君のいない理由 2
2匹にはお気に入りの場所がありました。それは、2匹の棲家から猫の足で500歩ほど歩いたところにある、小高い丘の頂上でした。
辺りが真っ暗になり、人間のやってこなくなったときに、2匹はその丘の上――大きなカシの木の根元で、寄り添うようにぴったりくっついて座るのです。
そして2匹は毎晩、歌うように「あー」「うー」と鳴きました。茶色ぶちねこが「あー」と言うと灰色ぶちねこが「うー」。
2匹の高く、澄んだ歌声は、丘の下の街中を駆けまわって、その街の向こうにあるインディゴブルーの海を泳ぎ、そこにそびえ立つ空をぐるりとのぼって、ぽっかりと咲いた黄色いレモンへと還っていきました。
2匹が丘で歌うころ、必ず空は黒に塗りつぶされていました。レモンはほぼ毎晩2匹の歌を聴きにやってきました。
観客はレモンだけではありませんでした。そのまわりに浮かぶ、とってもキラキラした、レモンの小さな子供たち。子供たちの様子を、2匹は木の葉の隙間からときどき覗くようにして見ていました。
茶色ぶちねこは彼らのことを、いつか降ってくる綺麗な魚だと思ったかもしれません。また、そうではなかったかもしれません。灰色ぶちねこは彼らのことを、いつか降ってくる綺麗な魚だと思ったかもしれません。また、そうではなかったかもしれません。
2匹は何もない日はもちろん、空の泣いた日もため息をついた日も、いつも丘の上で2匹、歌いました。
「あー」「うー」「あー」「うー」




