高峰洸哉1.親友だって言ってるだろ?
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
10月のよく晴れたある日。
この日から、オレの生活がめまぐるしく変化することなど、この時はまだ少しも知るハズがなかった。
オレは当たり前のように学校にいた。
教室のドアから、自分の席の隣にポケーっとしている顔を見つけ、後ろからそーっと近づいて、ポンと頭をひとつ叩いた。
そいつ、野宮美乃は左手で後頭部を押さえながら、叩いたのがオレだと確信しているように振り向いた。
「洸哉っ」
オレ、高峰洸哉、15歳の高校1年生。
美乃とは、たまたまクラスが一緒で、たまたま席が隣で、たまたま気が合った。
「よっ!!」
振り向いて抗議する美乃を牽制して笑った。
「人の頭叩いておいて、爽やかに“よっ”はないでしょうが......」
美乃はぶつぶつと文句をつけている。
美乃は少し人から誤解されやすくて、損な性格をしている。
そのせいか、美乃がオレ以外の人と話しているのを、見たことがない。
そんな美乃に、まことしやかについて流れたあだ名が“氷の美人”。
板についたポーカーフェイスが冷たく見えるらしい。
何とも不憫なヤツだよ......。
おっと、忘れるところだった。
「おまえさぁ、今日放課後ヒマ?」
「ヒマだけど、ナンデ?」
「友達のライブあんだけど、行かねぇーか?あっ、ヤベェか?美乃、優等生やってるもんな」
って、コイツほど学校とプライベートのかけ離れたヤツもいないよなぁ。
オレの表情を読んだのか、美乃はオレをひと睨みして、
「行ってもいいけど、場がシラケるんじゃないの?私が行くと、教師の手先とか思われてる生徒会の人間なんだからさ」
たまにコイツ卑屈になるよな。
美乃が思ってるよりもずっと、みんなは美乃に近づきたがってるんだけどな。
「大丈夫。その辺は問題ないんだ。向こうがおまえを連れてきてほしいって」
「なんでっ!?」
「“氷の美人”って呼ばれてるおまえと話してみたいんだって」
そうなんだ、昨日突然、中学からのオレの親友でもある佐久間一樹から、メッセージじゃなくて、珍しく電話で話しを持ちかけてきた。
「洸哉、明日のライブ来るよな?」
スマホの向こう側で一樹が確認している。
「あぁ、行くよ」
オレが軽く答えると、
「じゃあ、頼みがあんだけど、いいか?」
「別にいいぜ、花束持って来いとかって言うんじゃなきゃ」
「バカか、そんなことおまえに頼んでどーすんだよ」
「そりゃ、そうだけどよ。じゃあなんだよ」
一樹は一拍おいてから、口を開いた。
「野宮さん、連れてきてくれないか?」
オレは一瞬、野宮って誰だっけ?なんて思い、すぐに該当者にぶつかって叫んだ。
「って、美乃ぉ~~!?なんで!?」
驚くオレをよそに、一樹は言った。
「いや、“氷の美人”なんて言われてるけど、実際洸哉とは仲いいじゃん、そんな彼女と話ししてみたいなぁって、みんな言ってんだけど。それにおまえの好きな女の子がどんな子か知りたいじゃん」
オレはため息をついて言った。
「だから違うって言ってんじゃんか、オレと美乃は親友なの!!何度同じこと言わせんだよったく」
一樹はオレが何度美乃とは親友だと言っても、聞き入れない。
オレが美乃を好きだと思い込んじまってるからな。ホントまいるぜ。
「まぁ、そうムキになんなって、とにかく野宮さんに聞いといてくれよ」
「聞くだけは聞くけど、期待すんなよ」
その後、じゃあなと電話は切れたのだ。
美乃は少し逡巡したあと、笑顔で言った。
「OK。行くわ」
「あっマジ?それじゃ、放課後な」
そう言い残し、オレは一樹のところへ向かった。
教室の戸口で一樹を呼ぶと、オレのデカイ声に振り向いて待ってましたとばかりに寄ってきた。
「昨日の件か?」
「そういうこと」
「でっ!?」
オレは少しもったいぶってから、美乃も行くことを告げた。
「うわ、マジで?じゃあライブ終わったら楽屋まで来てくれよ。もちろん連れて」
一樹は嬉しそうに小声で言った。
小声なのはバンドを組んでるなんてのが、学校にバレたらうるさいからだ。
「楽屋まで連れていくのはいいけどよ、あいつさ、自分が行ったらしらけるんじゃないかって心配してんだよ。その辺はオレもフォローするけど、おまえらも頼むぞ」
オレは美乃をこれ以上、他人に対して臆病にさせたくないのだ。
「わかった。アイツらにも言っておく」
アイツらとはもちろん、今日のライブをするバンドのメンバーだ。
一樹以外はみんな、一樹を通して友達になったヤツらばかりだけど、気のいいヤツらだ。
だからこそ、オレは美乃を連れていくことに反対はしなかったのだけど。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




