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《万物名工(マテリアルクラフト)》〜戦いたくないでござる〜



「ううむ………むむむ………」


「(なんか眉間にシワ寄せてるけど如何したんだろう……トイレかな?)」



互いの心情がすれ違うまま、時間ばかりが過ぎていく。

しかし、ファント・ガーフィールドには民と国をあらゆる厄災から守護する使命があるのだ。

不確定要素しか無い吾妻秀吾の危険度を見定め、それがかつての『魔王』の再来と呼べるものであるのならば、自身の命に替えてでもその報を主ーーーーー『勇者』ミルシィ・スターライトに伝えなければならない。



「(そういや、家建てるのが違法じゃないのなら、なんでこの人俺の小屋に訪ねてきたんだろう?)」



「ーーーーーーアヅマ殿、貴殿は…………。」


「あっ、はい?」




ファント・ガーフィールドがなにか言いかけた、その時だったーーーーーーーーー



「ぎゃあああああああああっ!?」



「「 「………!?」」」



ーーーーーーーー外に待機させていたファント・ガーフィールドの部下の叫び声が響き渡る。

ファント・ガーフィールドとその背後に控えていた二人の兵士は一瞬互いに顔を向き合わせると、キョトンとしている吾妻秀吾を他所に小屋から飛び出した。



「え?え?何事?何事?」


『魔物です、それもカテゴリーランクA+に相当する大型モンスターが、ファント・ガーフィールドが外に待機させていた小隊、47名を攻撃しています。』


「………えっ?」



状況を飲み込めない吾妻秀吾に代わり、アシストスキル《異界読本》はそう彼に伝える。

吾妻秀吾は恐る恐るガラス代わりに格子をはめ込んだ窓から、外の様子を覗き込んでみた。





其処には、地獄絵図が広がっていた。ーーーーーーーーーー





ーーーーーーーーーー◯ーーーーーーーーーー







ーーーーーーーーーー『ドラゴン/竜種》』


魔物の中でも特に強大な膂力と魔力を携えた存在。

その咆哮は大地を揺らし、その羽ばたきは雲を蹴散らす。


二年前、『魔王』を名乗る存在がそれを使役し、人類に大きな打撃をもたらした神話に生きる魔物の王。

神とも呼ばれ、災害とも呼ばれしもの。


その様な存在が今、ファント・ガーフィールドの眼前に顕現していた。

ファント・ガーフィールドはギョッっと目を見開きながらも、背中に携える三又槍を握りしめる。



「ーーーーーー『泥土竜(スワンプ・ドラゴン)』………!?………否、泥土竜程度ならば私のアシストスキル《剣豪領域(ソードテリトリー)》の探知を潜り抜けられるはずは無い……………つまり…………!」



ファント・ガーフィールドが鋭い眼光でドラゴンと対峙する。

そのドラゴンは、全身を覆っているのだろう鱗の上に、分厚い泥の鎧を身に纏っている。

さらにその周囲には、透明な水のヴェールが絶え間なく周回し、そこから枝分かれした水の鞭が、ファント・ガーフィールドの部下達を容赦なくなぎ払っていた。



「グ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ッ ! ! !」



ファント・ガーフィールドをその視界に捉えた泥土にまみれたその竜は、桁足しい雄叫びを上げて彼を威嚇する。

ファント・ガーフィールドは身じろぎ一つせず、周囲の生き残りの部下達に檄を飛ばした。


「奴は恐らく冒険者ギルドカテゴリーランクA以上の上位存在だ、私が前に出るッ!!動ける者は負傷者の救護を最優先!!今の雄叫びで恐慌状態にならなかった者は私の援護に回れ!!」



その言葉とほぼ同時に、彼の背後に白いローブを纏った複数の人物が示し合わせたかのように配置に着く。

彼等は滑らせるように幾つかの力の宿る言葉を紡ぎ、手に握られた杖を振りかざした。


「《身体強化・中級(フィジカルアップ)》っ!」

「《魔力耐性・(ウォーターレジスト)》っ!」

「《攻性付与(アタックブースト)魔種(アンチモンスター)》っ!」



彼らが杖から放った淡い光はファント・ガーフィールドの身体を包み込み、彼の放つオーラに似たエネルギーをさらに高めた。





ドラゴンは他の兵士や魔術師に目もくれず、ファント・ガーフィールドに向けて先程兵達に放っていたモノとは比べ物にならないほどの巨大な水の鞭を放つ。

ファント・ガーフィールドは迫る水の鞭に向け、己の名を冠する三又槍を向け、叫ぶ。



「うおおおおおおおおお!!《三重異能(トライデントスキル)》!!!」




彼がそう言いながら放った槍の切っ先は、凄まじい轟音と稲妻を撒き散らしながら水の鞭を容易く引き裂き、数十m離れているはずのドラゴンの右の翼を、その余波で引き千切った。




ーーーーーーーーアシストスキル《三重異能(トライデントスキル))》

このスキルの効果は端的に言うと、『三種類のスキルを同時に発動するスキル』である。

そう聞くと地味に聞こえるかもしれないが、実はこの世界のスキルには、『一度に使用できるスキルは一つまで』というルールが存在する。

つまり、何個強力なスキルを所持していたとしても、そのスキルを切り替える際は、使用中のスキルを一旦解除しなければならないのだ。

その点においては、魔力を消費するものの複数同時展開も可能な『魔法』とは見事に住み分けができていると言える。






ーーーーーーーーーしかし、『例外』も存在する。

境界王(エリアキング)』の加護を受け、世界の法則を覆す資格を得た『勇者』、種族特性として生来、スキルを所持して生まれ出でる『魔人種』、そして悍ましき力で法則を捻じ曲げる『魔王』





ーーーーーーーーそして彼、アシストスキル《三重異能》を所持するファント・ガーフィールドもまた、彼らと同じくスキルを同時使用できる異質な存在なのであった。



「ぬうううううううんっ!」


彼は更に槍を握る手に力を込めて、ドラゴンの爪や牙の届かぬ中距離から、嵐の様な連続攻撃を浴びせ続ける。



アシストスキル《剣豪領域(ソードテリトリー)

射程距離半径50mの広範囲探知と、その円周内ならば遮蔽物がない限り攻撃射程を無視できる効果。


アタックスキル《天空王之加護(スカイジアアーツ)

発動中に限り、全ての攻撃に防御無視、障壁無効化、魔法効果破壊の追加効果を付与する効果。


ディフェンススキル《封魔監獄(プリズンエナジー)

一度だけに限り、魔法を自身が所持する武器の中に封じることが出来、さらに任意で解放することもできる効果。(※因みに現在は同僚のチェリンの雷魔法《雷鳴轟ク怒号ノ(ボルティックラース)》を封じていた。)



この3つの強力なスキル効果に加え、ファント・ガーフィールド自身が持つ強大な身体能力が相まって、その槍の一撃一撃は瞬く間に泥土の竜に深い傷跡を刻印していった。







ーーーーーーーーーー◯ーーーーーーーーーー




「なにあれ怖い」



吾妻秀吾はこそこそと小屋の窓から異世界の戦いを眺めていた。

ついさっきまで平和だった丘原に何故かドラゴンが現れて、ついさっきまでお喋りしてた騎士さんが狂戦士の如き雄叫びと共に槍一本でそのドラゴンを圧倒している。

良くも悪くもこの世界において最上級の戦いを見せられている吾妻秀吾の脳内に、再びあの声が響く。



『あの戦闘行為に耐えられるアタックスキルを作成しますか?』




吾妻秀吾は自身の脳内に流れた妖怪スキルおばけにーーーーーーーー静かに答えた。




「戦いたくないでござる」と。















ファント・ガーフィールドの作成スキル

アシストスキル

剣豪領域(ソードテリトリー)

三重異能(トライデントスキル)

アタックスキル

天空王之加護(スカイジアアーツ)

ディフェンススキル

封魔監獄(プリズンエナジー)

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