先に俺は、彼女を探した。

 首を動かして見回す程度じゃいけない、体を起こして探すべきだ。

 そう考え身体を起こした時、

 「んぐぅッ…!?」

 背中に尋常ではない痛みが走り、またうつ伏せの体勢に戻る。

 そうだった。

 俺は背中を拳銃で。

 それは確かに痛いだろう。

 だが、それでも、俺は痛みを堪え、身体を起こす。

 そして、立ち上がる。

 意外なことに姿勢さえ、一定に保てば起き上がるときよりも痛みは少なかった。

 歩くことはたいして難しくなかった。

 確かに多少の振動だけで、背中の痛みが激しくなるが我慢できないほどではない。

 俺は点滴スタンドを杖代わりにして、それに縋るように体重を掛け、病室の外へと出た。

 そして、病室を出てすぐ、俺は呼び止められる。

 なんとも軽そうな言い方で、呼び止められる。

 「意識戻ったんですね。でも、お探しの方ならここにいませんよ」

 その声の主へと目を向けると。

 色褪せた黒いスーツを崩してきている、見た目二十歳前半の男性がそこに飄々とした態度で立っていたのだった。

 そして、その男性は俺に目を向け言った。

 「初めまして、『再生者リプレイヤーによる犯罪対策課』本部課長、反田一たんだ はじめです。少しお話があるので、一旦、病室に戻って下さい。そこで話しましょう。」

 反田一と名乗った男性はそこのない作り笑いを浮かべ、浅く頭を下げた。


  3


 再び病室の場所は移り、俺は反田さんの話とやらを聞くことにした。

 「まず、この度は私共の部下が誤認であなたに発砲したこと、および、それによる傷害について、心よりお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。」

 まず、反田さんの第一声は、心がこもった謝罪の言葉だった。

 深々と頭を下げ、見えなくてもその表情はとても申し訳なさそうな表情をしている気がした。

 だが、俺は何も言うことは出来なかった。

 なぜなら、拗ねてが理解できない間に始まり、勝手に進んで言った挙句、一区切り付いてしまっているのだから。

 何が悪くて、何がいいのか。

 何が問題で、何がどうされているのか。

 それすらも、わからない。

 だから、俺は何も言う事も、反応することすらも出来ない。

 ただ唖然と、今ある景色を眺めるだけだった。

 そんな僕を見兼ねてなのか否か。

 反田さんは頭を上げ、俺にこんなことを言った。

 「…、実はあなたのお探しの少女の事なんですが、この階のホールであなたを待っているんです。本当は少女の方をこちらに連れていく予定でしたが、話をしようにも全く入っていない様子でしたので。どうですか?」

 それは、俺が話の理解をさせるためのちょっとした箸休めのような提案だった。

 いきなり謝罪をさえれても訳が分からないだろうと、一旦、この話を有耶無耶にしておいて日を改めようという考えなのだろう。

 そんな作戦だが、俺はその作戦がただの反田さんの善意としてしか感じられなくなっていた。

 俺はそれほどまで、事態に頭が追いつけてなく、何かにすがっていたかった。

 そして、少女に言いたかった。

 『守れなくて、ごめん』、と。

 酷い事はしないと言ったのに、俺は先に倒れ、彼女を一人にしてしまった。

 見た目からして十一歳か十二歳くらいだろう。

 その年だったら、いや、その年じゃなくてもだ。

 一人取り残されるのはとてもつらい事だろう。

 それは、取り残される辛さは俺が一番『知っている』。

 だから、俺は頷いた。

 「出来るのであれば…、お願いします」


  4


 「…お兄さん?」

 俺が少女の元にやっとの思いで辿り着き、彼女が俺を見ての第一声がこれだった。

 お兄さんという呼ばれ方は少しむず痒いモノを感じたが、それよりも、彼女に言いたかったことを伝える。

 「…ゴメン、約束守れなくって…」

 俺は頭を下げることもできない身体に嫌気が差しながらも、ただその言葉を繰り返した。

 勝手に約束と思い込んでしまっていたものだが、意外にもそうではなかった。

 「ううん、お兄さんは悪くないよ。だって、僕の事、助けてくれたもん」

 そう言って、彼女は俺に近付き、年相応の笑顔で、

 「ありがとう、お兄さん」

 と、言った。

 その時、俺は救われた。

 短い時間だったが、俺のことを信じてくれたことを。

 彼女が俺を『信じていい人間』だと認めてくれたことを。

 わかったから、俺は救われた。

 「…えーと、水を差すようですが、あの、チョットした手続きをしていただけませんか?」

 と、申し訳なさそうに、反田さんを俺たちに話しかける。

 「え、あ、す、すみません。で、その、手続きって何ですか?」

 俺は疑問に思い、質問する。

 それに反田さんは飄々とした口調で答える。

 「えぇ、簡単なものですよ。私たちが原因でこうなってしまったんですから、家庭と、おそらく学生でしょうから、所属の学校に連絡するために個人データを少しだけ」

 そういって、にこりと反田さんは笑った。

 作り笑いなのか本当に笑っているのかわからない底の見えない不気味な笑顔で。


  5


 一日が過ぎた。

 時間が過ぎるのは早いものだった。

 昨晩、病院で手続きという、書類の記入作業を終え、その後、俺の元に両親から連絡があった。ついでに高校の担任と学校の方からも連絡があった。

 現在、俺はと言うと、まだ入院していた。

 いくら、命に別状はなかったといえど、拳銃で撃たれ、肋骨にのめり込み、そこにひびが入るという大怪我を負った。

 銃弾は手術で取り出されたというのも、今、聞いても背筋に寒気が走る。

 そんな大怪我を負った俺はもう少し入院すべきと医者に言われた。

 はずなのだが、何がどうしてか、寝て覚めると骨のヒビはすっかり治り、今日の午後の検診で異常がなければ即退院になるらしい。

 そんなこんなで、その検診まで、暇を持て余している俺の病室に、あの少女がやってきた。

 「お兄ちゃん、大丈夫?」

 「あぁ、大丈夫だよ」

 「あのね、昨日おじさんがこれ渡してって」

 そういいながら、少女はずっとその手に持っていたであろう手紙を俺にに渡してくれた。

 

  6


 『こんにちは、三滝兼政君。

 昨日、書いて貰った書類で名前を覚えさせてもらいましたが、また会う時にちゃんとした自己紹介をしましょう。

 それはさておき、まず謝罪の言葉を。

 先日、私共の失態により、貴方に障害を加えたこと、重ね重ねお詫び申し上げます。

 任務の誤認により、貴方を撃ってしまった私の部下を無期限の謹慎処分、そして、私はその責任を取るため、今の立場から一つ降格します。そして、貴方の怪我の治療の促進。

 私共に出来る現在の謝罪の意はこれが精一杯表明であり、これ以上、何もできない事を残念い思います。

 それでは本題に入るとしましょう。

 まずこの話に入る前に、これだけは述べておきます。

 私達の組織は政府直轄の極秘組織であること。

 私達の表の顔は警察の特別捜査班であること。

 これから話すことはすべて事実であり、現在起こっていることで貴方の身の回りに関わるであろうという事こと。

 この三つを頭に入れてこれを読んでいたいだきたいと思います。

 本題は二つあります。

 まず一つ目はあなたの現状についてです。

 あなたの周りには事件にまきこまれたと連絡しました。

 その口裏合わせのカンペのような物ですが、貴方の周囲には「貴方が現在捜査中の犯罪グループに捕まり、それを知らなかった部下がその構成員と勘違いし発砲してしまった」という事にしてあります。

 そして、貴方が気に掛ける少女については「その時ともに誘拐された身寄りのない少女」という事になって居ますが、現在、貴方の両親がその少女を家族が見つかるまで預かりたいと申し出がありましたのでそういう事にしました。

 我々も些細なことながら、色々と手伝わせていただきます。

 なんせ、ご両親との連絡で「兼政君は一人で女の子くらい面倒見れると思うからこのまま出張行くからね」と伝言を預かってしましましたので。

 では、二つ目です。

 これについては極秘事項なので他言無用という事でお願いします。

 今、恐らく貴方の目の前にいる少女がこの手紙を届けてくれているでしょう。

 彼女は人間ではありません。

 厳密に言えば、一度死んで再び不思議な力を持って甦った人間です。

 それについてはここでは細かく説明することはできませんが、私たちは彼らのことを再び生きるものという意味を込め、「再生者リプレイヤー」と呼んでいます。

 彼等は二年前の冬頃から遭遇報告があり、そこから一年後の冬頃から彼らによる犯罪が発生し、現在ではその件数も増え、ここ日本でも専門の部隊を創設しなければならない状態になり、私がトップに立つ「再生者による犯罪対策課」が作られました。

 貴方に危害を加えたあの日、私たちは犯罪を起こした再生者を追っていました。

 そして、その犯罪者とあなたの体格が近かった所為で貴方が狙われてしまったという事です。

 これ以上の細かい話は手紙など残るような物には記せません。

 ですので、検査が終わり帰る際、一つ目の話で言った些細な手伝いの一環で貴方達の身の回りの補助役として私の部下を配属しておきましたので、その人から話を伺っておいてください。

 ついでに言いますと、病院の前で部下の車が停まってあるはずなので、帰りはそれを利用してください。

 では、また会えることを願って。』


  7


 文面を読み終わり俺は粗方のことは理解した。

 さすがについてこれない事ばかりが書いてあったが要は俺は変なことに巻き込まれてしまったらしい。

 そして、何よりも、今目の前にいる彼女が『人間ではない事』が受け入れられない。

 理解をしても受け入れられない。

 だから、受け入れるのは後回しにした。

 彼女が人間ではないことは一旦、忘れる。

 俺は少女にふと、思い出したことを話す。

 「そういえば、自己紹介してなかったな。俺の名前は三滝兼政だ。君の名前は?」

 話というよりは質問と言った方が良い俺の問い掛けに少女は答える。

 「僕の名前はかれん、小鳥遊華蓮たかなし かれん。カネマサお兄ちゃん、は華蓮て呼んで」

 「わかったよ。俺の事も兼政だけでいいよ。お兄ちゃん呼びはちょっと嫌だから」

 そう言って、俺たちは、目線を合わせて、握手を交わした。

 「よろしくな華蓮」

 「うん、カネマサ」

 これが僕たちの出会いであり、これから全ては始まった。

こんにちは、含水茶吹です。

やっと、ヒロインの名前が出てきました。

そして、この作品のキーワード『再生者』の存在が明るみになってきました。

次回はまた新キャラを加え、リプレイヤーについてのことを説明する説明回になります。

後できれば、三話はギャグを入れたいなと考えていますが、二話が出来てからのお楽しみです。

次回の投稿はおそらく、来月になると思いますが、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

 では、次回お会いいたしましょう。

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