勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 零話 「出会い」
初めまして、含水茶吹です。
初投稿です。
拙い文章力と語彙力が目立ち、お見苦しい点が御座いますがどうか最後まで読んで、感想や印象が持てていただければ幸いです。
プロローグ
人間は個が弱い生き物だ。
すぐ、その本分を見失う。
唯一、個として識別するためのアイテムである『名前』ですらもすぐ変えることのできてしまう物なのである。
それでは人間は何を本分を見失うことの無いようにするための指針にすればよいのだろうか。
そもそも、人間の本分とは何なのだろうか。
それすらもわからないとなると、滑稽な話であるのだが、どうしても我々、人間には大きな課題が課されているのである。
生物としては種を増やし、繁栄させることに本来の姿があるのだが、唯一、感情がある人間にはもう一つ、姿があることを忘れているのだ。
感情がある故に、それを持て余すが故に、命が有限だと知るが故に、死を恐れるが故に、死後のことを考えれるが故に。
だから、思い出さなくてはいけない。
本来の姿を、人間としての姿を。
それが人間に課された課題なのである。
課題という言葉を使ったのはそれをもうクリアした人間がいるからだ。
人はそれを英雄やら、ヒーローやら、勇者と呼んでいる。
彼らの出した答えはそれぞれ違う。
形も出し方も人それぞれだ。
人を殺すことによって出す人もいれば、人を救うことによって出す人もいる。
そして、彼らは一つの答えにたどり着く。
それは救ったモノと切り捨てたモノの矛盾による絶望なのだ。
そして、ここから始まる物語は一人の少年が一つの少女と出会い、その絶望に辿り着くだけの簡単な話だ。
一人は何かを捨てる選択をし、一つは水に映る月を取ろうとするかの如く無謀を働き、一人と一つは絶望のムコウへと行こうとする、そんな物語だ。
絶望をして、人間の本来の姿を見る、いや、その本来の姿になる、そういう結末が待っている、始まりと終わりが決まった物語である。
一章 安価な命と再生
零話 出会い
1
西暦20××年、四月三日。
その日はとても寒かった。
そんな日の夜、俺、三滝兼政は街を歩いていた。
時刻は八時二十分を指し示す。
ただ目的もなく街をぶらつくという、計画性など皆無な行動に興が乗ってしまったせいでこの時刻に至ってしまった。
今から帰るにしてはここから家まで相当距離がある。
まぁ、徒歩で帰れる距離なのだが。
しかし、さすがに夕飯を食べないで徒歩で帰るにしては少しキツイ距離な訳でもあり。
仕方なく、ファミレスかなんかで済ませようかと行動を移した。
俺の両親は少し変わっていて、高校生という微妙な年代にいることもそうさせているか否かを不明だが、子供について何も口を出さないという方針を取っているらしく、門限などもなく、そもそも、帰宅時間について何も言われたことが無い。
それに両親自体、家に居ることがほとんどなく、大体、仕事でどちらも基本的に家にはいない。
そんなこともあり、俺は家に帰るという考えがあまり無いのである。
だから、街をぶらつくという行動もちょっとした乗りで出来てしまう訳だが。
それはさておき、目当てのファミレスらしき店は見当たらず、俺は気付けば小さな路地にいた。
その路地は薄暗く、シャッターの閉まった店のような建造物が立ち並んでいた。
やはり景色が寂れているせいなのか、そうだからこう寂れているのか、その路地には人気が一切なかった。
しかし、俺はその路地に引き寄せられる。
自分の身体がそうしたいと脳に命令を与えさせているかのように、俺の足はその路地の先へと歩く。
歩いて少し経った。
そこで俺はあるモノを見つける。
それは一つの大きな塊。
人にも見えなくもないその塊は小さく不自然な動きをしていた。
それこそ、先ほどに言った人のように。
俺はそこに近付く。
そこには黒い、いや、汚れて黒みががった白い毛布のようなものに包まった子供だった。
黒く、まともに洗っていないようなぼさぼさと下長い髪、毛布のようなものの隙間から見える、白いと言えども限度を越している肌、そして、小さく漏れるように聞こえる高い吐息交じりの声。
それらで、この子供が少女だという事が分かった。
しかし、蹲っていいて、実際の身長などは定かではないが、おそらく百十~二十センチメートルほどの身長だろう。
そんな小さな少女がどうして、こんな時間にそれもそんあ状態でこんなところにいるのだろうか。
そもそも、そういう家庭があるだろうか。
いやそういう家庭があったとしても、外を巡回する警官やそれなりに常識のある善人、偽善者辺りが行動を起こすはずだ。
そして、黒い毛布のようなものはともかくとして、その隙間から見える肩や足を見ると、長袖やら、長ズボンやらと言ったものを吐いている様子には見えない上に、靴下や靴すらも履いていない。
いくら少し暖かくなり始めたと言えど、四月の上旬。
春が始まったと入っても、まだまだ冬と変わらない服装でも良いくらいの気温のはずだ。
なのに、この少女はそんあ服装どころか、夏に家でするような恰好をしているように見える。
そんな彼女を見て俺は違和感に似た何かを覚え、
「…ねぇ、そんなところで何をしてるんだい?」
そう、優しく話し掛けた。
その声に俺が彼女の眼の前にいることにきずいたのか、少女は驚いたように顔を上げ、震えていた。
そして、小さな声で、彼女は呟く。
「…ごめんなさい、ごめんなさい、僕が悪いです、女の子に生まれたから、お父さんが僕のことが好きじゃなかったから、生まれたから、悪いんです、僕が、ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい…………………」
その言葉を繰り返す。
その言葉の連続は、呟きなどではなく、自分を守る呪文の様な、相手に向かって確かに言っている言葉だった。
そして、少女は言った。
「お願いだから…叩かないでぇ…」
自分の頭を守るような仕草をしながら今にも泣き出しそうな、恐怖に震える声で、その少女は言った。
その時、俺はなんとなく察した。
この少女は親かそれ以外の親せきからか、どちらにせよ、家庭内での理不尽極まりない暴力を受けているのだろうということを。
だから、ソレに同情した。
俺はしゃがみ込み、少女と同じ目線になって言う。
「酷い事はしないよ、俺は。叩かないし、君が悪いなんて、絶対に言わない」
そういって、少女の肩に両手を優しく置く。
そんな俺をキョトンとした表情で見て、少女は終えれに問い掛ける。
「…本当に…、酷い事しない…?」
その問いに俺は間など開けずに答える。
「あぁ、俺は絶対に酷い事はしない」
だから、と俺は言葉を繋ぐ。
「一旦、家においでよ」
そう言って頭を撫でた。
少女はじっと俺の顔を見ていた。
怖がっているような、驚いているような、どちらとも言えない表情で。
だが―――、
その小さい体からは震えが消えていた。
そして、少女は言う。
「うん」
その声は先程とは違った。
泣き出しそうな声でも、恐怖で震えた声でもなかった。
安堵と戸惑いの声だった。
そして、彼女の目にはただ期待だけが宿っていた。
2
彼女が俺の家に来るという事になり、その場から彼女を立ち上がらせると、案の定、まともに服を着てはいなかった。
黒い毛布のようなものの下には下着と言っても差し支えがないような物しか来ておらず
毛布で隠されていた部分にはところどころ傷痕の様なものが見えた。
俺はソレをできるだけ見ないように、彼女の手を引き歩き出した、その時。
パン。
と、渇いた音と、
キン。
と、鉄と地面のアスファルトが勢いよくぶつかる音が耳に付いた。
足元を見ると、まるで銃弾のような形の物が転がっていた。
いや、『ような』ではなかった。
銃弾そのものだった。
俺はこの事態を理解できずに唖然としながら、その銃弾が飛んできたであろう方向を見ると。
そこには、一人の男が何かを構えて、立っていた。
冷たい月明かりに照らされ、黒く、そして鈍く反射する、それは、拳銃だった。
俺は十なんかに詳しい訳でもなく、そもそも興味などない人間だが、ただ二つだけわかった。
一つは、俺、またはこの少女が狙われていると言う事。
そして、二つ目は、相手は確実に殺す気でいるという事だけだ。
銃口の角度、そして相手から発される、腹に重しを乗っけるような殺気。
それだけで分かった。
だから、俺は少女を抱え一目散に男がいる方向から逃げる。
それと同時に数発の銃声が聞こえた。
それとほぼ同時に、俺の周りの物から火花やかけらが散る。
ふと、ある事を俺は思い出す。
それは拳銃は秒速二百メートル台から四百メートル台の間の速度で射程が基本的に五十メートル前後だという事だ。
要は、男から五十メートル以上、少なくとも百メートル離れれば、何とかなるという事だ。
もっと簡単に言えば、『逃げるが勝ち』という事になる。
自慢ではないが走ることにおいては、ちょっとした自信があるのだが。
だが、少女を抱えながら走るとなれば状況は変わってくる。
それでも、ここはやらなければならない。
くだらない約束をしてしまったと思う。
酷い事をしないと。
そんな曖昧模糊な内容の約束をしてしまったことを少し後悔するが。
子供には、嘘はつけないだろう。
俺は、全力で、持てる全てを、懸けて、走る。
そして、そして、そして。
パン。
その銃声が聞こえた時。
俺に背中に冷たい物がのめり込んだ感触と、肉と欠陥がねじ切れる痛みと、骨が削られる痛みがナイフに突き刺さる。
その痛みと衝撃で体勢を崩し地面が近づく。
俺は、少女に怪我をさせない為に倒れる身体を反転させ、少女と地面の間のクッションになるのが精一杯だった。
そして、倒れた。
その時、俺は打たれたと理解した。
霞む意識の中、すぐそこまで近づいていた男の声だけが耳に入った。
「任務失敗」と。
初めまして、含水茶吹です。
自身のことをペンネームで呼ぶのは少し恥ずかしいです。
それはそうと、初投稿作品という事で緊張しながら投稿したのですが、どう感想を持っていただけたでしょうか?
僕自身、あまり小説と言うのを書いたことが無く、これ、読んでくれるのだろうかと心配になっていました。
しかし、とても楽しくかけた作品なので自信のあるなしは置いておくとして、読んで記憶の片隅にでも止めてほしいです。
初投稿から連載と言う、訳の分からないことをしているわけですが、そういうのってどうなんでしょうかね。
あと、この拙いを通り越し酷さを匂わせる小説がどこまで真っ当なモノに進歩できるか、そういう挑戦としてこういう形をとってるので、最後までお付き合いをお願いしたいと思います。
なんかとても自由に書かせていただきましたが、次回はいつ投稿するか全く決めていませんが、読んでくれるととてもうれしいです。
ではまた、次回に会えることを願いまして、ここでペンを置かせてもらいます。
追記:2016年10月18日に改稿版に変更いたしました。
文章量は圧倒的に減りましたが、もう伏線は出てるんですよ。