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《異界読本(ワールドマニュアル)》



「……………………ん………………ん?」



ーーーーーーーーーー吾妻秀吾が目覚めると、そこは真っ暗な森の中だった。

先ほどまでいた野次馬も、自身の頭部にクリーンヒットした植木鉢も、それどころかアスファルトの地面すら無くなっていた。

空には木々の隙間から満天の星空を覗かせ、アスファルトで舗装されていた筈の地面は、雑草が生い茂る柔らかな土に変わっていた。



「………あれ……? ……こ……………ここは…………?」




吾妻秀吾は頭を手で押さえながら起き上がると、そこでようやく自身の身体に起こった『異変』に気付いた。



「………………ッ! け………怪我が『治ってる』……………!? 」



植木鉢がクリーンヒットした筈の頭の傷が、綺麗に消え去っていたのだ。

周囲の状況の一変と相まって、吾妻秀吾は困惑しながらしきりに頭の傷を探る。



「……な………何なんだよ?どうなってんだ!? なんで俺がこんなところで……………?」


そこで、彼は死の間際に頭の中に響いてきた『謎の声』を思い出した。

男のような、女のような、無機質で奇妙なほど耳に馴染む、あの『声』。



「(………《樹形公式》…だったっけ……………? あの声の主が、俺に何かしたってのか?ま……まさか…………)」



吾妻秀吾は必死に心を落ち着かせながら考えるが、どう考えても納得のいく回答を導き出すことはできなかった。

彼はため息混じりに地面に座り込む。



「…………俺は一体どうなっちまったんだ………? 誰か説明してくれよ……」



自身の身に起きた異変の連続に、吾妻秀吾は思わずそう愚痴り頭を抱えた。

その時だった。




『パンパカパーン!貴方はアシストスキル《異界読本(ワールドマニュアル)》を獲得しました。』




「(…………っ!?……このふざけたファンファーレは………!)」




吾妻秀吾が今際の際に聞いたあの声が、再び彼の思考を遮るように響き渡ったのだ。

吾妻秀吾はバネのように飛び上がり、声の主を探そうと辺りを見渡す。

しかし、周囲には何処にも其れらしい影は見えなかった。


「おい!どこにいるんだお前!ここはどこなんだ!?お前は何者だ!?なんで俺はこんなところで寝てたんだ!?説明しろ!」



吾妻秀吾は姿なき声に向かって今の心情を隠すことなく叫ぶ。

するとーーー




『…………了解、アシストスキル《異界読本》を発動し、回答します。』



ーーーー謎の声は、静かに語り出した。




ーーーーーーーーーー◯ーーーーーーーーーー






『この世界の名は『ディアヴォリアス』、あなたが生前存在した世界とは異なる世界線に存在する『異世界』です。

正確に表現するならば、死生観概念の改変可能範囲内にあった第138909987世界線上の第4988767銀河、太陽系第4惑星、『ディアヴォリアス』の『エルス大陸』中央部であると、補足させていただきます。』



「い…………異世界………?…える………す大陸……………?」



動揺する吾妻秀吾をよそに、『声』は説明を続ける。



『私は貴方、吾妻秀吾の固有『異能(スキル)』、《樹形公式》の効果によって作成された、アシストスキル《異界読本(ワールドマニュアル)》と申します。効果は所持者の質問に正しき回答を導き出す事でございます。』




「…………す………異能(スキル)……?…………《異界読本(ワールドマニュアル)》……?」



言葉の意味を飲み込めない吾妻秀吾の頭の中はますます混乱していく。

これが幻聴で、自分はおかしくなってしまったのかとすら思ってしまう。



『貴方は1度目の人生において、死の間際に《樹形公式》に目覚められました。しかし、あなたはその時既に瀕死の重傷を負っておられました。』



「(………あの時だ)」と、吾妻秀吾は血塗れの植木鉢を思い出す。



『《樹形公式》は、あなたの深層に宿る『生存したい』『この危機的状況から逃げ出したい』という欲求に応え、望みに応じた『異能』であるディフェンススキル、《異界逃避》をその効果で作成いたしました。』



『《異界逃避》の効果は、貴方の死亡と同時に発動する防御スキルで、貴方の死から貴方の精神体………つまりは魂魄情報を隔離し、適応可能な別世界に記憶と共に肉体を健康体として再構築する事です。

つまるところ、一言で申し上げますと………………。』




『貴方は、異世界に転生しました。』



「…………転………生……………。」



この言葉に、物的証拠など何もない。

だが、何故か言葉の一つ一つに異様なまでの説得力が宿っているのを感じた。


「(………………………自分の『異能』だから?)」



吾妻秀吾は困惑したように目を掌で覆う。




「(ここが異世界で……俺が本当にあっちの世界で死んじまったって言うなら………………お、俺は………………。)」



無理矢理納得させられたような気味の悪い感覚とともに、吾妻秀吾はボソリと呟いた。




「これから…………一体どうしていけばいいって言うんだよ…………。」




吾妻秀吾の溜息は、森の闇に吸い込まれていった。









吾妻秀吾の作成スキル

アシストスキル

樹形公式(クリエイトスキル)

異界読本(ワールドマニュアル)

ディフェンススキル

異界逃避(パラレルエスケープ)


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