《万物名工(マテリアルクラフト)》〜ファント・ガーフィールドの視点②
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私ーーーーーファント・ガーフィールドが三日前のその会話に思考を巡らせていた丁度その時だった。
「部隊長殿!」と、先程命令を下した兵士が息を切らせながら駆け寄ってきた。手には何か布のようなモノを抱えている。
何かあったのだろうか?私は立ち上がり兵士に向き直す。
「ふぅ……どうした?魔物でも現れたか?」
有り得ないとは思いつつも私はため息混じりで兵士にそう尋ねる。
私の持つアシストスキル《剣豪領域》 の効果は、半径50m以内の全ての物体の動きを把握できるからだ。
ミルシィ様が私を昼間でも視界の効かぬ大森林に遣わせたのも、そういう理由があってのことなのだろうと、私は思っている。
「い………いえ…………こ、『コレ』を見て頂きたいのですっ!」
兵士がそう言って、私に自身が抱え込んでいた布のような物を差し出した。
否、『コレ』は布などでは無かった。
「こ……………『コレ』は…………!?」
私は思わず後ずさってしまう。
兵士も甲冑の隙間から覗かせる肌に、脂汗を滲ませていた。
「魔物除けの結界を張ろうとした魔術師が茂みの裏に『コレ』が埋まっていたのを見つけたのです…………部隊長殿……………!」
「………………まさか…………?あり得ることなのか…………この様な『現象』が……………?」
兵士が持っていたモノ、それは毒々しい色合いの爬虫類を思わせる肌に、ゴワゴワとした大きな焦げ茶色の羽毛で覆われたーーーーーーーーーーーーーーー
「…………こ………『コカトリス』……………なのか?これは………?」
ーーーーーーーーーー皮だけを残して絶命している、『鶏魔獣コカトリス』の死骸だったのだ。
「野生の獣の仕業ではない………そもそもなんだこの姿は…………………?」
私は兵士が持っていたコカトリスの残骸を受け取り、くまなく観察を開始した。
まるで鞣し皮のように綺麗に皮だけを剥がされているそのコカトリスの皮を見て、私は思った。
「(………………コカトリスは弱い魔物ではない。毒は強力だし、蹴爪は並の鉄鎧を容易く引き裂く……スカイジア王国では危険値Bランク指定の猛獣だ…………。
そんな魔物相手に、そもそもこんな森の中でどんなスキルを用いればこの様な真似が出来る……………?)」
ーーーーーーーーーー「『正体不明の異物』が出現しました。」ーーーーーーー
脳裏に、我が忠義を捧げし幼き容姿の主が過る。
「…………………休憩は中断だ。我々はこれより本来の任務である『正体不明の異物』捜索の任に移る!兵達に準備させろ……大至急だ!」
「…………はっ!」
兵士は何かを悟ったのか、私に頭を下げると迅速に行動を開始した。
残された私は、大森林の木々の影をみつめ、眉間に皺を寄せた。
「………………嫌な……………予感がする……………ミルシィ様………………。」
私は一人、そう呟いた。
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「コカトリスって鶏肉みたいな味すんだなぁーー」
一方その頃、吾妻秀悟は小屋の中でコカトリスの焼き鳥を呑気に食べていた。
「うめぇ」
ファント・ガーフィールドの作成スキル
アシストスキル
《剣豪領域》