余白
第3話です。
時刻は19時半を回っただろうか。時計の音がチクタクとなっている。
今の時代にアナログで古い時計は珍しいなと思った。
飲み終わって、少し間が空いたところで、思い切って質問してみる。
「で、その能力ってなんなんですか?」
「んー、チート、代償付きのね」
「雑ですね」
チートって能力名聞いたことないんだが....
「君の能力は?」
「えっと、空気圧縮<エアー・コンプレッション>...空気を圧縮するだけ...です」
「あーね、よくあるやつだ」
雑に返事されてしまった。まあ空気圧縮自体、なんの変哲もない能力だからなぁ。
「じゃあ試しにその能力見せてよ、妙に自信ないの気になるし」
「えっ、ここでですか?」
「いや、流石にここはね。天動さんに怒られちゃう」
「近くの公園でも行こうか、今の時間なら子供もいないでしょ」
あっ、お金...
「赤月さん、お会計どうしますか?」
「あっ、私が払っておくよ」
「ありがとうございます」
赤月さんにコーヒーの代金を払ってもらい、公園に向かう。
車もこの時間だと全然通っておらず、静かな道を歩く。
「そういえば、なんの心配もしてなかったけど、親に連絡しなくて大丈夫?」
「大丈夫です。うちの親帰ってくるの遅いので」
おっけ!と赤月さんが言うとそのまま歩き続ける。もうすぐ公園だ。
「よし、ついたね」
「じゃあ君の能力を見せて」
「見せる、と言ってもどうすれば...?」
「私に攻撃してきていいよ」
「いやそんな趣味は・・・」
「ちーがーうー、私のことは考えなくていいから攻撃してきて、ってこと」
なるほど、そっちにいってしまった。反省。
「えっと、わかりました。じゃあとりあえずパンチします」
手を握る。
——空気を、圧縮する。
うまくいってるかは、正直わからない。
それでも——
「.....っ」
踏み込んで、拳を振る。なんだか久しぶりの感覚だ。
——ドンッ
手応えはなんとなくあった。
でも——
少し罪悪感を感じながら、赤月さんの方をみてみると
「.........ん、こんなもんか」
赤月さんは立ったまま、ダメージを全く喰らってない、というか届いてない感じだった。
「えっ......」
「ストレートで悪いんだけど、君、下手だね」
うっ、ストレートすぎる。知ってます。
「......しってます」
少しだけ顔が引きつる。
「あと、君もしかして能力の発現遅かったタイプ?」
「あそうですね、中1のときに発現しました」
「大体みんな6〜7歳くらいに発現しますからね、だいぶ遅い方だと思います」
「まあ、遅くてもあるだけいいよ」
少しだけ引っかかったけど、気にせず赤月さんの話を聞く。
「ちょっと手伝ってあげる。隣、立って」
言われるままに構える。
次の瞬間——
背中に手が触れた。
「ちょっと猫背。こう」
姿勢を直される。
そのまま、手を重ねられた。
「......っ」
近い。思ったよりもずっと。
「この形なら、ちゃんと力乗るよ」
「.....なんか、スーパーマンみたいですね」
「あはは、たしかに」
——なんか、落ち着かない。
「よし、じゃあ一旦離れるね」
あっ、離れてしまった。
「そのまま、パンチしてみて」
——ドンッ!!
さっきより、手応えがある。赤月さんにはダメージは入ってないみたいだけど。
これもこの人の能力なのだろうか。
「うん、さっきより威力とスピードが上がってるね、良い感じだ」
「応用すればもっと活かせると思うよ」
「.....ほんとですか」
少しだけ、嬉しかった。
ゴホッ
咳をしてから赤月さんは言った。
「ねえねえ、1つお願いがあるんだけど」
「...なんですか」
「少しだけ、付き合ってくれない?」
「えっと、何にですか...?」
——何かが嫌な予感がする。そんな気がした。
読んでいただきありがとうございます。第4話はもっと具体的な話をします。




