出会いの日
現代日本×能力バトルです。ゆるく更新していきます。
2050年、日本。
人間は当たり前のように、特別な力を持つようになった。
そう''能力''である。
能力は個人差があり、強さも使い方もさまざまだ。
社会はそれを受け入れ、制度を整え、日常の一部となっている。
誰かはそれで夢を見て、
誰かはそれで誰かを助けて、
誰かはそれで、誰かを傷つけている。
僕、青凪空斗。
——どれでもない。
きっかけとかどうでもいいし、誰も気にしてない。
ただただ、そういうものとして世界は回っている。
僕が今いる高校の教室でも。
「でさ、俺の能力はさ——」
「は?それずるいだろ?」
楽しそうな声が飛び交う中で外の景色を見ながら、僕は適当に相槌を打つ。
笑って、頷いて、空気を壊さないように話す。
——いつも通りの日だな。
「なあ、お前は?」
「え?」
やべ、適当に頷きすぎて全然聞いてなかった。
「青凪の能力って空気のやつだっけ?この前も見せてくれなかったじゃーん」
「空気圧縮のことね、いやーなんか上手く使えてなくて、あはは」
「あ、そうか」
軽い調子。悪意はないと思うけど、どうでもいいなら聞くなよ。
余計に返しに困る。
そうかと言い終わった後、すぐに別の話題に移って行った。
それでいい。
帰りのHRで、担任の印西先生が言った。
「都内で能力者同士の暴行事件があった。何か異変を感じたらすぐに警察を頼るように。帰り道には気をつけろよ」
黒板もといデジタルボードの前で、いつものように。
犯人は全身黒い服の男らしい。
「またかよ」と誰かが笑って、教室の空気はすぐにいつも通りに戻る。
——物騒だな、とは思う。
でもそれだけ。
放課後。僕は部活にも入ってないし、特に予定もないまま、電車に乗った。
窓に映る自分の顔は、いつも通りぼんやりしていて冴えない。
あれ、おでこにまたニキビできてる。萎えるな。
周りでは、能力の話で盛り上がってる声が聞こえた。
「昨日さ、あいつの能力のおかげでな——」
よくみたらうちと同じ学校の制服じゃん。まあ聞こえないフリをしておこう。
聞いても、どうせ話には入れないんだし。
最寄り駅で降りて、いつもの帰り道を歩く。
途中、近所のおばあちゃんが手を振ってきた。
「あら、今帰り?」
「そうです」
軽く手を振り返す。こういうやりとりは別に嫌いじゃない。
考えなくていいから。
スマホを取り出して、なんとなくSNSを開く。投稿にいいねを押して、閉じて。
また開いて、スクロールして、閉じる。
——また開く。
好きな絵師さんが新しいイラストをあげていた。
「......かわいい」
小さくつぶやいていいねを押す。何の意味もないけど、それだけで少し満たされた気になる。
ドーパミン中毒の子供になってるのはよくないとわかってる。でもやめられない。
何をしてるんだろう、とは思う。
でも、別にやりたいこともない。
将来のことも、特に考えてない。
ただ、なんとなく今日を終わらせていくだけ。
そんなことを考えていた。
——その時だった。
遠くで、何かがぶつかるような音がした。
足が、止まる。
.......気のせいかもしれない。
工事の音とか、そういうやつだ。
そう思って、、、歩き出そうとして———
もう一度、音がした。気がするじゃない。した。
さっきより近くで。
嫌な感じがする。
関わらない方がいい。
絶対に。
.........でも
視線が、自然と音のした方へ向いてしまう。
気になってしまう。
少しだけ、暗くなっている場所。
見なかったことにすればいい。
そう思ったのに——
気づけば、足はそっちに向かっていた。
路地の奥を覗く。
人影が、2つ見えた。
片方が、もう片方を壁に押し付けている。
......何をしてるんだ?
喧嘩、にしては様子がおかしい。
なんか音が、変だ...?
乾いた音じゃない。もっと、重い音.....
次の瞬間、鈍い音がした。
押しつけられていた方の体が崩れた。
——殴られたんだ。
ようやく状況を理解した。
.......どうする。
心臓がうるさい。鼓動を感じる。逃げた方がいい。
やっぱ見なかったことにするか。
いや、でも——
その瞬間、足が勝手に一歩前に出た。
——ドスッ
靴が、地面を踏む音。
......やばい。
音、立てた。
「あ?」
完全に覗き見してるのがバレた。
もう隠れてても意味ないか。
心臓がうるさい。逃げたいけど——
喉が勝手に動いた。
「やめて.....!!!!」
思わず叫んだ。
近くにいた男がこっちを見る。
「なんだお前?」
「えっ、あ、いやっ」
睨まれる。細いのに、妙に圧がある。
——殴られたら、、終わる。
視線を横に向ける。襲われていた方を。
「……え?」
一瞬、何を見ているのかわからなかった。
金色の髪。背中に、白い羽。
——人……じゃない?
「なにぼーっとしてんだよ!!!」
男が、踏み込んでくる。
——まずい。
次の瞬間だった。
男の体が、ぐらりと揺れた。
胸に、何かが刺さっている。
……さっきまで、何もなかったはずなのに。
「グハッ……」
血を吐いて、倒れる。何が起きたのかわからない。
「……あー、ごめん」
声がした。目の前の''彼女''?そもそも人間...?がこちらを見ている。
——これ、死んでる?
「こんな時間だし、人が来るなんて思ってなかったよ。ごめんごめん」
まるで、さっきの出来事が何もなかったように、普通に調子で話しかけてくる。
——なんだこの人。
その時だった。
「ゴホッゴホッ……」
ほんの一瞬だけ、表情が歪んで咳き込んだ。
——なんか、普通じゃない。
ここまで読んでいただきありがとうございます。第1話はまだ導入なので、ここから関係や話が動き出します。




