君のいない理由 4
茶色ぶちねこはゆっくりと立ち上がり、ゆらゆらとした足取りで、灰色ぶちねこの元へ行こうと歩き出しました。
けれどそこにはもう、灰色ぶちねこはいませんでした。
いるのは、赤色ねこだけでした。
茶色ぶちねこは赤色ねこのそばに寄り、「あー」と一つ鳴きました。けれども赤色ねこは何も返事をしてくれません。
「あー」もう一つ茶色ぶちねこは鳴きました。けれどもやっぱり、赤色ねこは何も言ってくれません。
アスファルトをどうしようもなく愛してしまったかのように、道路を抱くようにしてべったりと横になっています。
赤色ねこは灰色ぶちねこなのかもしれません。そして、そうではないのかもしれません。
茶色ぶちねこよりもアスファルト道路を愛してしまったのかもしれません。そして、そうではないのかもしれません。
茶色ぶちねこは赤色ねこが起き上がるまで待っていました。ずっと待っていました。ずっとずっと待っていました。
けれども赤色ねこは起き上がりませんでした。
やがて空がまでもが赤い衣を纏うころになると、赤色ねこは人間の手によってきれいに消されてしまいました。
そして、そこでは何事も起きなかった、最初から猫も猛獣も何も存在していなかったかのように、グレーのアスファルト道路と茶色ぶちねこだけが残りました。
その日から、灰色ぶちねこが茶色ぶちねこの目の前に現れることは、二度とありませんでした。
それから毎晩、丘の上から一匹の猫の歌が、街に響き渡るようになりました。
それは、何もない日はもちろん、空の泣いた日もため息をついた日も。「あー」と一つ鳴いたあと、まるで、もう一つの声が猫には聞こえているかのように、「あー、あー」と、一拍、一拍おいて。




