君のいない理由 1
あるところに、茶色ぶちねこと灰色ぶちねこの兄弟がおりました。2匹は子猫のときに飼い主に捨てられ、それからずっと野良猫としてひっそりと生きてきました。
捨てられたその日からずっと、毎日、どんなときでも、2匹は一緒でした。茶色ぶちねこが3丁目のボス黒ねこに襲われたとき、灰色ぶちねこは一緒になって前足をケガしました。茶色ぶちねこは右前足を、灰色ぶちねこは左前足をケガしました。
茶色ぶちねこは灰色ぶちねこの左前足を舐めました。灰色ぶちねこも、茶色ぶちねこの右前足を舐めました。2匹はお互いの足を舐めながら、「あー」「うー」と鳴きました。
それは何かとても大事なことを確認し合うかのように。茶色ぶちねこが「あー」と言うと、灰色ぶちねこは必ず「うー」と返しました。
そうして、茶色ぶちねこのケガは、ケガをしてから10回目に太陽がのぼった朝に治りました。灰色ぶちねこのケガも、ケガをしてから10回目に太陽がのぼった朝に治りました。
灰色ぶちねこのケガが治ったことを、茶色ぶちねこが舌で舐めて確認すると、茶色ぶちねこは「あー」と鳴きました。
灰色ぶちねこも、茶色ぶちねこのケガが治ったことを、同じようにして確認しました。すると、灰色ぶちねこは「うー」と鳴き返しました。
2匹はいつも「あー」「うー」と会話を交わします。茶色ぶちねこが「あー」。灰色ぶちねこが「うー」。




