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序章

遠くで、誰かの悲鳴が聞こえる。


その悲鳴の原因がなんなのかというのを、彼ーーーーー『吾妻秀吾(あづましゅうご)』は、容易に理解できた。


「(………痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!)」



吾妻秀吾は心の中でそう叫ぶ、しかし彼の体は指一本動かすことすらできずにアスファルトの上に投げ出されていた。

僅かに開くことのできた瞼の先には、砕けて飛散した血まみれの植木鉢が映る。

どうやらコレが、現在隣にそびえ立つマンションのベランダから彼の頭部にクリーンヒットしてしまった様だ。

辺りには吾妻秀吾の頭部から流れ出る血液で道路が赤く染め上げられてゆく。



「(………っざけんなよ畜生……どこのバカが落としたんだ………)」


学生服のままうつ伏せに倒れこんでいる彼の周りには人だかりが出来ていた。

救急車を呼べと叫ぶ者や、ケータイを片手に写真を撮ってる野次馬も見える。



「(こんなアホみたいな最期なんて…………わ……笑い話にもなら……ね……え………)」


だんだんと意識が遠のいて行くのがわかる。

血の気が引いて視界が回り、意識がずるずると奈落の底へ落ちていく感覚。

忍び寄る『死』の感覚。

そんな状況に、吾妻秀吾は本能的な恐怖を感じていた。



「(………な…………何でもいいから誰………か…………助け……)」



吾妻秀吾は心の底から願った。

『死にたくない』『この状況から逃げ出したい』と。

途方も無い死への恐怖が彼の心を飲み込もうとした。



まさに、その時だった。



『パンパカパーン!貴方はアシストスキル《樹形公式(クリエイトスキル)》を獲得しました。』


「…………………は?」




ーーーーーーーーー思わず、声が出た。




ーーーーーーーーーー○ーーーーーーーーーー






『アシストスキル《樹形公式》を発動して、スキル作成を最適化します。

現在状態:失血・打撲・裂傷・意識混濁を確認しましたが、対応するスキルをスキルポイントを消費して作成しますか?』


「(え………ちょ………何な………)」


突如として脳内に響き渡ったファンファーレと共に、何者かの声が吾妻秀吾の意識に直接聞こえてくる。

男のような、女のような、聞き覚えのない中性的なその声は、吾妻秀吾の疑問の声を無視し、すらすらと予め用意していたかのように語りかけてきた。



『状態:瀕死を確認しましたので生命維持を最優先して、アシストスキル《樹形公式》を自動発動します。現在の吾妻秀吾のスキルポイント残量は18ポイントです。』




「(ひ…………人の話を聞け……)」



脳内に響く声は、吾妻秀吾の意を介さず、更に矢継ぎ早に語りかけてくる。




『パンパカパーン!貴方はディフェンススキル《異界逃避(パラレルエスケープ)》を獲得しました』



「(なんなんだよ、もう…………勝手にし…………てく……………れ………………)」



吾妻秀吾はいよいよ消えうせようとしている自身の意識のなかに現れた謎の声に投げやりな返事をして、そのままーーーーーー




『吾妻秀吾は死亡状態となりました。ディフェンススキル《異界逃避》を発動して死亡状態を無効化、転生可能な世界線を検索開始………失敗………………検索再開………………失敗…………………検索再開…………』



『………………検索完了、転生を開始します。』



ーーーーーその声を最後に、吾妻秀吾の意識は闇へと溶けていった。







吾妻秀吾の作成スキル

アシストスキル

樹形公式(クリエイトスキル)

ディフェンススキル

異界逃避(パラレルエスケープ)


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