《万物名工(マテリアルクラフト)》〜ファント・ガーフィールドの視点①〜
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ーーーーーーーー我々『三又槍』小隊が、カズゥの大森林に進行を初めて二日が経過した。
目的は二つ、一つは昨今カズゥの大森林からエサを求めて抜け出してくる強力な魔物共の討伐(間引きと言った方がいいか)である。
本来向こうから襲い掛かってきている訳でもない魔物に敢えて仕掛けるのは本意では無いが……………宿場町付近にも度々出没するようになったとあれば話は別だ。
農作物にも被害が出始めている、一刻も早い解決を望む住民の声を無下にするわけには行かない。
「よし、この辺りで休憩しよう。魔術師各位は魔物除けの結界の準備を頼む」
私、王国騎士団『三又槍』部隊長、『ファント・ガーフィールド』はすぐそばに居た兵の一人にそう指示を出した。
「了解しました!」と、勇ましい返事とともに深々と頭を下げた兵士は、命令を実行に移すため私の前から離れて行く。
私は周囲に魔物の気配が無いことを再度確認してから、木陰に腰を落ち着かせた。
「……………………『正体不明の異物』か……………」
私がそう口ずさんだ名前、……………『正体不明の異物』。
これこそが、我々がこの大森林にやって来た二つ目の目的である。
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「スカイジア王国領近隣に、『正体不明の異物』が出現しました。」
我らが西方最大の王国『スカイジア』が誇る最強にして偉大なる存在、『西方の勇者』にして最強クラスのアタックスキル《白金剣聖》の所持者、女性騎士ながら我ら『武装騎士団』の総大将、ミルシィ・スターライト様が我ら部隊長達にそう仰られたのは丁度三日前の事だった。
「『正体不明の異物』…………ですと………!?」
最初に口を開いたのは武装騎士団随一の剛の者が集う殲滅部隊、『巨人刀』のイギル・イーガー部隊長だった。
彼が驚愕の声を漏らしたのも無理はない。
それ程までに『正体不明の異物』というのは警戒しなければならない存在なのだ。
ーーーーーー『正体不明の異物』
この世界に本来存在し得ない存在、異界より迷い込みし者の呼称。
……………かつて、100年前にこの世界に現れた『正体不明の異物』は………………
自身のことを『魔王』と名乗り、世界を恐怖と暴力で蹂躙した。
日毎に増す災禍の中、我々武装騎士団は、当時齢10歳でありながら『勇者』の才覚に目覚めたミルシィ様の旗印の下に、ミルシィ様を含めた人類最強の力を有する五人、通称『五宝の勇者』と協力し、多くの犠牲を払った上で2年前に『魔王』の討伐に成功したのだった。
思い返すだけでも未だに身震いが起きるほど、激しく厳しい戦いだった。
「……………私のアシストスキル《天空王之眼》が今日の明け方、この世の者ではない『何か』をカズゥの大森林にて感知しました。』
「カズゥの大森林って……………王国の目と鼻の先じゃねぇかっ!?」
そう漏らしたのは、武装騎士団の魔法部隊『魔道杖』のチェリン・ポルカルト部隊長だ。
軽率そうな口調と裏腹に、その額には脂汗が滲んでいる。
「……………『三又槍』部隊長、ファント・ガーフィールド」
「………はっ」
煌めく様な金髪を軽やかに翻しながら、ミルシィ様は私の名を呼んだ。
私はその場で片膝をつき、忠義を示す。
「これより貴方には小隊を率いて極秘にカズゥの大森林の調査を行ってもらいます。この事を国の民が知れば、無益な混乱を招きかねません。
私と同じタイプのアシストスキル《三重異能》を持つ貴方だからこそこの任を任せられるのです。………………行ってくれますか?」
ミルシィ様は、私より一回りも幼いというのに、この国の民に向けるような慈愛に満ちた目で私に問いかけてくる。
「………………ミルシィ様より賜った『三又槍』の名に賭けて、必ずやこの任を遂行してみせましょう!」
…………私は心の底からそう誓った。
ミルシィ・スターライトの作成スキル
アシストスキル
《天空王之眼》
アタックスキル
《白金剣聖》