悪役令嬢が転生者だった乙女ゲームのヒロインは幸福になれるか
私は悪役令嬢だ。乙女ゲームの悪役令嬢、公爵令嬢シルフィーナに転生して、なってしまった。
分かってる。悪役令嬢ものの小説や漫画を読んでたから。乙女ゲームの悪役令嬢はヒロインに断罪され、不幸になる運命。ヒロインの幸福のために犠牲になる、かわいそうな被害者。
でも、そんなのごめん。
折角美少女に生まれたのだから、私だって幸せになりたいんだもの。
そのために私は、まず攻略対象たちの支持を得る事にした。私の幸福のために。
それはうまくいったわ。だって、悪役令嬢は性格悪いから嫌われてるだけで、これだけの美少女に感じよく接してもらえたら男はいい気になるわよね。
前世、美人な子に夢中だった男性たちを思い出す。
でもこれで、ヒロインが近付いても攻略対象たちは簡単にはなびかないだろう。
ごめんねヒロインちゃん。でもいいわよね?折角美人に生まれ変わったんだから、私だっていい気になりたいわ。
そして、悪役令嬢もののテンプレ通りに、魔法学園に入学した私は、ヒロインを発見した。
ピンクの髪にアメジストの瞳の、輝くような美少女。ミリア。
だけど、彼女の王子様たちは私に夢中。彼女のルートはすべて閉じている。そもそも、平民のヒロインは貴族とは結ばれれないけど。
ところで、魔法学園では始めの授業で召喚の儀式をする。私は、高位の人型の精霊と契約した。これもテンプレ通りね。乙女ゲームって本当に悪役令嬢もののテンプレ通りで、退屈な話よね。
ヒロインが召喚をしようとするのを見た。大したものは召喚できてなかった。小さな喋る白いネズミ。
私はそれを見てほっとした。
平民にお似合いの、つまらない召喚獣。
その後三年がすぎ、私はまあ成績がいい方をキープして、ヒロインは普通。つまらない。
そう思っていたら、ある日ヒロインが行方不明になった。
もしかしてバッドエンドかしら。
なら、私は断罪されなかったんだわ。私はようやくほっとした。だというのに。
「私とは婚約できないってどういうことよ。血筋もいい。家格も高い。それに、私を愛してるって言ってたじゃない。」
「だからだよ。君の血筋はよすぎて、僕らの家じゃ釣り合わないんだ、シルフィーナ。」
「それに、俺達を侍らしていただろう。あれで印象が悪いんだよ」
「まあ君がよければ、結婚して子供を産んだ後に遊ぼうよ」
「ふざけないで…!」
私は父の命令で汚い中年の高位貴族に嫁ぐことが決まっていた。あんな男の子を産めと?ぞっとする!
「…君のそういうところ、好きになれなかったんだよね。貴族の女性は子供を産むのが義務だよ。それをそんな風に…。どうかしてるよ」
だが誰も私の手を取らなかった。なんだったら駆け落ちだってしてもよかったのに。
「貴族としての生活を捨てれるわけないだろ?平民として過ごすなんて想像するのも嫌だね」
美しい男たちは美しく笑いながら、私を見捨てた。
私は父に逆らう事もできず、不幸な花嫁となった。
ミリアはいつのまにかどこかの宮殿にいた。
「ミリア、あなたは私を救ってくれました。おかげですべてを思い出した。」
そう白いネズミー、ブランシュが私をここに連れてきたのだ。
ブランシュは神の使いなのだという。神々の花嫁を探すのが役目なのだそうで、私はそれに選ばれたらしい。学園に通いたかったけど、既に話は通してあるらしく、もう戻れなかった。家族もいない
ミリアには止める人もいない。女友達はいるけど、そこまで熱心に止めてくれるか分からない。
私は七人の神々の息子たちのうちの誰かを選ばないといけないのだそうだ。彼らは見たことがないほど美しかった。初めて魔法学園に入学したとき、貴族の男たちを見て美しいと思ったけど、それを越えている。自分も外見はいい方だと自負していたけど、彼らの前では霞むだろう。
彼らは正確には魔神であり、異界を統べる魔神の一族である。
数代に一度、魔女の血を入れる事で血が濃くなるのを防いでいるのだという。その魔女に選ばれたのがミリアだった。ミリアが選んだ男が魔神一族の王となる。そういうしきたりなのだ。
もう学園に通えないのは残念だが、ここならもっと色んな魔法が学べるということで、了承した。
「さて、誰を選べばいいのかなあ」
ミリアは与えられた部屋で、考えていた。
ミリアもシルフィーナも知らなかったがー、この世界ー、乙女ゲームは、魔法学園の生徒である女主人公が異界に拐われるストーリーなのだ。シルフィーナはそもそもゲームをプレイしておらず、好きだった悪役令嬢もののテンプレに当て嵌めて考えていたのが間違いで、シルフィーナの行動は見当違いだったし、断罪されるルートなんてなかった。彼女はミリアのストーリーを変えれなかった。変えたのは自分の運命だった。そもそも、他人の運命なんて簡単には変えれない。乙女ゲームのヒロインだって、自分の運命を変えれるのは自分だけなのだから。
これからミリアが幸福になれるかは、ミリアの行動しだいなのだから。




